私たち、護衛する。
『学院襲撃事件』から1か月が経とうとしていた。私たちはあれから教師たちや騎士団の人たちに色々と事情聴取を受けて大変だったけど、今はその騒がしさも次第に収まってきた。
学院も、あの事件について各国から事情の説明を求める声が相次いで大変だったらしい。授業もつい最近再開された。
今日の授業も終わって、私たち3人は寮の共同区画に集まっていた。
「あーあ、あれからもう1か月かぁ。あの事件の所為でゴーシュにぃのこと、あんまり調べられなかったな」
ほんと、大変だった。他の学生や教師たちに質問攻めされて目が回る思いだったよ。
「そうですね…。でも、最近は騒ぎも収まってきましたし、明日からは情報収集に専念できそうですね。前期試験が免除されたことも大きいですし」
「まったくだなぁ。テストなんかに構ってる暇はないから、事件様様って所だな」
「ミュラー、不謹慎」
「先輩、不謹慎ですよ」
「ちぇっ」
そういえば、今後の方針はどうなるのかな?そのことを聞くと、セレ姉が答えてくれた。
「ええ。今後は二手に分かれてゴーシュさんの消息を探ろうと考えています」
「ふむ。それは何でだ?」
「私は上流階級の方々に晩餐会に誘われたりしますから。その時にさり気無くゴーシュさんに関わりがありそうなことを聞いてみるつもりです」
「でも、護衛役の私はどうするの?」
「別に来てもらっても構いませんけど…その時は作法やマナーについて教える時間があまりに少ない。それに堅苦しい空気は苦手でしょう、ニーナさん?」
「それはそうだけどさ~」
パン、とミュラーは手を叩いて場を治める。
「まぁまぁ。セレナにしか出来ないんだからここは任せとこうぜ。それで、俺たちは何をすれば?」
「実は、歴史学のジル教授からお願いがあったんですが…。それにゴーシュさんに関わりがあるかもしれないんです」
「セレ姉、それ詳しく!」
「はい。ジル教授はフランスの歴史について調べていらっしゃるんですけど、今度、最近発見された遺跡の調査に行くらしいんです。その遺跡は、フランス革命の折り旧フランスが秘匿していた物が封印されているらしくて」
「うーん。それと旦那がどう関係するんだ?」
そうよね。ゴーシュにぃとどう繋がるの…?
「実は、その遺跡の第一発見者の名前が『ゴーシュ』と言うそうなんです」
「ええ!?」
「そいつは驚いた!」
「ということなので、お二人には教授のお手伝いという名目で、その第一発見者のことを調べに行ってきて欲しいんです」
「はぁ。びっくりしたなぁ、さっきの話」
私たちはその後2,3確認事項を確かめて、もう夜も遅いということで解散となった。シャワーを浴びて今日かいた汗を流し落とす。
シャワーから出た後はストレッチ。これは毎日欠かさずやっている。少しでも体を鈍らせないようにするためだ。ライフルの整備を簡単にやって、私はベッドに入った。
ゴーシュにぃのこと、何か分かるといいな…。
私は目を閉じてゆっくりと意識を暗闇に落としていった…。
「やぁやぁ。今日はすまないね」
早朝。私とミュラーは学院の門の前に来ていた。目の前にいるのがジル教授。眼鏡をかけた、穏やかな表情をした教授だ。なんでも、歴史学の分野では若いながら数々の功績を上げているんだとか。
全然そうは見えないなぁ。
「じゃ、とっとと行きましょうか。教授」
「ええ。あの正体不明の化け物を倒したというお2人がいれば、道中の安全は約束されたようなものですね。昨日は安心して眠れましたよ」
「大げさですよ。実際、あれを倒したのはこのニーナですし」
「って、ええ!?いきなり私に振るの!?」
「ほほう、そうなんですか。頼りにしてますよ、アーバントさん」
私はがっくりと肩を落としてため息を付いた。…これは、疲れる旅になりそうだなぁ。
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