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異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


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7.魔女同士の確執

「東の魔女と西の魔女は殺しあうぐらい憎みあっていたのか?」

「そうではないと思っていたんだけど、実際に襲われちゃったからね」

その言葉には悲しみが込められていた。生死を確認できていないとはいえ、東の魔女が死んだかもしれないという状況では無理も無いだろう。


「なんで西の魔女は、東の魔女を襲うぐらい、魔法が嫌いになったんだ?」

先ほど色々あったと言っていたが、その詳細を知りたい。

「正確には魔法というより、魔女に関する規則かしら」

いわれてもピンとこない。どうやら杖の知識としては蓄えられていない様だ。ならば聞くしかない。


「魔女には何かやらなければいけない事があるのか?」

「魔法の研究よ」

「じゃあ、西の魔女は研究するのが嫌になったのか?」

「というよりも、競争するのが嫌になったって噂は聞いたわね」


「何故研究を競争する事になるんだ?」

「一定の期間で四人の魔女は自分の魔法の研究成果を持ち寄って成果を競うのよ」

学校で言う定期テストみたいなものだろうか。いや、小学校の夏休みで会った自由研究の方が近いかもしれない。

「その競争の結果が不満なのか?」

「西の魔女は最下位になる事が多かったからそれで悩んでいたみたいね」

夏休みの自由研究で順位付けされたら、自由研究は嫌になるかもしれない。


「ああ、そういう事か」

順位付けをしてしまえば、誰かが最下位になる。いつも自分が最下位になっていたらそれに悩むのは仕方のないことかもしれない。

「それに疲れたみたい」

「魔女である以上、その競争に参加しないという事はできないのか?」

「出来ないわよ。研究しないというなら、他の者に魔女の座を譲らないといけないわ」

逆に言えば自ら魔女を辞めるという手はあるのか。


「なら魔女を辞めればよかったんじゃないのか?」

島全体を敵に回して反乱を起こすよりも、魔女を辞めたほうがいいような気がする。

「一応、引退する方法はあるけど難しいんじゃないかしら」

だがレイラの口ぶりからはそうはいかない事情があるようだ。


「どんな方法だ?」

「まず、引退するには跡継ぎとなる弟子を育てないといけない」

「単純に辞めるって訳いはいかないのか」

「そうよ」

辞める前には後任を育てる必要があるのか。


「なら弟子を育てればいい」

「でも、西の魔女は弟子を取らなかった」

「いや、それは西の魔本人の責任じゃないのか?」

後任を育てる気がないというなら、本人が続けるしかないだろう。

「そうね。西の魔女はある時から、弟子を全て破門して、新しい弟子も全く取らなくなった」


「じゃあ、今の西の魔女は引退したくてもできないのか?」

「そうよ」

「弟子を取らなくなったのには何か理由があるのか?」

「本人が弟子の志願者に対して、弟子になるレベルに達している者がいないって言っていたわね」


「弟子が一人もいないっていうのは西の魔女だけなのか?」

「そうよ。普通は最低一人は弟子を取るわ。一人もいないなんて言うのは弟子が事故で亡くなったりしない限りありえない状況なのよ」

「跡継ぎなしで強引に引退できないのか?」

「そんなことしたら、この島で生きていけないわよ」


「何故だ?」

「いい、一般的にこの島の島民は魔法に対して好意的だし、魔女に対しても好意的なのよ」

「みたいだな」

それは先ほども聞いた話だ。

「そんな中、魔女が自分の責務を果たさずに引退したら周りがどう思うかしら」


「他の島民から反感を買うって事か」

この島民全てを敵に回すという点では、反乱を起こすのと変わらないだろう。

「そうよ。後継者を育てずに魔女の座を放棄した者としてずっとこの島で後ろ指をさされて生きていくことになるのよ」

「過去にそういった事はあったのか?」

「私の知る限り無いわ。そもそも魔女が魔法を嫌うなんて言うのも今回が初だろうし」


「仮に西の魔女が強引に引退したら、島民から殺されたりするのか?」

「殺されたりはしないでしょうけど、死ぬまでその汚名を背負うことになる」

「つまり、体裁を気にしているってだけで、その気になれば辞められるんだろう?」

島民から白い目で見られるだけなら、反乱を起こして戦うよりもマシなような気がするが。

反乱を起こす覚悟があるのであれば、引退を強行するという手もあったような気がするが、それをしなかったのはプライドのせいだろうか。

「まあ、そういう言い方もできるけど」


それでもレイラは魔女が後任を育てずに引退するのは現実的ではないと考えているようだ。

逃げ場のない島社会において、大きな汚名を背負うというのは、俺が思っている以上に耐えがたい事なのかもしれない。

「つまり、西の魔女は魔女を続けるのも嫌だし、魔女も辞めるのも嫌。だから反乱を起こした?」

「端的に言えばそうなるわね」

「そんなのただの我儘だろう」

自分の思い通りにならないから、責任も投げ出して反乱を起こすなど大人のする事ではない。

「だから、島民であの人の味方をする人はいないわよ


「四人の魔女は競争してるんだろ?」

「そうよ」

「だったら、この機会に西の魔女を倒そうとするんじゃないのか・」

「あのね、魔女同士で競争するっていっても、目的は新しい魔法の研究なの。普通は直接戦ったりはしないのよ」

そういえば、先ほども研究がどうとか言っていた。


「新しい魔法を作ってどうするんだ?」

「魔法を発展させるのよ。この島を守るために」

「誰から?」

「帝国のような外敵からね」

言い方からして、島の外から何度も侵略戦争を仕掛けられているのだろう。

先ほどレイラが言った話によれば、帝国は魔法を恐れてこの島を侵略しようとしているようだが、その結果この島は魔法による防御を固めるというのは皮肉な話だ。


「戦う道具として魔法を使ってるって事か」

「そういう事」

「魔法を作ったからと言って、すぐに何かがもらえたりするわけじゃないのか」

「そうね。あえて言うなら、名誉とか周りからの評判とかが報酬かしらね」

俺の世界に有ったノーベル賞的なものがある訳ではなく、魔法を作った事によりこの島が守られるという状況と、魔法を作ったという実績が報酬になるのだろう。


「なるほど」

「だから魔女は魔女の人数が減ることを良しとしないのよ。それに、魔女が死んだところで後任の者が現れるだけで、魔女が四人いる体制は変わったりしないわ」

仲間同士戦って数を減らしたところで、島の外の敵を喜ばせるだけか。

「逆に言えば、西の魔女が襲ってくるっていうのは相当の理由があったんじゃないのか?」

魔法を嫌っていたというが、何か根本的な理由があったのではないだろうか。

「西の魔女は、日ごろからこの島の在り方に不満を漏らしていたわ」


「さっきの最下位になった事が原因か?」

「ええ、その結果魔女同士で魔法の技術を争う事を疎んでいた」

「まあ、そうなるだろうな」

「でも、他の三人の魔女は今のやり方が良いと思っていたのよ」


「つまり、西の魔女は一人だけ、島全体の考え方とは違う考え方をしていたって事か」

「そうよ。それがより孤立を深めた」

考え方の違いによる対立か。

「三人対一人の構図になったのか」

「ええ」

しかも西の魔女は弟子が居ない。孤立した仲一人で色居rと考えてしまったのだろう。


「意見の対立から、結果的に反乱を起こしたって言うのか?」

「多分ね」

「歩み寄ることはできなかったのか?」

会話による解決ができればここまでの事態にはならなかったのかもしれない。

「西の魔女は四人の魔女の中では一番劣っていたのよ」


「まあ、最下位になるという事はそういう事だろうな」

「だから他の三人はただの妬みだと思ってまともに取り合わなかった」

確かに一番劣っている者がこれ以上争いたくないと言っても、自分が負けるのが嫌だという本音が透けて見えて、信憑性はない。

しかも魔法を競うのは島を守るためという大義もある。

一人の我儘で魔女の研究を競わせるという体制を止める事はできないだろう。

「それで反乱がおきたって?」

「そういう事」

結果、一人の不満が爆発したのか。


「他の二人の魔女はどうしてるんだ?」

襲って来た西の魔女、倒された東の魔女を除外したとしても、北の魔女と南の魔女がいるはずだ。

「南の魔女はもう捕まったらしいわよ」

そういえば、そんな事をさっき言っていた。

「なら北の魔女は?」

「多分無事だけと、普段は互いに干渉はしないから詳細は分からないわ」

南の魔女が捕まったという話は聞いているが、北の魔女については何も聞いていない。だから無事だろうという楽観的な予想か。

なら一応考えられうる最悪の可能性を確認しておこう。


「少なくとも、北の魔女が西の魔女と手を組むような事は無いんだな?」

敵は西の魔女一人だけだろうか。

「それはあり得ないわね」

北の魔女は体制側の考え方であり、反乱に加担する事は無いというのが分かれば十分だ。

「捕まった南の魔女は?」

「反乱に加担するとは思えないわよ」


「捕まったのなら、何をされるかは分からないだろう」

「拷問でも受けてるっていうの?」

「あるいは、人質を取ったり、やり方は色々あるだろう」

あまり考えたくはないが、西の魔女と帝国がどこまでやるのかは分からない。反抗的な相手を従わせる方法はいくらでもある。

「それでも、魔女として反乱に加担するような人じゃないわよ」


「ならいいが」

俺は本人を知らないから何とも言えない。

「西の魔女は孤立してたみたいだし」

当人同士が仲が良かったという訳でもないのか。

まあこれまで聞いた話では、魔女同士は干渉しないということだし、個人的に仲がいいといという事でもないなら、南の魔女が西の魔女の味方をするというのは考えなくてもいいのだろう。


「まさか魔女同士話した事もないのか?」

「それぐらいはあるはずよ。定期的に会合みたいのがあって研究成果を見せてるし」

「なら一応顔見知りではあるのか」

そういえば、西の魔女が東の魔女と遭遇した時も、互いを認識していた。少なくとも互いの顔ぐらいは認識しているのだろう。

「定期的に会うからこそ、会う度に劣等感が募っていったんでしょうね」

気の毒かもしれないが、それならば魔女を辞退すればよかった。

自分の面子のためにそれすらしないとうのは自業自得な気がしてならない。


「その定例会の場で、西の魔女は何かおかしな様子は無かったのか?」

「私は弟子だから直接会合に参加することは無かったから分からないわ。でも噂は聞いてた」

「どんな?」

「西の魔女が帝国と手を組んでこの島を制圧しようと目論んでるいう噂」


「結局それは本当だったって事か」

帝国兵が現れた事により、その噂は真実であることが証明されてしまった。

「ええ、西の魔女は一番劣ってるから、みんなその噂を本気にしなかったし、仮にそうなっても大した事にはならいだろうって他の三人の魔女が甘く見ていたところはあるわね」

西の魔女が劣っていたからこそ、見くびられており、噂を真に受ける者もいなければ、本当になったとしてもどうにかなると思っていたのだろう。


「お前にとっても意外だったのか?」

「ええ、ここまでやる事を予想してた人はいないんじゃないかしら」

「なら、お前も西の魔女が他の魔女に比べたら劣っていると思っていたのか?」

「そうね。魔女だから私より魔法の腕は上だと思うけど、四人の魔女の中では最下位っていう評判は聞いてたから、私もそう思っていたわ」


「だが、このままだといずれ戦うかもしれないぞ」

「そうね、そもそも師匠が、西の魔女に負けるなんて…」

どうやらまだ東の魔女が負けたショックから立ち直れていない様だ。

「あれは事実だ。受け入れるしかない」

俺もあの様子は見ていた。見間違いではない。

「でも、あの様子普通じゃなかった」

あの霧に包まれた後、東の魔女は急に高度を下げていた。

霧から出たあとに持ち直したが、そこを狙い撃ちされてしまった。


「ああ、あの霧か」

「ただの霧じゃないわよね」

どうやらレイラもあれがただの目くらましのために霧を撒いたとは思っていないらしい。

「恐らく魔法を封じる効果がある」

そう考えれば、東の魔女が急に高度を下げたのにも納得がいく。

「まさかそんな、帝国の道具でしょ」


「だからだろ。帝国は魔法を使わない」

「でもそんなもの帝国が作れるわけないわ」

魔法を使わない帝国が、魔法を封じる道具を作れるというのが、レイラは信じられないらしい。

「だから西の魔女と手を組んだ」

しかし、それは西の魔女の協力があるならば可能だろう。

「西の魔女の協力で、帝国は魔法に関する技術を手に入れたって言うの?」


「ああそうだ。西の魔女も魔法が憎かったから、魔法を封じる道具を作って帝国に持たせる事にした。そういう事だろう」

「そんな」

「そう考えたら辻褄が合うだろ」

実際に西の魔女は帝国兵と共に行動しているし、間違いないだろう。

「だったらどうやって戦えばいいのよ」


「魔法抜きで戦う事はできないのか?」

「それは無理よ。今までずっと魔法で戦ってたんだから」

いきなり言われても難しいか。

だがいずれ西の魔女と戦うなら、あの霧の攻略方法を考えないといけない。

「東の魔女は、霧から出たら、体制を立て直していたように見えた」

「そうだけど、それが何なのよ」


「効果があるのは霧の中だけだ。霧に触れなければ何とかなる」

「まあ、そうかもしれないけど」

「使われる前に倒すとかな」

レイラが随分と不安そうにしているので、俺は少しでも力になるように思いついた対策を口にする。

「そんなにうまく行くかしら」


「とにかく今はそう言うのを持っているというのが分かっただけでも良しとしたほうがいい」

東の魔女も霧の存在を知っていたら、あれに当たるような事は無かったかもしれない。

「そうね、でもこういう時にもっとマーテルが頼りになればいいのに」

「マーテル?」

俺の知らない単語が出てきた。

「知らないの?」


「ああ、知らないな。人の名前か?」

「違うわよ。魔法の知識じゃないから杖の知識には入っていないのかしら」

「魔法とは関係ないのか?」

「あの木が見えるでしょう」

レイラが遠くに見える大きな木を指さした。


「ああ、あれがどうかしたのか?」

かなり距離があるというのにはっきりとその姿が見える。近づいてみたらさぞや大きいのだろう。

「あれがユグドラシル」

「つまり木の名前がユグドラシルって事か」

「そうよ」


「ならマーテルっていうのは?」

「あの気に宿る精霊よ」

「精霊が宿っているのか」

あれだけ大きければ霊的な何かが宿っていてもおかしくはない。

「そう、そのマーテルが四人の魔女を取りまとめているのよ」


「ならマーテルが西の魔女を倒しに行くんじゃないのか?」

「そういう事はやらないのよ。あくまでも取り纏め役。実力行使をする事は無いのよ」

精霊ならさぞや強いのかと思ったが、直接戦ってくれる事は無いらしい。

「なら西の魔女をどうにかするなら、自分でやらないといけないって事か」

「そういう事よ」

やはり俺達はいずれ西の魔女と戦うのは避けられないようだ。

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