私、闘う。2
PV22000、ユニーク3100突破!!
見て頂いた方々、本当にありがとうございます!これからも面白い話を書けるように頑張ります!
私たちに近づいてきた上級生はどうやらドイツ人のようだ。堀の深い顔立ちにサファイアブルーの瞳。少し色素の抜けた髪を短めに刈り上げている。
「おい、新入生。さっきの言葉はどういう意味だ?」
「そのまんまの意味だけど?」
私とは20cmは差があるだろう。だけど、私は前言を撤回する気は無かった。
「女のクセに、大口を叩いていると痛い目に遭うぞ?ここはそういう場所だ」
私はその言葉にカチンときた。何?私が女ということで、文句があるのか?確かに、私は女だ。男と比べれば腕力や体力では劣る。けど、少なくとも目の前の上級生より私の方が強いのは間違いないのだ。
「そう言うなら、アンタも痛い目に遭うかもしれないわよね…?ここはそういう場所なんでしょう」
私は足を前後に開き、腕を構えて臨戦態勢を取る。上級生の男は私の挑発に乗ったようで、同じく臨戦態勢を取った。
「後悔するなよ」
「どっちが」
空気がピリッと張り詰める。だけど、私たちが拳を交えることは無かった。
ドスゥゥゥン!!!
突如、外から何か重たいものが落ちてきたような音。
「きゃああああああ!!」
そして、悲鳴と共に聞こえてきたのは、腹の空かせた獣の咆哮だった。
「な、何よコイツ…!」
私たちは外に出てそれを見て絶句した。私の言葉がその場にいる全員の言葉を代弁していた。それは巨大な狼だった。3mはあるだろう巨体は、自然にいる狼とはかけ離れた存在だとしか思えない。その咢に噛みつかれたら、人間なんか簡単に引きちぎられるのは簡単に予想できるだろう。
しかし、その狼は大きさこそ異常だがまだ納得できる範囲だった。これ程大きな個体はそうそういないだろうが。だが、どうしても違和感を覚えさせるものが背中から生えているのだ。
翼。
猛禽類の翼なような物が、その狼にあったのである。
「なんと面妖な…」
上級生がポツリと言葉を漏らした。そう言わずにはいられなかったのだろう。
私は、あまりに現実から離れた光景にしばし放心していたけど、その狼がぐるりと周りを見渡すのでハッと正気に戻った。
(何かを、探している――?)
一瞬過ぎった考えを取り敢えず保留にして、固まって動かないセレ姉に声をかける。
「セレ姉!周りの人たちを安全な所に避難させて!」
私の声にビクッとしてからすぐに頭を巡らしたのだろう。コクン、と頷いて同じように動けないでいる生徒たちに声をかける。
「ここは危険です!早く安全な所へ!」
しかし、狼は急に動いた生徒たちに敏感に反応した。私は咄嗟に服の下に隠していた銃を出し、撃つ。
パン!パン!パン!
私は威嚇目的で足元に3発撃ち、そのまま狼の視界に入る様に生徒たちの流れとは反対方向に走る。私の持つ銃ではただの時間稼ぎにしかならない。だから、時間を稼ぐ。
私に興味が移ったのか、はたまた違う理由なのか。とにかく狼は私を追いかけてきた。
「はっはっはっ」
私はなるべく遮蔽物を挟むように走って距離をつめさせない、が。
「あっ」
私は足を躓かせて転んでしまう。マズッ…!
私は噛まれると思って目を閉じた。…あれ?恐る恐る目を開けると、後ろ脚の付け根から血を流す狼がいた。
「まったく、突然走るから追いかけるのが大変だったぜぇ」
「ふん。もう少し考えろ。ここには騎士クラスが2人いるんだからな」
そこには、長剣を持った2人の姿があった。