友よ ――めぐる春に寄せて
二度目の旅立ちを迎えたきみに。
友よ 憶えていますか
今ではすっかり思い出になってしまった日々を
今でも果たせないままのささやかな約束を
友よ 振り返ってみてください
あなたの歩いてきた道を
あなたが残してきた足あとを
そのひとつひとつに かけがえのないあなたがいる
もしかしたら まだ少女だったあなたとわたしもいるかもしれない
友よ 前を見てください
あなたが歩いてゆく道を
あなたが足あとを刻む未来を
きっと坂道があるでしょう
きっとぬかるむ泥の道もあるでしょう
礫だらけの 険しい道もあるかもしれない
けれど どうか
まっすぐ前を見てください
ゆっくりでも 走ってもいい あなたの道を歩いてください
たとえ苦しくなって立ち止まっても 大丈夫
そのとき 必ずあなたに差しのべられる手があるから
友よ 憶えていますか
思い出は遠く 約束は交わしたまま
いつかあなたの歩みの彼方に消えるでしょう
それでも
あなたの足あとに残るものは尊いと わたしは知っている
だから ふとあなたが振り返ったら
わたしはいつでも笑顔で あなたに大きく手を振りましょう