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クラスで人気者の明るい彼女は屋上ではオタクを楽しむ -クラスの盛り上げ役が、俺の隣でだけ素になる話-  作者: すなぎも


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第13話 バレた救援依頼

「ごめんね。また桐生くんに助けられちゃったね」


「盗み聞きしちゃった俺も悪い。今日も屋上に」


 言いながら、ちょっとした違和感に気が付く。


 神名なら今日も俺が屋上にいることを知っていたはずだ。恐らく、告白されることも察していた。それなのになんで場所を変えるよう提案しなかった? こういう場って、知り合いに見られたくないもんだよな?


 ……まさか。


「神名お前、初めから俺にどうにかしてもらう作戦だったのか?」


「ぎ、ぎくぅっ!?」


「なんだその可愛くないリアクションは」


「し、失礼な! いまのは素のリアクションだよ!」


「だとしたらやっぱり教室にいる方のが可愛いかもな」


「くぅ~、この返し……。でも、それがいい!」


 よくねええわ。なに言ってんだこいつ。


 神名は誤魔化すように笑いながら口を開く。


「岡田くん、いい噂聞かないんだよね。だから顔と名前も知ってたわけだし」


「それで知ってただけかよ」


「そうだよ? 他のクラスの男子なんて知ってるわけないじゃん。全く興味ないし」


 おぉ、これが素の神名の切れ味。

 俺も他のクラスの奴なんて覚えてないけどもよ。


「マミが教えてくれてたの。岡田が狙ってるかもって。だから、何かあった時の事も考えて、桐生くんなら助けてくれるかなって」


 神名はちらりとこちらを上目遣いで見る。


「かっこよかったよ、桐生くん」


「いまさら褒められても嬉しくねえよ。ただの都合のいい奴じゃねえか」


「ごめんなさい、反省してます……」


「初めから花柳を頼ればよかっただろ? あいつ、強そうだし」


「マミも力になってくれるけど、こうして愚痴れないでしょ? 恨み買わないように自分を下げて、なんとかお断りして……。凄いストレスたまるんだから」


「俺になら愚痴れるってか?」


「私の本性も本当の趣味も、知ってるの桐生くんだけだからね。それに、なんだかんだ付き合ってくれそうなんだもん。頼りになるし、喋りやすいし」


「頼られて喜んでいいのかわからねえな」


「私としては喜んでくれて、こんな私を受け止めてくれると嬉しいんだけど……」


 まあ、頼られて悪い気はしない。

 って言ったらまた調子に乗るんだろうな、神名は。


「まあいいけど、今回みたいなのはなしだ。何かあるなら予め相談してくれ」


「相談してもいいの?」


「乗るかどうかは別だけどな」


 神名はぱっと表情を明るくして、こちらに身を寄せる。


「それでもぜんぜん嬉しいよ! これまでひとりで考えるしかなかったから、悩みを吐き出せるだけでも凄い楽になるし。それに……」


 神名はちらりとこちらを見て、しかし何も言わない。


 どこか嬉しそうに笑っている。


「なんだかんだ手伝ってくれるって思ってるな? その顔は」


「ぎ、ぎくぅっ!?」


 出たその可愛くないリアクション。

 マジで素なのかよ、それ。


「と、とにかく。今回の件は本当にごめんなさい。次からちゃんと相談します。こうして愚痴に付き合ってもらってるのも凄い感謝しております。今後ともよろしくお願いいたします」


「そうしてくれ。ただ、俺もそろそろ神名になにか頼っとかないとバランスが悪いな」


 言いながら立がる。


「なになに? なんでも頼って。桐生くんのお願いならなんでも聞くよ?」


「いまなんでもいって言ったか?」


「うん、言ったよ」


 神名は座ったまま、こちらを見上げる。


「桐生くんのお願いだったら、なんでも聞いてあげる。なんでもね」


 真っ直ぐな瞳。


 そこにあるのは信頼か、あるいは純粋な気持ちか。


「……検討しとくよ」


「頼りっぱなしは私としても嫌だからね」


「頼もしいよ、神名にお願いできるってのは」


 座ってる神名に先に行けと目線を飛ばす。


 神名は暫くこちらを見上げた後、手を差し出して来た。


「なんだよ」


「立たせて欲しいなって」


「どうした急に」


「まだ岡田くんに襲われた恐怖が残ってて……」


 そんなのはもうないだろ、と言いたいところだが。俺は神名の手を取り、思い切り引っ張り上げる。勢いそのままぶつかりそうになる彼女の身体を寸前で抑えて支える。


「んー……。凄い力、立派な男の子だ」


「俺をなんだと思ってんだよ。いいからさっさと行け」


「もしもの時は、この腕っぷしにも守ってもらえるかなって」


「男子の平均ぐらいだ。守れるほど強くはねえよ。ってか荒事は勘弁してくれ」


 長話し過ぎたせいで日が落ちて来た。

 寒くなる前にさっさと帰りたいところだ。


 神名は扉の前で振り返る。


「今日はありがとね。また屋上で」


「ああ。またな。機会があったら」


「機会なんていくらでもあるし、なくても会いに行くからね」


 そう言って、神名は屋上を後にする。薄く残った甘い匂いは、風に吹かれて散っていく。背伸びをした後、俺も屋上を後にした。

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