青髭~ブルー・ベア~
昔むかし、ある所にその風貌から「青髭」と呼ばれていた金持ちの男がいました。「青髭」はとある美人姉妹に求婚し、妹を娶ることになりました。
ある日外出することになった「青髭」は妻に鍵の束を渡しました。
「どこにでも入っても良いけど、この鍵束の中で一番小さい鍵の合う部屋に入ってはならない」
と言い残して出かけていきました。
妻はその言いつけを守っていましたが、好奇心に負けてついついその「小さい鍵の部屋」を開けてしまいました。
そこに広がっていたのは、地面に血がこびりつき、壁には無残な死体が5~6体壁に立てかけてあるという凄惨な部屋でした。その死体たちは皆「青髭」が以前迎えた妻たちだったのです。
その時、「青髭」が家に帰ってきました。
「見てしまったな、私の秘密を」
「青髭」はそう言って妻を殺そうとしました。
しかし、偶然立ち寄った二人の兄によって助けられ、「青髭」は兄に殺されてしまいました。
「青髭」には子が居なかったので、妻がその財産を受け継いで兄や姉たちと分けて幸せに暮らしました。
めでたしめでたし
~『青髭』~ シャルル・ペロー著
俺は読んでいた童話をノックの音で閉じた。
「入れ」
「失礼します」
アレンは俺の目の前まで来て敬礼をする。
「一般人を『学院』へと送り届けました」
「ご苦労さん。怪我人の具合はどうだ?」
「見た目よりは軽傷でした。打撲、擦過傷、脱臼くらいですね。内出血も今の所無いようです」
俺はその報告に詰めていた息を吐き出した。そうか、無事か――――。
「ニーナ・アーバント、サックス・ミュラー。それとジル教授は『学院』にて療養を取るようで――――」
……今、何て言った?俺は耳を疑った。『ジル』?
「オイ…」
俺のただならぬ様子に気づいたのか、アレンは口を閉ざした。こういう時は本当に出来た俺にはもったいないくらいの部下だ。
「『学院』の教授のフルネームは分かるか?」
「いえ、聞いていませんが…。確か、青い髭の方ですよね?」
俺はその言葉を聞いて立ち上がった。もう間違いない、考えうる限り最悪の展開だ。
「ど、どうしたんですか団長!?」
「首謀者がどこにいるか分かった!!」
答えるのも面倒だ、俺は予備の鎧を着こんでゆく。
「どこに!?」
「『学院』…奴の狙いはあそこにいる全生徒だ!」
「全生徒って…!そんなの、何で分かるんですか?」
「分かるさ…俺の考えている通りの人物ならまず間違いない」
その名は、フランス中に知れ渡っている。中世フランスを救った英雄の一人であり、一時はフランス元帥まで上り詰めた傑物でありながら、悪魔を崇拝し数多くの子供を殺戮した快楽殺人者。
「首謀者は『ジル・ド・レイ』――――『学院』の教授だ」
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