私、闘う。4
天から人が降ってきた。
文字通りの意味で、だ。結果その白い騎士甲冑を着た男は、小隕石のように着地点にクレーターを作った。
私たちはおろか、狼の動きすら止まった。というか、止まらざるを得なかった。
(自爆したー!!)
その瞬間、巻き上がる土煙の中から騎士が飛び出る。
一刀。
そのすれ違いざまの一閃で、狼に生えていた翼を切断していた。
「これで…どうだっ!!」
ドンッ!!!
白い騎士はそのまま狼を蹴り上げた。
Gaaaaaaaaaaaou!?
私はその瞬間を逃さず、宙に浮く巨体に素早く鉛玉をぶち込んだのだった。
「いやー、俺の出番あんまし無かったねー」
「助太刀、ありがとうございます」
私たちはすでに息絶えた狼を遠巻きにしながら集まっていた。しかし、見れば見るほど歪な生き物だな。
「しっかし、一番驚いたのは君だよ」
「え、私?」
「だってさ~、狙撃銃で三点バーストするなんて…騎士団にもそんなことできる奴はいねぇさ」
「三点バースト!?」
「き、気付いたんですか!?」
まさか、視認できるなんて…。これを見切れた人はパパと銃を教えてくれたマーカスさんくらいなのに。
「まあね~。ほら、仮にも騎士だし?」
気さくに笑いながら狼の死体に手を入れて持ち上げる。
「よっこらせっと。あー、じゃ、これ貰ってくね。原因解明に必要だし。何かあればオルレアン騎士団のアントンと言ってくれれば力になるよ。君たちは気に入ったからさ…特に」
意味有り気に私を見る。て、私?
「じゃあね」
「ちょ、ちょっと。それ担いで帰るの?」
「ん。あ、少し下がってて」
私たちに手で退くようにジェスチャーするアントン。
「ごほん。では――――」
「Fly,fly,fiy.(飛べ、飛べ、飛べ)」
「If you can fly.(もしお前が飛べるなら)」
「I can fly too!(俺も空を飛べるのさ!)」
ドンッ!
不思議な抑揚をつけて呟きながら、アントンは思いっきり地面を蹴る。
「それでは皆様、また会う時まで、御機嫌よう」
そう言って、哄笑を響かせながら風のように早く去っていった。
「なんなんだ、あの騎士は」
それはむしろ私が言いたい。