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クラスで人気者の明るい彼女は屋上ではオタクを楽しむ -クラスの盛り上げ役が、俺の隣でだけ素になる話-  作者: すなぎも


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第14話 桐生ゾーン、爆誕

 その日の夜。風呂も飯も済ませ、パソコンで適当な実況配信を垂れ流しながらスマホでゲームをしていた。頭を使わないこのまったりとした時間が至福の時だ。


 ——ぶるる。


 スマホが震えた。画面に神名と表示されている。

 出るのに少しためらうが、いつまでたっても切れないので電話に出る。


「もしもし」


『あっ、やっとでた! 遅いよ桐生くん!』


「遅いのは今の時間だ。夜遅いのに元気だな」


『夜はこれからだからねっ!』


「オタクにとってはゴールデンタイムか」


『そのとーり! っと、その前に。改めて今日のお礼が言いたくて』


 その言葉に、思わずため息が漏れてしまう。


「屋上で聞いたよ。なんなら聞き飽きてるから、もういいって」


『そんなこと言わずに。私の自己満足に付き合ってよ~』


 お礼を言葉にした方が気持ちが楽にって事か。


「ならさっさと済ませてどうぞ」


『お礼の言葉をそんな雑に勧めて来ることあるんだ!?』


「俺の中では済んだことだから」


『むうぅ……。気にしてないっていうのは嬉しいけど、それはそれでお礼の言い甲斐がないかも』


「お礼の言い甲斐とかないから。お礼は感謝の気持ちだぞ?」


『それはそうなんだけど……』


 どこか不満がありそうに呟いた後。


『今日は助けてくれてありがとね。桐生くんから電話がかかってきて、適当に喋って逃げろって。あの一言でかなり救われたから。心強かったよ』


「はいはい。どういたしまして」


『んぅー! 感謝してるのに感謝のし甲斐がない反応! 肩を掴ませてくれてありがとうとか、愚痴を聞いてくれてありがとうとか! いろいろ考えて電話したのに!』


 本音を言えば、真っ直ぐな言葉に恥ずかしくなっているが、それを言うと湿っぽい雰囲気になりそうなのでやめておく。


「それだけか? それだけならもう切るぞ?」


『つれないなぁ……。女の子からの夜の電話だよ? もうちょっと嬉しそうにしてくれてもいいのに』


「はいはい。じゃあおやすみ。また明日」


『待って待って! じゃあお願いがひとつ! カメラ、ONにしてくれないかな?』


「はぁ? なんだそのお願い。部屋映るだろ」


『見たいから言ってるんじゃ~ん。桐生くんの部屋、見せてよ~』


「普通に断る。じゃあおやすみ」


『待ってって! 桐生くんの部屋が見たいわけじゃなくて、見せたいものがあるだけだから!』


「なら初めからそう言え」


『ちょっとしたコミュニケーションでしょ! もう!』


 部屋を映さない場所へとスマホを置いて、カメラをONにする。


 画面に映し出されたのは相変わらずの派手な神名の部屋。壁にはポスターやタペストリー、棚にはアクスタ、フィギア。ちらりと映ったパソコンの画面ではケモ耳を生やしたキャラクターが手を振っている。


「画像で見た時も凄かったけど、動画で見るともっと凄いな」


『でしょでしょ? そして、今日の主役、見せたいのはココ!』


 神名のカメラが部屋をぐるりと回り、1つの棚を映し出す。そこにはこの前一緒に行ったクレープ屋のコラボグッズ。魔法少女☆マギウステイルのキャラクターアクスタが奇麗に並べられていた。


「この前のやつか。いいじゃん」


『可愛いよね! もうここは私のお気に入りだよ!』


「でも、なんでそこだけ少し隔離されてるんだ?」


 他のグッズ作品ごとにまとめられている。当然、魔法少女☆マギウステイルのグッズが集まる場所はあるが、なぜかこの前のアクスタだけは1つの棚にまとめられ、その棚すら他のグッズとは離れているように見える。


『気付きましたね、桐生くん。なんとここは……。桐生くんゾーンなのです!』


「なんだそれ」


『桐生くんと一緒に集めたやつはここに飾る。そう決めました!』


「あー……。そうか。でもなんか統一感なくね?」


 神名の部屋はオタクの部屋として完璧と言える。作品ごとにグッズがわけられ、驚くほど奇麗に並べられている。それだけに、この桐生ゾーンとかいう謎の名前が付いてある場所が残念に思ってしまう。


「部屋としての完成度が高かったから、そこの棚を含めるとレベルが1つ下がるというか、統一感が崩れるというか。なんか勿体ないな」


 率直な感想。


 しかし、神名の返事はない。


 それどころか、カメラが全く動かなくなる。


「神名? どうした? 電波わるいか?」


『……喜んで欲しかったのに』


「なに? なんて言った? 声が遠いぞ」


『喜んで欲しかったの!』


 いきなりの爆音に耳がキーンとする。


『統一感が損なわれるのなんてこの部屋を作った私が一番わかってるよ! それでも初めてコラボしているお店に桐生くんと行けて嬉しかったの! だからこのゾーン作ったの! もっと桐生くんと色んなところ行けるって思って、嬉しかったからここを作ったの!』


 ま、まずい。神名が今までに見たことないぐらい怒った声だしてる。水被った時ですらこんな怒鳴ってなかったのに。すぐにフォローせねば。


「そ、そうだよな。悪い。えっと……。嬉しい。凄い嬉しいぞ!」


 さすがにさっきの発言は無神経が過ぎたか。

 取り繕うように言葉を紡ぐ。


「いやマジ。俺も神名ともっといろんなところ行きたいって思ってたから。わざわざこんなところ作ってくれてサンキューな!」


 カメラが棚から外れ、神名の顔が画面いっぱいに映る。


 すっぴん——肌はふわっと明るくて、薄い唇に力が入って真一文字に結ばれている。怒って頬をぷくっと膨らませたまま、耳たぶだけ熱でほんのり赤い。


 学校で見る神名と比べて、幼さを感じる。


『ぷんっ……。ほんとにそう思ってる?』


 顔を背けて、横目でカメラを見る神名。幼さも相まって可愛いと思ってしまうが、この状況で言ったら火に油を注ぐだけか。


「思ってる思ってる! なんだかんだ神名といると面白いし」


『なんだかんだ?』


「いやもう普通に面白いし、もっと一緒に色んなところ行きたいと思ってるし! ほら、次はどこ行く? せっかくならもうちょっと桐生ゾーン? に魔法少女☆マギウステイルを追加したいよな」


 言いながら急いでキーボードを叩いてそれらしいイベントを探す。


「聖地巡礼……。は北海道だからさすがに無理か。ラジオの公開収録は締め切りしてて。映画はまだ先だし、円盤の購入特典は……。一緒に買いに行く意味ないか」


 なかなかいい情報が出てこない。

 その感にも神名の頬が少しずつ膨れ上がっていく。


 クソっ、助けてコウヨウちゃん! モミジちゃん!


 そんなことを考えながら必死にイベントを探していると。


『ぷっ……。くくっ。あははっ! 桐生くん、そんなに必死にならなくてもいいから! 冗談だよ、冗談。そんなに怒ってないから』


 画面に映るのは神名の笑顔。


『私がそんなに怒るわけないでしょ?』


「いや、さっきのはさすがに無神経だった。悪い」


『いいのいいの。桐生くんゾーンなんて、ちょっと重いかな~とか、嫌われちゃうかな~とか、そっちの心配してて見せるのも悩んだんだけど……』


 ああ、まあ。確かに重いな。

 なんてこのタイミングで言えるはずもない。


『せっかくだから見て欲しいなって。これも私の自己満足だから』


 言いながら、穏やかな瞳になる。視線の先にあるのは、桐生ゾーンか。


『せっかくなら桐生くんが慌ててる顔を見たかったってとこだね。いまからでも見せてくれる?』


「それは断る。神名は……。今の方が幼く見えるぞ」


『今の方?』


 神名はそこで気付いたのか。


『ち、違うの! これは……。最悪っ! すっぴんなの忘れてた……』


 すぐにカメラが切り替わり、桐生ゾーンが映し出される。


『見た、よね?』


「ばっちり映ってたぞ。怒ってるところから、笑ってるところまで。学校で見る神名よりかなり大人しそう見えるな」


『ワーワー! 言わないで! 言わないでいいから』


「いや化粧する必要ないぐらい整ってると思うけど」


『そんなわけないでしょ! ああもう最悪! なんでよりによって桐生くんに見られちゃうの! こんな予定じゃなかったのに!』


 その後も神名はひとりで色々騒いでおり。

 あまりにも長いので、俺は声が収まるまでネットサーフィンを楽しんだ。

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