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私、闘う。


「いやー、すっきりしたなー」


「ほんと。とっても似合ってるわ、ニーナさん」


 散髪は無事終わった。私としては、髪を切っていく度にセレ姉もミュラーもどんどん言葉少なげになっていったことがとても不安をそそる。


 …失敗したってことはないよね?


「セレ姉、鏡見して」


「…見ます?」


 これ絶対失敗してるー!だからか!だからか!さっきからフォローにしか聞こえない賛辞は!!


 私は手渡された鏡を、恐る恐る覗いた。そこには。






 奇麗な黒髪を左右の肩から下した女の子が私を覗いていた。…うん、なかなか可愛い子じゃない。


「ねぇ、この鏡不良品?」


「いや、ビックリするのも分かるけどよ。それはお前だお前」


 えー、またまたぁ。そんな冗談を。


「そうよ。ていうか、鏡を覗いているのはあなたじゃない」


 えーと……?


「これ、私?」


 うん、と頷く二人。そうかー、これ私かー。


「え」


「えええええええええええええええええええええええ!!!????」


 そりゃもう叫びましたよ、思いっきり。















「さて、武道場に行くとするかー」


「そうですね」 


 呑気に歩きながらしゃべる二人をよそに、私は全力で周囲を警戒していた。右良し、左良し。


「おいおい、そんなに警戒すんなよ。ヘンに見えるぞ?」


「やややヤッパリ!?私の髪型変!?」


「…意識しすぎだ」


 そ、そういわれても…。


「先輩の言うとおりですよ。気にしてたって始まりませんし。可愛いと思いますよ、私は?」


 うう、髪を切った張本人が何を言うか。


「あー、行ってやんな。こいつは恥ずかしがってんだよ。今の今まで自分の容姿に頓着してなかったんだからな」


 顔なんて真っ赤だし。ミュラーが付け加えた一言で私は顔がかっと熱くなるのを感じた。きっと、今の私の顔は熟れたトマトより赤いんだろう。


「傭兵やって長いんだろ?きっと、お洒落する暇も無かったはずだ。ここいらで羽目を外すのも良いんじゃないかと、俺は思うんだがな」


 この赤毛め。私は顔を赤くしながら二人の後を着いて行った。







「ここが、武道場だ」


 私の目の前には、木造の大きな建物が建っていた。門の上にうねった文字が看板に書かれている。


「ああ。あれは東方の文字だよ。漢字って言うんだそうだ」


 そう説明しながら建物の中に入る。中では組手をする者や木剣で素振りをする者、模造剣で試合をしている者など様々だ。


「ここが本館。外庭にでると射撃場もあるぞ。最近、動体射撃訓練ができる装置が入ったらしいな。俺は剣を使うから詳しくは知らないが…」


「へー、結構色々あるんだねー」


 私はきょろきょろと辺りを見渡す。1,2,3…。


「ふーん」


「どうした?」


「いや、別にぃ。あんまり、強そうな人はいないなぁって」


 私は思ったことをそのまま言葉にした。予想していたより、全然強そうな人はいない。良さそうなので4人ぐらいかな。


「そりゃお前、現役の傭兵と比べるってのも酷ってやつだろ。俺たちゃまだ学生だぜ?」


 はっはっは、と二人仲良く笑いあう。まったく、その通りだ。ただ、そう思わない、思っていない奴がいるのもまた事実。


 さっきから傍で聞き耳を立てている上級生らしき男が私たちの方へ近づいてきた。




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