俺、仲良くなる。
「幻聴が聞こえた気がするので、もう一度言ってくれませんか?」
「うん、娘を護衛してくれない?」
うんっ!幻聴じゃないや!
「じゃなくて!何で俺なんですか!?」
「いや、君と歳も近いし、あの子、人見知りで友達もいないんだよ。良かったら友達になってくれないかな?」
一介の、しかも傭兵(しかも子供に)頼むことじゃねぇー!
「諦めろ、こいつは本気だ。質の悪いことにな」
親父がポンポン、と俺の肩を叩く。
「雇われ者は、雇い主には一生勝てねぇよ」
俺はがっくりと肩を落とした。
しかし、親父はこうなること分かってたっぽいな…。城に来る前に意味ありげに笑ってたし…。
俺は、別館へと続く廊下を歩いていた。親父とローマ国王は今後の警備体制について話をする、ということで俺は部屋から放り出された。
親父の言うとおり、雇い主の意向は絶対なわけだから、俺が不平不満を言ったところで何かが変わるわけじゃない。
それなら、ちゃっちゃと依頼内容を済ませた方がいいだろう。
しかし、生前の俺ですら女子とは会話をあまりしなかったからな。歳は一つ下のようだけど、果たして上手くいくか…。
俺はため息を付きながら歩みを進めた。なんでも、今の時間帯はたいてい中庭にいることが多いらしい。それだったらと教えられた通りに中庭に行ってるんだけど…。ここ、どこ?
「まいったな…。道が分からなくなった」
無駄に広いよ…王城って。迷路みたいだし。
俺はうんうん唸りながら道筋を思い出そうとする。
「あの…」
ソプラノのきれいな声。ローマ国王の時も思ったけど、この国の人は声が良いな。
俺は後ろを振り向くと(考えるのに夢中で後ろまで気配を読めなかった。修行が足りないな)、そこに俺より少し背が低い女の子がいた。ローマ国王と同じ青が少し濃い空色の髪を肩まで伸ばしている。それと、同色の瞳。正直、かなりかわいかった。
もしかしてこの子が…。
「あの、お困りですか?」
この子がローマ国王の娘だろう。なんせ同じ髪の色だし。
「君は?」
「あ、えと、その」
「ごめん、先にこっちの名前だよな。俺はゴーシュ・アーバントだ。今日は親父が国王陛下と話があるから、城に来たんだ」
「わ、私は、セレナーデ・エレナ・ローマ、です」
やっぱり。
「セレナーデか…。セレナって呼んでいいか?」
「え?」
「いや、長いから覚えにくいし」
あ、落ち込んだ。フォローフォロー。
「それに」
続く俺の声に顔を上げる。
「君とは、友達になりたいから」
「あ…」
スッと右手を出す。
「握手、しよう」
「う、うん」
ちょっと顔を赤らめながら、俺と彼女は握手する。
「で、返事を聞いてないんだけど」
「あ、はい」
「よろしく、セレナ」
「はいっ!」
俺たちは互いに頷きあった。
この時、セレナは顔が赤かったけど、恥ずかしかったんだろうか?わからん。
眠いよー…。ぐぅ。