俺、惑う。
次の日。
国民に国王からハイランド王子暗殺の報が知らされた。
あくまで、暗殺である。国民たちはこの醜聞とも言えるスキャンダルに大いに想像力をかき立てられ、その存在を疎んだ国王が犯人ではないか、という噂すら流れた。
結局、この話題も次第に関心が薄れ、忘れられてゆくこととなる。
「案外、国民って鋭いよな。まぁ、実際はあっちから死にに来たようなモンだけど」
俺はテントを張りながら独り言を漏らした。
明日からサーカスが始まるので、全員が何かしら仕事をしている。元々はサーカス団としてこの国に入ったので、こういうこともしなければいけないのだ。
まぁ、こういう所を資金源にしてるんだろうな、と杭をハンマーで打ちながら思った。どうやら、サーカス団としてもそこそこ有名であるらしく、さっきからちらほら差し入れやら見学やらで人の出入りが多い。
「この時代、娯楽はほとんどないんだろうしなぁ。えーと、市民を満足させるのはパンと…何だったかな?」
やはり、前世の記憶は前より薄れているみたいだ。この感じからすると、重要な記憶を優先的に覚えているのかな?どっちにしろ、あと10年で完全に消えてしまう記憶だが。
「すいません」
俺は後ろから声をかけられた。後ろを振り向く。するとそこには、同い年くらいの少年がいた。サーカスが珍しいのか、目をキラキラさせて俺を見ている。
「何か?」
「ああ!すいません。実は、ちょっと聞きたいことがあるんですけど」
ああ、やっぱりか。しかし、サーカスってそんなに珍しいのかね?俺はそう思いつつ少年に耳を傾ける。
「コンヴェールの村って、知ってます?」
俺はその名前を聞いて、顔から血が一気に引いていくのが分かった。
「な、んで、その村の名前を…」
何が可笑しいのか、少年はクスクスと笑う。無邪気に。無垢に。
「さぁ、何ででしょう?」
その、人を使って遊ぶような、気持ちが悪い笑い方に、俺は直感的に目の前の存在が何だか分かった。
「何しに来た。俺の前に出てきて、今度は何をたくらんでる?」
「ひどいなあ。僕が君に何かしたかい?もっとも、今回は確かに、たくらみごとはあるけどね」
「失せろ。二度と俺の前に現れるな」
俺は話も聞かずに切り上げる。コイツに関わるとろくなことにならない。ただでさえ、トラウマの原因を作った奴なのに。
「いいのかなぁ?君にあんなひどいことをした奴らを教えようと思ったのに。ざーんねん」
俺は、その言葉に足を止めるほかなかった。
「ん、ん?知りたい?知りたいよねー。心の底では、復讐してやりたいって思ってるんでしょう?」
それは。
「僕もね、君に与えた才があんな風に機能するとは思わなかったんだ」
とても甘く。
「ごめんね?」
とても甘美で。
「だからさ、せめてものお詫びとして、一生かかっても知りえないような情報」
人を狂わせる。
「つまり、あの村を焼き払い、皆殺しにした犯人を教えてあげようと思ったわけさ」
悪魔の囁き。
「さぁ、どうする?」
「おーい、ゴーシュ。飯だぞ」
ガンテは辺りを見渡す。
「ゴーシュ?」
返事は、無かった。
PV8000、ユニーク1000突破!
どちらも初めてで興奮してます!もっと見てもらえるよう、頑張るぞ~!!