俺、護衛する。3
ついに親父の実力が…!
「ハイランド王子か…。本人がこんな大それたことをするとはな」
俺は腰に差していた鉈――村を出るときに持ってきた物だ――をハイランドに向ける。
「だがこれも仕事。死んでも後悔すんなよ」
「ほざけ、ガキ。それに俺様は次期王だ!国王の方にも刺客を送っている!かなりの手練れをな。もうこの国は俺様のモンだ!!」
俺はハイランドのセリフにため息を付いた。ていうか、三流以下のセリフだよ。今時そんなこと言うやついないよ。
「はぁー、無理無理。親父に勝てる奴なんて、そうそういないよ」
「はぁー、暇だ。なぁガイ。何とかならんか?」
「お前はもっと緊張感を持って欲しいものだね」
ローマ国王は腕組みをしながら部屋の中をグルグルと回っている。気がかりがあってしょうがない様子だ。
「落ち着けよ、ガイ。ゴーシュはやる奴だ。お前の娘は傷一つつかんだろうよ」
「それは分かってはいるが――」
「ぎゃあ!」
「ぐはっ!?」
「おお、来たみたいだな」
バン!!と扉が開かれる。そこから5人の武装した男たちが部屋に入ってきた。
「ローマ国王!その首、貰い受ける!!」
一人の男が長剣を振りかぶる。
「あー、あー。無視すんなって」
ガンテは素早く国王と男の間に割って入り、拳で迎撃する。その一撃で男の着ていた鎧がひしゃげ、胴に拳の跡が残る。
「ぐぅ…!貴様、何者だ…!?」
「おいおい、ガンテ。手加減か?それとも腕が落ちたか?」
「何言ってんだ。ここで殺したら汚れるだろ?」
「几帳面だなぁ、お前も。いや、汚れてもいい場所だったら躊躇なく殺していたってことか?」
「ふん。お前の事だから汚れたものの代金を請求されそうな気がしてな」
「私はそこまでケチじゃない。パーッとやりたまえ」
「了解」
そこでガンテは未だに攻撃する気配のない暗殺者たちに顔を向ける。
「どうした、今のは絶好のチャンスだったぞ?お前たちはやる気がないのか?」
「ガンテ…?ま、まさかガンテ・アーバント?」
ごくり、と暗殺者の一人が独り言を漏らす。
「ああ、そうだが?」
ガンテは何でもないように肯定した。
その瞬間、男たちは悲鳴を上げんとばかり喚きだす。
「き、聞いてない!こんな化け物が相手なんて、聞いてないぞ!!」
「終わりだぁ!ここで死ぬんだぁ!!」
「いやだいやだいやだ…!死にたくない死にたくない死にたくない…!!」
「どけ、早く逃げさせろ!」
「……!(ブクブク)」
あまりもの混沌具合にローマ国王はガンテに恐る恐る質問する。
「…ガンテさん?これは一体?」
「知るか」
ガンテはそう一言返すとズシッと一歩踏み出す。
「ひぃっ」
「別に、お前たちを殺したって俺の気が晴れるわけでも、ましてはこの馬鹿を助けようなんて気はさらさらねぇ」
「…!だったら」
男たちはその言葉で色めき立つ。しかし、次のガンテの言葉で地獄の底まで叩き落される。
「だが。お前たちを殺せば金になる…恨むなら、お前たちを雇った奴を恨め」
その言葉と共に、ガンテの影から豪槍が現れる。
「クソッ!!」
逃げようとしていた一人が剣を抜いてガンテに切りかかる。その動きは、確かに一流の武人の動きで無駄な動きはほとんどなかった。
突き出したガンテの槍に当たる――その瞬間。
バボッ!!と。
豪槍から凄まじい勢いで何かが放出される。
男たちがつぶった目を開くとそこには――まるで型抜き機でくり貫かれたように虫食いのある、肉片だった。
「「「「―――――!!」」」」
「さぁて」
ガンテは肉食獣の目――狩る側の目で暗殺者たちを見る。
「次は、どいつだ?」
ガンテの武器などの詳細は章の最後にまとめます。
こうご期待?