裏切りの代償。
ラストが近いので、サブタイは文章形式にします。
あと3話か4話くらいで終わる予定です。
あともう少しだ。私はあの時からこの時を待ちわびていたのかもしれない。
全ての始まりは10年前。あの時から私の復讐は始まった。これは、明確なウラギリ。
私はあの人の事を恨んでいるけれど、あの笑顔に救われたのも確かだ。
『 』
どうやら、〝計画〟は最終段階らしい。
もうすぐ、私の初恋の人がやって来る。
私は、汗ばむ手をぎゅっと握った。
俺は魔力を全開にして走った。強化した筋力が体を痛めつける。
だがそんなこと知ったことか。あそこには、大切な奴らがいる。
「団長、無茶です!それ以上スピードを上げたら…!」
「今は無茶しなきゃいけねぇんだよ!!」
痛む体に鞭打ちながら、やっと『学院』の正門に辿り着いた。
俺は近くにいた生徒に駆け寄りながら道を聞く。
「おい!ジルって教授はどこにいる!?」
「ちゅ、中央の学芸員塔だと思いますけど…」
礼を言ってまた走る。まだ生徒は無事だ…!俺はアレンに生徒を片っ端から保護するように言い含めてある。これだったら犠牲は出なくて済む!
俺が『学院』の中央にある学芸員塔の前まで来た時だった。
「ゴーシュさん!?」
「セレナ!?」
クソッ!何でこんな所に!?
「セレナ、詳しいことは後だ、とにかく『学院』から出るんだ」
「その必要はありませんよ」
上から声が降ってきた。上を見上げると、まるで魔術師のような薄気味悪いローブを着た男が塔の屋上に立っていた。
「よく御出で下さいました、フランスの騎士――白騎士殿」
男は慇懃な態度で腰を折る。アイツが…。
「貴様が『ジル』教授か」
「ええ、その通りです。どうやら名もばれているようですし、元騎士として名乗りを上げておきましょうか」
「我が名は『ジル・ド・レイ』。フランスを救いし純潔の乙女に仕えし者です」
俺はその口上を聞いて呆れ果てた。
「『悪魔』、の間違いじゃないのか?」
「いいえ。確かに、私は悪魔に魂を売りましたが我が心は永遠に聖処女のもの。中世の世から変わらぬ忠誠を誓っています」
「狂人が何をぬかす。これまでの事件、全てお前の仕業だな?誘拐及び監禁、暴行、殺人etc.etc…。フランス法に基づき、貴様を逮捕する。中世の堕落した英雄が生きていた、どころか捕まったとあったらさぞや世は賑わうことだろうな?」
「果たして、それが出来ますかな?聖処女の御加護があるこの私を!!」
そう言ってジルは懐から一冊の本を取り出した。見たことのあるカビの生えた古い本。
「それで召喚していたわけか…。だが、たかが使い魔程度で俺に勝てるとでも?」
「いいえ?ですが私は元帥だったのですよ、貴方の攻略法などとうに練ってあります」
「何を…」
ドスッ
その瞬間、俺の背中に熱い感触が弾けた。抜かった…!伏兵か!
「私では歯が立たないのなら、貴方が敵わない人物をぶつければいいのです」
「…何で、だ?」
俺の背にナイフを突き立てていたのは――――
―――――セレナ、だった。