俺、護衛する。
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初めてづくしで狂喜乱舞状態です。
初心者で、まだまだ文章が垢抜けないですが、もっと楽しんでもらえるように、頑張っていきたいと思います!
俺と親父は帰路についていた。セレナは俺たちが帰ることをとても残念がっていたが、俺が「また会おう」と約束すると上機嫌になった。今はローマ国王と一緒に城門から俺たちをずっと手を振って見送ってくれた。
俺はその姿に幾ばくかの罪悪感を覚えたけれど、これも仕事、と割り切って前を向く。セレナは知らないことだが、この後俺は姿が見えなくなったら取って帰って城に戻ることになっているのだ。
それまでの間に、親父から必要な情報を聞かされ、自分で整理していく。
ローマ国王の命を狙っているのは国王の息子――ハイランク・ズーク・ローマ王子だ。彼とセレナは歳の離れた異母兄妹で、彼は20歳になる。
このビックリするほどの歳の差の理由は、俺とニーナと似ている。彼、ハイランク王子の母親は元々はローマ国王がまだ若いころに付き合った女性だったらしい。彼はつい最近城に現れ、その関係を城でぶちまけたそうだ。
ローマ国王としてはそんなことを言われれば無下に放り出せば彼が何を言うか分からない。結局、彼を監視する意味で城に置いているそうだ。
彼が急に表舞台に出てきたことも気にかかる、と国王が言っていたらしく、その点は俺も同感だ。何せ彼は突然出てきた――継承権第1位なのだから。
これは、国法で定められているらしく、長男が立太子の優先権を持っているらしい。
突如現れた継承権第1位の男――正直言ってかなり怪しい。さらに、この問題はエレナにも飛び火した。ハイランク王子はどうやらセレナの事を目の仇にしている。その理由は国王の継承指名権があるからだ。
確かに、法では長男が継承権第1位を与えられるわけだが、一つだけ例外がある。それが国王による継承指名権だ。これは、読んで字の如く国王が王位継承権を指名できる、というもので、これは今回のケースに当てはまるのだ。
それは、もし、後から継承権のあるものが現れたら、国王が優先権を指名してその者に与える、という内容だ。この法がある限り、ハイランク王子は継承権を無効化されてしまう訳である。
セレナはこの法があるからこそ命を狙われる可能性があるのだ。ローマ国王はその懸念を抱いたため、俺たち『三つ首の番犬』に依頼があった経緯だ。
「つまり、その法のせいでセレナは命を狙われているんだろ?だったら、国王本人が命を狙われる理由が分からない」
「ああ、おそらくこれはハイランク王子以外の人間も関わっているんだろう。あいつは、元老院の奴らが怪しい、と言っていた」
元老院は、今で言う国会議員みたいなもので、この国の有識者たちで構成されている組織だ。これは、宰相のようなもので、国王と元老院のツートップで国を動かしている。
今回の事は国王反対派の人間が協力しているのでは…というか、十中八九そうだろうな。
「親父は国王を、俺はセレナを守ればいいわけだな」
「その通り」
仕事は単純であればあるほどいい。余計なことを気にせずに済むからな。
親父から事前に準備していたあるものを預かり、いったん分かれて俺は城の裏手側に回る。セレナのメイドさんが入れてくれる手はずになっているのだ。
俺は周囲に誰もいないことを確認してから、裏門を教えられた回数、リズムを付けてノックする。
すると、一人のメイドさんが門を開けてくれた。
「ゴーシュ様でしょうか」
「はい。窓の下で愛を歌いたく参上しました」
これはセレナを護衛しに来た、という暗号だ。…もっと他は無かったんだろうか。
「こちらです」
メイドさんは手招きして城の中に入る。
さぁ、初仕事といきましょうか。
俺は身に着けた装備を確認してから、メイドさんを追って城の中に入っていった。