俺、修行する。
傭兵になる、と言ったところですぐにはいそうですか。という訳にはいかないらしい。
なんでも、テストをしてどれくらいの強さか試すのが恒例らしい。
けど、俺はこのテストを受けることは無かった。親父が言うには、俺は並みの傭兵よりは強い次元にいるとか。
まあ、気配の殺し方とか、戦い方は全部この1年間で学んだことだからな。…じゃないと生き残れなかったし。このことを言ったら親父は何とも言えない複雑な表情をしていた。
「改めて、俺がこの傭兵団の団長、ガンテ・アーバントだ。よろしくな」
「ああ、よろしく」
「さて、早速だがお前にはテストの必要性は無いからな。と、言っても今のままじゃあ戦場に出てもすぐに死ぬだけだ。という訳で、お前には修行をしてもらうことになった」
「修行?まあ、分からなくもないけど…。どんなことするんだよ」
「なぁに、簡単なことさ。これから1か月、お前を殺しにかかる。その間、生き残れたら修行終了だ」
「はぁ!?」
何言っちゃってんの、このオッサン。頭イッテんじゃねぇの!?
「そこまで言わなくても…」
あ、声に出してた。ま、いっか。
「はぁ…。傭兵にとって絶対なもの。それは〝強さ〟だ。それ以外はいらないと言ってもいい。ようするに、サバイバルをしろってことだ」
今までもやってきたんですけど?
「顔に出ているぞ。…俺が言ってるのはなにも腕っ節の強さだけじゃない。毒物の知識。トラップの有無を察知できるか。相手の力量を見極める目。などなど…。要するに危機管理能力の修行だ。傭兵にとって大切なのはそこだ」
「お前は今まで〝野生〟しか敵はいなかった。しかし、これからは違う。悪意も敵意も害意も殺意もある、〝人間〟が相手だ。勝手が違うんだよ」
なるほど…。確かに、俺はそういう方面は全然分からないからな。
「それと、もう一つある」
「ん?」
親父は手招きをして誰かを呼ぶ。すると、部屋の外から一人の女の子が出てきた。親父と同じ黒髪の、目がクリッとしたかわいい娘だ。
「こいつ、俺の娘のニーナ」
「は?」
え?
「つまり、お前の妹な」
え、え?
「修行の間、こいつの面倒を見ろよ?」
え、え、え?
「ニーナが死んだらお前を殺すからな」
……………………………………………………………………………………………………………………………。
はぃぃぃぃぃぃ!!??
ゴーシュに衝撃の新事実!
(このムサいオッサンのどこを取ったらこんな娘が出来んのー!!?)
そっちか!