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俺、雇われる。


 俺たちアーバントサーカス団は、1か月の旅路を経て国王、ガイセリック・ヴァン・ローマⅡ世が統治する、ローマ王国に到着した。


 え?時間の流れが早い上になんでサーカス団なんだって?それにはもちろん、理由がある。


 あえて問うが、1カ月にも及ぶ修行をだらだらと書き連ねた駄文を皆さんは飽きずに読めるだろうか?いや、読めない。(反語)その時のもろもろは近いうちにおまけでも書くんじゃねーの?そういう声があったら書くかもね。


 さて、メタ発言に続けて、何故サーカス団かと言うと、真正面から「俺たちは傭兵です」、なんて言ったら、まず、入国を丁重にお断りをお願いされるだろう。武力的に。


 まぁそんなことがあっても負けることはまずないが、自分たちの方から厄介の種をまく必要はない。だからサーカス団と言って正体を偽る必要性があるのだ。


 ちなみに今回はサーカス団としてやって来たのではなく、仕事(・・)でここ、ローマに来た。親父に今回の雇い主(クライアント)について聞いてみたがはぐらかされるばかりだった。守秘義務ってやつかもしれないな。まぁ、当たり前か。


「ねぇねぇ、ゴーシュにぃ。ローマってどんなとこなの?」


 俺は幌馬車の中からボーっと外を眺めていたが、服の袖をクイクイッと引かれるのに気が付いてニーナの方を振り返った。


 ニーナは黒髪をした目がクリッとしたかわいい女の子で、俺の妹に当たる。妹と言っても異母兄弟だがな。親父に問いただしたところ、母さんと離婚した2年後に〝やっちゃった〟らしく。


 親父の言い訳によると『俺に惚れた女が迫ってきて、女がいると断ったにも関わらず、親父の事を諦められずに酒で泥酔させられたんだ。結局、女は自殺してニーナだけが残った』と、言っていた。


 流石にニーナを一人にするのは忍びなく引き取ったらしい。


 げに恐ろしきは女の執念か。とにかく、血は半分しか繋がっていなくても俺の妹なのには変わりがない。最初は俺に近寄る素振りすら見せなかったがある日突然俺に懐いてきた。


 その日は親父に八つ当たりという名の奇襲を受けて散々だったが(その後ニーナに、「ゴーシュにぃをいじめないで!」と言われて親父はしゅんとしていた)。


「ああ、ローマは王様がいる国でね、この辺りじゃ一番大きな国じゃないかな」


「へぇ~」


 口を大きく開けて感心したように目を輝かせる。


 そこに、親父が俺を呼ぶ声が聞こえた。俺は「また後でな」とニーナの頭を一撫でして親父の元へ向かう。


「馬車を停めたら王城へ行く。お前もついて来い」


「はぁ?なんで?」


「行けば分かる」


 親父は意味深に笑って団員に指示を飛ばしに行った。



 一体何なんだろうか?









 俺は親父と連れられて王城の玉座の間にいた。親父が門番に名を告げ、門番が不審人物を見るようにそのことを伝えに行った。


 門番が顔を青くしてぎくしゃくした動きで戻ってきたときは驚いたが。


 俺はまさか国王本人と会うことになるとは露とも思わず、伸ばした髪を一纏めにして(ニーナは俺の髪を切ることを断固として却下した)、白のシャツにズボンと、みすぼらしくはないが国王に会うのには絶対にこれじゃダメだろ、という感じだ。


 ちなみに親父はシャツに皮のジャケット、あと普通のズボンと戦闘する時の格好となんら違いがなかった。


「国王のおなーりー!」


 部屋の隅にいる兵士が国王の入室を告げる。俺と親父は膝たちに顔を伏せ(臣下とか忠信の意味があるそうだ)、国王が入ってくるのを待つ。ザッザッという足音の後、玉座に座る気配。


「面を会げよ」


 テノールの効いた渋い声が頭の上から聞こえた。俺たちはその声で顔を上げる。


 正面には、屈強な肉体をした強面の王冠をかぶったオッサ…。ごほん、国王がいた。何あれ、思考読んだのか?まぁ、俺も空気を読むのだ。


「久しぶりだな、ガイ」


 親父空気読めよもー!!何気軽に言っちゃってんの!?国王だよ!!?


「ふん、今ではそう気軽に俺を呼んでくれるのはお前くらいだな、ガンテ」


 めっちゃ親しげー!?


「こいつ、俺と幼馴染なんだよ」


 親父、国王相手にこいつって言ったよ!ちょっと、国王も何笑ってんの!?


「驚かしてすまないね、ゴーシュ君。君のことはガンテから聞いているよ」


 親父、何言った…?


 やべ、殺気出た。


「はは、いや、ただ単に今回は君たちに依頼がある、ということだけだよ」


「い、依頼…?」


 俺の疑問に親父は頷く。


「ああ、今回はちょっとばかし厄介なことがらでな」


「うん、ガンテの言う通り。実は自分、命狙われてるんだよねー」


 さらっと何言ってんのこの国王(ひと)!?


 しかし、周りにいる兵士に動揺などはない。そのことを不思議に思っていると、国王は困ったように苦笑した。


「君が疑問に思うのも無理はない。実は前から命を狙われていてね」


「…そんなこと、部外者においそれと言っていいんですか?」


「ガンテとは知らない仲じゃないからね」


「じゃあ、俺がスパイだったら?」


 俺の発言にポカン、として。


「あっはっはっはっはっはっはっ!!」


 国王は腹を抱えて大笑いをした。そんなに傑作だったか?


「ああ、そうだな!その通りだ!君は面白いな」


 これだけ大笑いされたら誰だって憮然とした気持ちになる。そりゃどうも、と俺は返事を返した。


「うん、ガンテが言っていた通りだ!本当に無表情で普通の受け答えしている!」


 笑うポイントそこかよぉ!!あの日から感情が表に出ないんだよ、ほっとけ!


「うんうん、君になら安心して任せられるな」


 国王はうんうん頷きながら、ニッコリ笑った。嫌な予感がするんだけど……。


「君に、娘の護衛を頼みたいんだ」




 …………嘘ん。





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