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私たち、護衛する。2

 私たちは馬車でパリ西部にある森林地帯に向かっていた。なんでも、例の遺跡は森の中心にある崖をくり貫いて作った、人工的な物だとか。


 御者さんに進路は任せて、私たちは幌の中で会話をしていた。


「フランスのブルターニュという地方には5世紀頃、紀元前の魔法を一部復活させたという伝承があります。『イース』という都市だったそうですが、紀元前の『ノアの大洪水』と同じように洪水で滅んでしまったそうですね」


「へー。色々あったんだね、昔は」


「おいおい、一応伝承としてはそうであるってだけだぜぇ、ニーナ」


「いいじゃん別に。信じる、信じないは個人の自由でしょ」


「ははは」


 さっきまでは、ジル教授に紀元前について講釈を受けていたんだ。興味を持たせるように話してくれるから、聞くこっちも飽きずに楽しめた。


「紀元前の文明はとてもすごいものだったらしいですね。中でも、彼らが作った魔導具で特に強力だった7つの物を『神器』と呼んだそうです。『イース』の人々はそれを復活させたが為に紀元前と同じ最後を迎えたというのが、私の持論ですね」


「『神器』…」


「なんでも、神にすら届く奇跡を起こすことが出来たらしいなぁ」


「ええ。まぁ、本当のところは伝説、というのが事実なんでしょうね」


「ふーん、つまんないの」


 私たちが話に盛り上がっていると、御者さんから声がかかった。


「みなさん、着きましたよ」


 その声に私たちは荷物を纏めて外に出る。


「ここが…」


 私の目の前には、鬱蒼と茂った森があった。森からは微かに獣の声が聞こえてきて、少し不気味な雰囲気が漂っている。


「私はここで待っています。気を付けて行って下さいね」


 私たちは御者さんと一時的に別れて森に入っていった――。








 その時、はるか後方の崖の上から私たちを見下ろす影に、誰一人気付く者はいなかった。










 少しじめっとした地面を歩きながら私たちは目的地を目指す。あー、しっかし木から垂れてる蔦が鬱陶しいな。


「不自然だな」


「え?」


「何がですか?」


 突然、先頭を歩くミュラーが声を出した。不自然?


「こんな気味の悪い森に人が入るのかって思ってな。確か、この近くに村とか無いんすよね、教授」


「あ、ああ。その通りだが」


「『発見者』は、『ゴーシュ』って名前らしいですけど…どういう人なんすか?」


 それは、私たちが一番気になっていたことだ。そのことに、ジル教授はこう答えた。


「ああ。それが、分からないんだよ」


「「分からない?」」


 私とミュラーは同時に声を出した。そんなことって、あるの?


「いや、このことは匿名で手紙が来てね。私がそのことを手紙で聞いたら『ゴーシュ』、とまでしか教えてくれなかったんだ。何か訳があったんじゃないのかな?」


「そうなんですか…」


 私たちはその後何も会話をせずに黙々と歩き続けた。そして、ついに目的地へと到着する。


 目の前には、見上げるほど巨大な崖にぽっかりと、私たちを誘うかの様に穴が開いていた。



『イース』(またはイス)と呼ばれる都市の伝説は実際にフランス・ブルターニュ地方に残る伝承です。


フランス語ではYs(ブルターニュではIs)と綴られるようですね。


水没しているものの、海底で在りし日の姿を保ち続けたまま何時の日か、パリに匹敵した姿を現すと言われているようです。


11/05一部漢字を訂正しました。

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