俺、仲良くなる。2
ここで立ち話はどうか、ということで俺たちは中庭に行くことにした。目的が前後したけどまぁ、結果オーライってことで。
中庭は、なるほど流石は天下のローマ城と唸らせるにたる物だった。様々な色、種類の花が、互いを引き立てるようにバランスよく植えられていて、見ていて心が洗われるような心地だ。
もっとも、表情には出ていないだろうが。少し残念だな、と思いつつ、中央にあるベンチに二人で腰かける。
セレナは顔をまだ赤らめていた。?熱でもあんのか?
俺はふと疑問に思ってセレナの額に手を当てる。
「ふみゃあ!?」
セレナは猫みたいな声を出して、ビクゥっ、と体を震わせた。
「あ、悪い。驚かせた?顔が赤かったから、熱がないか確かめたんだけど…」
うーん、熱くは無かったし、熱があるわけではなさそうだ。
「い、いえ。私は大丈夫です」
ぶんぶん手と頭を振るセレナ。俺は本当に大丈夫か、と思いつつ、俺は感心していた。
「セレナって、俺とそんなに年齢が変わらないのにすごい言葉遣いが上手いよな」
そう。たとえ俺が年上だとしても、セレナは立場上、敬語なんて使う必要はないのだ。それなのにこんなに敬語が上手なのは、普段から使っている、ということなんだろう。
だが、セレナは俺が言ったことに何故か顔を青ざめさせていた。
「へ、変でしょうか…?」
上目づかいで俺を涙目で見つめる。これはっ…!想像以上に破壊力があるぞ…!?
「いや、変じゃないよ、セレナによく合ってるっていうか…。雰囲気が、かな」
セレナは一転、また顔を赤らめる。今度は嬉しそに俺を見つめて、微笑む。
俺たちは夕方になるまでずっと話し込んでいた。
俺は、中庭を赤く染める夕日に気が付いた。ちょうど西日が入るように設計されているんだろう。白い城壁に夕日の赤はとてもマッチしていた。
そろそろ、親父たちも話が終わっているころだろう。俺はベンチから立ち上がって背伸びをして曲がった背骨を伸ばす。
「そろそろ親父の元に戻らないとな」
俺は何気なくそう呟くと、隣から「ええっ」と声が聞こえた。声の方を振り向くと、口元に手を当てたセレナがいた。
俺が見つめていると、わたわたと手を振る。その様子が少し可笑しくかった。
「あ…」
「どうした?」
いえ、とセレナは首を振る。そのまま、セレナはにこりと花が咲くように笑った。
「ゴーシュさんが、笑うのを初めて見たから…」
俺はセレナの言葉に驚いた。表情が、顔に出た…?あの日から、一度も感情なんて表に出なかったのに…。
俺は内心の動揺を誤魔化すために、「…それを言うなら、セレナは笑うとかわいいな。さっきのは、かなり良かった」と言うことしか出来なかった。
セレナは顔を真っ赤にしてあうあうしていたが。
俺たちは親父たちがいる部屋へと戻っていった。部屋に戻るとやけに感激したローマ国王と、ニヤニヤ笑う親父たちがいたが。
不思議そうなセレナをよそに、俺は親父のすねを一発蹴っておいた。涙目の親父にローマ国王とセレナは笑い、俺はざまぁ見やがれ、と鼻息をついた。