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~神の気まぐれ~

自分の文章力の無さにうんざりする自分。

「はっ!」


 視界がいきなりまぶしくなってがばっと起きた渡。

 視界に入ったものは、無かった。

 正確には真っ白だったから何も眼に映らなかった。

 そんな白い空間の中にいる自分はなんだか場違いな気がした。

 そんな空間でしばらく思考の整理をしていると後ろから声がかかった。


「あら? 一番乗りで私の元にやってきたのは将来有望な若者か」


 びっくりして振り返る。

 そこには金髪巨乳童顔ロリ美少女が立っていた。


(かわいい、じゃねえか)


 こんな緊急事態でもこんな事を思うことが出来る自分にまた少しだけがっかりする。

 しかも自分はロリコンではない。自分は変な性癖を持ってしまったのだろうか、とショックを受けた。


 それにしても……


「お前誰だ?」


 率直な疑問だった。


「あら、自己紹介がまだだったね」


 そこで金髪(略)少女は一呼吸おいてから言った。



「私は神だ」



 渡の思考がまた停止しそうになる。


 こいつはバカか?

 頭はいかれてないのか?

 たぶん迷子になってしまって寂しさのあまり変な事を口走るようになってしまったのだろう。


「君、お母さんかお父さんはどうしたの?はぐれたの?」


 渡はそう言って金髪少女に手を差し伸べた。


「馬鹿にすんな! 私は正真正銘の神様だ!!」


「いや、あんたみたいなロリータが神な訳がないでしょ。日本がそういう文化(オタク文化)で染まっていると思ったら大間違いだよ?」


 すると金髪ロリータはさらに怒って、


「ざけんな、たかが人間ごときが!! 貴様なんて私の力をもってすれば命など無いぞ!!!!」


 渡は金髪ロリが本気で怒っているので下手にこれ以上きれると手がつけられないと思い、ひとまず金髪ロリにあわせることにした。


「あーあーわかったよ。あなたは神様なんでしょ? で、その神様が私に何の御用でしょうか?」


 明らかに馬鹿にされているのが分かる言動だったが、怒っていても始まらないのでとりあえず神はこらえる。


「……っ!まぁ分かればいいんだ……。本題に入るが、お前は今お前に置かれている状況をちゃんと分かっているか?」


 渡はやはりこいつは頭がおかしいのかと思う。が、怒られては話が進まないので一応乗ることにした。


「状況って?この白い空間の事か?」


「それも含めてだが……。その様子だと覚えていないようだな……」


 神はそこで言葉を区切った。渡に考えさせる時間を置いてから、しかし渡が分からない素振りを見せるのではっきりといってやった。



「柳瀬渡。お前は死んだ」



……は?


 渡には訳が分からなかった。

 やはりこいつは頭がおかしいのかと思い、口を開こうとしたそのとき、


「うるさい! 私は正常だ! 正常に神だ! 全く最近の若者は話を聞かんで困る……」


 先を越された。渡は出鼻をくじかれたので仕方なく神に質問してみる。


「俺が死んだってのは、どういうことだ? 俺は生きているじゃねえか」


「違う。今のお前はただの残留思念だ。いわゆる魂というやつだな」


 こいつの言っている事が全く分からない。そう考えていると様子で分かったのか彼女は丁寧に教えてくれた。


「お前はな、マンホールから真っ逆さまに落ちて死んだんだ。でかい声にビビッて蓋に足引っ掛けて、な」


 そう言われて渡はだんだん頭が冴えてくるのが分かった。

 怒鳴られた時の感情、足を引っ掛けた時の恐怖、落ちるときの絶望感。


「その様子だと思い出したようだな」


「ああ……。俺って、死んだのか……?」


「ああ、死んだ」


 彼女はばっさりと切り捨てた。

 やりたいことはたくさんあった。高校に行くのが面倒くさくなったけど、楽しみにしていたのも事実で、青春を謳歌してやる!なんて思ってたのに・・・

 まだ15歳の、高校生になりきれなかった心には「死」というものが重すぎた。


「はは……俺死んだのか……ははっ」


 乾いた笑みがこぼれてくる。死んだのは分かっているが認めたくない。

 どうしようもない絶望感に潰されそうになっている時に彼女は言った。


「確かにお前はまだ高校生にもなっていない未熟な魂。死んだのは単なる不幸としか言いようがない。」


 だがな、といって彼女は言葉を繋げた。


「お前には最高にツいているようだ。」


 死んだのにツいているとは、どういうことだ? と渡は首を傾げる。


「お前はな、私が神に就任してから一番最初の死者なのだ。私は就任したら一番最初の死者を生き返らせることにしていたんだ。まぁ神の気まぐれというやつだな」


 渡ははっと首をあげた。


「じ、じゃあ俺は元の世界に戻れるのか!?」


 すると彼女はこう返した。


「確かにお前はまた生を受け、再び生き返ることが出来る。」


 しかし、世の中はそんなに甘いものではなかった。



「お前が生き返るのは元の世界ではない。また別の世界だ」



……は?


 渡には意味が分からなかった。

 別の世界ってどういうことだ?


「元の世界に戻してやりたいのは山々なんだが、元の世界に生き返るのは厳しく禁じられている。だから私はまだやり残した事がある者や未練がある死者を最初の一人に限って別の世界(・・・・)でやり直させることができるようにした」


 思考が追いつかない。

 別の世界だって?


「ま、まて神。別の世界っていうと、あれか? 並列世界(パラレルワールド)とかいうやつか?」


「お前らの世界ではそう呼ぶのかもな。他の世界では異世界だのなんだのといっているがな。」


 渡はパラレルワールドとかそういうのをあまり信じていない。が、今の彼女が言うとなにか説得力がある。


「まあとりあえず、だ。お前を違う世界で人生をやり直しすることが出来る。まぁその世界はお前の世界の常識は通用しないだろうし、分からない事も多いだろう。人間という種族がいない世界もある」


 渡は彼女の言葉を呆然と聞いていた。

 パラレルワールド……?そんなものあるのか?


「まぁお前がそれを望まないのならばこの話はなしにして、お前はこのまま輪廻の環に加わり、人格も何もかもかき消されてまた新しい存在に生まれ変わるだけだが」


 彼女は試すような眼でこちらを見ている。


 渡は決心した。


「……やってやろうじゃねぇか」


 彼女の眼の色が変わった。


「そうか、私の希望にこたえてくれる奴で嬉しいよ」


 神はそういって白い空間に座った。


「だが、ちょっと面倒くさいのがあってな」


 渡は耳を立てた。


「お前がこれから行く世界には『科学』の変わりに『魔法』があるんだ」


「魔法ってあれか?ファイ○とかブリザ○とかケ○ルとか」


「そんなF○みたいに便利な奴ではないが、大体そんなもんだ」


「そうなのか……。で、問題って?」


 神はいった。


「魔法というのは魔力……まぁ分かりやすく言えばMP見たいなのが必要なんだ。その世界の魂ならば全ての種族、全ての生物が持っているものなんだが、お前はその世界の魂ではないから魔力がないんだ」


 渡はショックだった。魔法は男の浪漫だ、と渡は思っていたのに。


「だから魔法分のハンデを何か一つ願いをかなえることで無くそうと思ったわけだ。」


「じゃあ俺にも魔法使わせてくれよ!」


「それは無理だ」


 神はきっぱりと言い切った。


「それはお前がその世界の住人ではないからだ。魔力というのは魂から生み出すもの。私が直接魂に、関与できればいいんだが、魂に関与す事も神であろうと厳しく禁じられている。だからお前は魔法をつかうことはできない。私も結構無理をしているんだぞ?」


 渡はここで自分の夢が潰えた事を知った。……くそぅ。


「じゃあ、魔法以外ならなんでもいいのか?」


「お前の世界の理が通じるものならな」


……うーん、と渡は頭をひねる。


 魔法以外といわれると中々出てこない。


 空は飛べない、科学を持っていっても壊れたらそれまで……。


「自分の体を強化することしかないんじゃないか?」


「私もそう思う」


 このロリータ神め……!


「じゃあお前の体を強化するという事でいいな?」


「ああ、そうしてくれ」


 そういうと神の手がぽわん、と淡い青で光り始めた。


「はっ!」


 神の掛け声とともにその光は俺のほうに飛んできて、そのまま体の中に入っていった。


 なにかからだの中で動いている感覚がある。はっきりいって気持ち悪い。


「なぁ、なんか体の中を動いているんだが」


「ああ、もうすぐで慣れるはずだ」


 神がそういった直後、体の中のものの感覚は消えていった。


 その代わりに自分の中の何かが燃え滾っている気がする。


「これでお前は今から行く世界の住人よりも強い力を手に入れた。だが上には上がいる。気をつけろよ?」


 神はまた立ち上がってなにやらぶつぶつ言い出した。


 それから床にむけて力を放つ。


 すると床に真っ黒い円形の紋章みたいなのが出てきた。


「これに乗っかれば別世界に行くが……心の準備はいいか?」


 準備なんてとっくに出来ている。


「ああ、大丈夫だ」


「そうか……何か連絡があったらこちらからかける。じゃあ、いってこい!」


「おう!」


 渡は紋章に足を踏み入れた。


 その瞬間渡は言いようもない浮遊感と眩暈に襲われた。


「そうそう、言い忘れていたがお前の称号は『神の使い』だ。忘れるなよ?」


なんて言ったか全く聞こえなかったんだが……。






~~~~~






 気が付くと何か祭壇みたいな場所に立っていた。

 周りには大勢の人々。

 いや、人に猫耳犬耳尻尾翼等がついた、人型の生物が大勢いた。

 髪の色や眼の色、身長や老若男女関係なく様々な変な人たちが祭壇の周りに集まっている。


「……え?」


 周りの人たちはざわざわ、と騒がしい。

 渡も思考が停止していると、後ろから声がかけられた。


「おいお前。お前は…その、『ヒト』か?」


 渡が振り返るとそこにはいかにも姫様という人が立っていた。


 白を中心としたドレスを身にまとっていて、金色の髪を背中まで伸ばしている。王族みたいな雰囲気もぴったりだ。


「ん、ああ。確かに俺は人間だが……」


 渡は突然の事だったのでついそのまま答えてしまう。


「そうか。……おいお前ら! こいつを連れて行け!」


 姫らしき人がそばに控えていた兵士に声をかけると、兵士は渡を羽交い絞めにする。


「おい! なんだお前ら! 俺を放せ!」


 渡は兵士に捕まり、そのまま連れ去られていった。



 ……いきなり嫌な予感がする。

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