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異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


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8.目的地

俺とレイラは道なりに歩いているが、まだ町は見えてこない。

もう少し先まで飛んで行っても良かったのではないかという気もしてきたが敵に見つかる危険性を考えたらそうも言っていられないのだろう。


「あなたにも名前はあるの?」

さっきまでは俺が色々と聞いていたから、今度はレイラが俺に質問する番か。

「ある」

「何?」

「あまり話したくない」

「なんでよ」

「いい思い出がない」

せっかく異世界に来たのだから、元の世界の事は思い出したくない。


「向こうで何か嫌なことがあったの?」

「ああ、色々とな」

「そう」

レイラも俺の心中を察したのかそれ以上聞こうとはしなかった。

「せっかく別の世界に来たなら、別の名前が欲しい」


「どんな名前が良いのよ」

「どうせならお前が名前をつけてくれ」

新しい世界に来たのなら、過去の自分とは決別したい。

「何か希望はある?」

「どうせならこの島の住人っぽい名前にしてくれ」


「じゃあ、ケインはどう?」

「それでいい、今日から俺の名前はケインだ」

「いい名前でしょ」

「そうだな。ところで町へ行ってどうする?」


「泊まる場所を探すのよ。野宿は嫌だし」

いつまで逃げる事になるか分からないが、とりあえず泊まる場所は必要だろう。

「自分の家に帰るのは?」

だったら家に帰った方が手っ取り早い気がする。


「あたしの家なんて、西の魔女が待ち伏せしてる危険があるから帰れないわよ」

たしかに本気でレイラを探すなら家ぐらい押さえるか。

「町なら安全なのか?」

だからといって町が安全という保障はあるのだろうか。


「帝国兵がどこまで入り込んでるかによるわね」

それはさっき言っていた話か。

「町の様子は分からないのか?」

「分からないわよ」

「東の魔女の弟子なら、東の魔女の住処の近くがどうなってるかぐらい把握してそうだが」


「魔女にはそれぞれ領土が決まっているのよ。だからこれから行く町の事は把握していないのよ」

今一話がかみ合わないが、俺は一つの可能性に行き当たる。

「ここは東の魔女の領土じゃないのか?」

「ここはもう西の魔女の領地よ」

結構な距離を飛んでいたとは思ったが、東の魔女の領土を出ていたのか。

「なんでわざわざ敵地に」


「逃げるのに精いっぱいだったんだから仕方ないでしょ」

師匠がやられるところを見て気が動転していたのか。

まあ、逃げる方向を選べるような状況ではなかったか。

「東の魔女の領地に戻るのは?」

「空を飛べば簡単かもしれないけど見つかる危険性が高いわよ」

西の魔女がレイラを探し始めるのは時間の問題だろう。

「今はそれが最善か」


「そうよ」

だが別の問題もある。

「無事に町に着いたとして、西の魔女の領土なら帝国兵がいる可能性はどれぐらいだ?」

西の魔女が帝国と手を組んでいるというのであれば、町の中にも帝国兵を入れている可能性が高い。

「かなり高いわね」

「そんな場所に行って、本当に大丈夫なんだろうな」

仮に帝国兵に制圧されていたら、宿を取るどころか、町に入るのも難しい気がするが。


「ええ」

何か考えがあるのだろうか。

「知り合いでもいるのか?」

「まあね」

それならば今はレイラを信じる事にしよう。


 ●


レイラと地上に降りて歩き始めてから結構時間が経つ。

「まだかかるのか?」

「夜までには着きたいけど、どうかしら」

これならばもう少し飛んで行っても良かったような気がするが、今更言っても仕方がない。

代わり映えのしない風景に飽きてきたころ、ふと思いついた。


「一度自分の姿を見てみたいんだが」

杖の先端が目になっているようで、そこから周りを見渡すことができるが、引いた状態で自分の全体像というのを一度見ておきたい。

「鏡を見たいって事?」

魔法が発達した世界でも鏡はあるようだ。

もしかして身だしなみを整えるために持ち歩いているのだろうか。


「あるのか?」

あるならぜひ見たい。

「今は持って無いわよ」

残念ながら持ち歩いてはいないようだ。


「この近くに川か池は?」

だったら代わりに水面を見るという手がある。

今はまだ日が出ている。水面をみれば自分の姿が見れるはずだ。

「ここから町に行くなら途中で川を越えるわよ」

知っているという事はこの辺の土地勘はあるのだろう。東の魔女の弟子なのに西の魔女の領土に詳しい様だ。


「ならその時に水面の近くに行ってもらえるか?」

「まあそのぐらいなら」

「あとどれぐらいだ?」

「すぐ着くわよ」

とりあえず俺は川に着くまで大人しく待つ事にした。

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