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~進展~

「ふぃ~、やっと帰ってきた……」


「まだ城壁が見えただけじゃねぇか。よく言うだろ? 家に帰るまでが遠征だって」


「……それは遠足じゃね?」






~~~~~






 渡たちが遠征から帰って一週間が経った。

 だが特にこれといったモノは無く、何か褒賞みたいなのがもらえるかな~、と期待していた渡にも少しの休暇しか与えられなかった。

 ガルザックによると、自分たちの仕事の内なのだから特別な獲物を倒さない限り褒賞はないのだという。


 そんな事よりも渡たちが帰ってきてから小さな事件が起きた。

 エリスが渡を避けるのだ。

 渡には心当たりなんてないし、周りに聞いても適当にはぐらかすだけである。

 そんな周りの様子を怪しく思いつつ、信頼できる仲間に相談する事にした。

 ガルザックと食堂の若者である。






~~~~~






「はぁ……」


「そう気を落とすなって。ちょっと……うん、ちょっとなんかあっただけだろう」


「そうですよ。あの時期の女の子は何考えてるのかわかりませんから」





 ここは食堂。面子は渡、ガルザック、食堂の若者(最近知ったが名前をルポというらしい)である。

 ここには三人以外誰もいないのだが、三人は一つのテーブルに身を寄せ合うようにしてこそこそと会議をしていた。その内容とは、


「いや、会議だってままならないし。最近はガルザックさんも来てくれるけどそれでもおかしいよ、エリス。なにか心配事でもあるのか……」


 勿論エリスの事である。

 流石にエリスの事が心配になったのだが、本人に直接聞くのも気が引けるのでエリスに近く、渡と親しい人を選んだ結果、この二人になったのだ。


「まぁお前が心配するほどのものでもねぇだろうよ。お前は成り行きを見守って、最後にがつんと決めればいいのよ」


「そうです。ワタルさんが心配する事じゃないです。流れに身を任せればいいんです」


 その流れがわかんねぇよ、と突っ込みたくなったがこらえる。


「……っ、まぁなるようになるか。本人の問題だし」


「そうそう。我々が首を突っ込むことじゃあありません。……さぁもう遅いですし寝ましょうよ!」


 渡はルポの少し無理矢理な終わらせ方を怪しく思ったが実際眠くなってきたので素直に従うことにする。


「それもそうだな……。じゃあここらへんでお開きにするか」


 三人は立ち上がり食堂を出て広間に行く。


 その間にガルザックとルポの二人は渡の後ろでこそこそと話していたが渡は気が付かなかった。


「じゃあここいらで、おやすみなさい」


「おう、頑張れよ!」


「応援してますから!」


 ガルザックとルポはそういって渡に親指を立てる。

 渡は良く分からなかったがとりあえず親指を立てて返した。


 三人はそこで別れ、渡は二階へ向かった。

 辺りは真っ暗で、不気味な雰囲気を醸し出していた。


(怖いなぁ……早く寝よ)


 そう思って少し早歩きになったその時、



「……ワタルさん」




「ギャー!!!」


 渡は思わず2メートルも下がってしまった。

 暗闇に慣れてきた目でよく見るとエリスが立っていた。

 俯いているため顔の表情は良く見えない。


「どっどうしたの?エリス」


 エリスは渡の言葉に肩をビクッと震わせると渡を見た。

 その目はすこし赤みがかっている。

 今にも泣き出しそうな顔だ。


「……ワタルさんを、待って、たんですげど……中々こないからここにいだら怖くなっちゃって……」


「あ、そうかそうか。ごめんね、待たせちゃって」


 その声を聞くとエリスは顔まで真っ赤になった。


「いっいや! それほどじゃないですよ!? 私が勝手に待ってただけですし!」


 渡には良く分からなかったが、とりあえず元気になったようなのでよしとする。


「で? 用事って何?」


 エリスは少し固まってから、深呼吸をしていった。


「明日、買い物につき……買い物に一緒にいってくれましぇんか?」


 何故言い直したのかも、噛んだ事もとりあえず脇に置いて置く事にする。


「買い物……別に構わないよ。休暇も余ってたし。明日買い物に付き合えばいいんだね?」


 その言葉を聞いた瞬間、エリスは後ろにバタン、とぶっ倒れた。

 渡はいきなりの事に戸惑ったが、エリスはまた起き上がる。


「ありがとうございますっ! ではっ明日の朝食の後でよろしいでしょうかっ!」


 エリスのは所々で声が裏返っている。

 渡はそれも脇に置いておく事にした。


「うん、わかった。じゃあまた明日」


「ひゃい! また明日でしゅ!」


 エリスはそれだけ言い残すと全力で自分の部屋に戻っていった。

 渡はエリスの行動を不思議に思ったが元気そうなのでよしとする。

 それから渡も自分の部屋に戻っていった。


 後ろにいた人影にも気づかずに……。

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