私、旅立つ。
まさかまさかの主人公不在。自分は一体どこに行きたいんだろう。
フランス革命。
この革命は世界に多大な影響を与えた。新フランス政府は旧フランスが新型魔術の開発に成功していたことを発表。世は拓かれし時代へと進んでいった――。
ゴーシュが行方不明になって10年。彼がいなくとも時は進んでゆく。この10年で魔術の技術が発展し、以前より生活に深く浸透していった。フランスは民主国家へと成長を遂げ、ヨーロッパ周辺の中心地として発展している。
しかし、魔術の革新は生活だけでなく、戦争目的として新兵器の開発、研究が盛んに行われるようになった。
そして、物語は再びローマ王国から新たに始まる――。
私はライフルに付いたスコープを覗いていた。拡大された視野のは一頭の鹿。私は深呼吸をして息を整える。集中。私は息を止めて引き金を引いた。
「ベルガ―、今日は大物だね」
「ウォン」
私は仕留めた鹿をベルガ―の背に乗せて山を下りていた。あれから10年。私は強くなるために特訓した。私は女だから、腕っ節はあまり伸びないと思ったし、パパも同意見だった。
だから、私は銃の扱いにこの10年を費やした。ただ強くなるために。ベルガ―も協力してくれて、今では何とか一人前だ。
「ゴーシュにぃがいなくなってから10年、かぁ」
10年。今年で私は14歳だ。そろそろ、パパにあのことを相談してみようかな。
私はベルガ―と一緒にテントに戻った。
「パパぁ。お肉、取って来たよー」
「おう。良く帰ったな、ニーナ」
テントの奥からパパが出てくる。この10年でパパも年を取った。白髪が出てきて少し老けた感じがする。もっとも、『逆鱗』の名は未だに健在だ。
「あのさー、パパ。相談があるんだけどー」
「何だー?」
パパは鹿の肉を捌いていて背を向けている。
「ゴーシュにぃ、探しに行こうかと思ってるんだけど――」
ドサ。
肉を落とした音がテントに響いた。
「パパ?」
何か震えてるんですけど。
「ぱ、」
「ぱ?」
「パパは許しまヘンでー!!」
「パパが壊れた~!?」
その日は一日中パパが暴れて全然話が出来なかった…。
「で、ずっと暴れて聞く耳を立てないと」
「はい。どうにかなりませんか?ガイおじさん」
私はローマ王宮に来ていた。パパが役に立たない以上、こんなことを相談できるのはガイおじさんだけだ。王様に頼みごとって、どうかと思うけどね…。
「うーん、そうだな…。それだったら、一ついい考えが無いこともない」
「あるんですかっ!」
私はその返事に前かがみになった。どんな内容でも、ゴーシュにぃを探せるなら何でもいい。
「うん。実は、私の娘が今フランスに留学に行っていてね。知らないかな?パリ中央騎士学院って」
「確か、フランスにある学校ですよね?」
「その通り。ここに行ってみてはどうだろう?ここなら、各地から最新の、それもあらゆる分野の情報が入ってくる。ここならゴーシュ君を見つけることができる手がかりがあるんじゃないかな…。というか、娘はそれが目的で入学したみたいなんだよ」
はぁ、とローマ国王がため息を付いた。
「積極的になったのは喜ばしいんだが、なんともなぁ」
国王の姿には哀愁が漂っていた。…なんだかかわいそうだな…。
「おほん。とにかく、これは提案だ。資金はこちらが持とう。娘の護衛、という形で依頼を出すからね」
ローマ国王はパチン、とウィンクした。
技術の進歩って凄いよね。今じゃこんな大きい鉄の塊が魔術で動くんだもん。私は荷物を持って列車のホームに立っていた。見送りはパパだけだ。
なんでも、ガイおじさんから別の依頼が入ったらしい。みんなは準備で大忙しだ。
「くそ…、ガイの奴、要らんことに頭が回りよって…」
パパは出発の時までぶつぶつ文句を言っていた。まったく、パパには困ったもんだなぁ。
「だいじょぶだよ。ベルガ―もいるし。ね、ベルガ―」
「ウォン!」
ベルガ―は、任せろ!とばかりに返事をしてくれた。うん、頼りにしてるからね。
「それじゃあ、行って来るね」
「気を付けてな」
プシュー。
どうやら列車の準備も整ったらしい。私たちは列車に乗って窓から身を乗り出す。
「行ってきまーす!!」
私はパパが見えなくなるまで手を振り続けた。
――いざ、フランスへ。
今回からニーナが主人公になります。さて、ゴーシュは見つかるのだろうか?
あと、ニーナに使って欲しい銃とかあるでしょうか?感想で言って頂けたらできるだけ調べて使うようにします。
銃っていっぱいあって分からないんですよね…。詳しい人はぜひ!
11/03 設定上の都合により、一部訂正を行いました。