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異世界召喚で杖になった俺は、魔女の弟子と共に魔女の仇を取る  作者: 月ノ裏常夜


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2.東の魔女とレイラ

「せ、成功だ」

声が聞こえた。また、女の声だ。先ほど聞こえてきた声とは、別人の声のようだ。


「成功?」

状況が理解できない俺は、声の主にそのまま同じ言葉を聞き返していた。


「し、喋った」

また別の声が聞こえた。

ぼやけていた視界が徐々にはっきりとしてくる。

そう、俺の目の前には二人の女性が居た。


「言っただろう。意志を宿すことは可能だと」

最初に言葉を発したほうの女性が誇らしげに喋っている。

「た、確かに」


それに対して二人目の方の少女は若干驚いたような表情をしている。

この二人が誰なのかを聞こうとして、何か体に違和感がある事に気が付いた。

体が金縛りにあったように動かない。

いや待て。先ほどは普通に俺自身が言葉を発したはずだ。それなのに体が動かないとはどういう事か。

まるで口がなくなってしまったとでも言うのだろうか。

そこまで考えて慌てて周りを見渡すが、残念ながら鏡のような物は見当たらなかった。


「これで私の研究が正しいことが証明された」

そんな俺の動揺を他所に、二人の女性は会話を進める。

「流石師匠です」

この二人は師弟関係なのか。

研究と言ったが、一体何の研究をしているのやら。

そういえば、最初の声の主も研究がどうとか言っていた。


「お前たちは誰だ?」

聞きたい事は色々がるがまずはこの二人が誰であるのかを確認するのが先決だろう。とりあえず俺は二人の正体を尋ねる。

「私は東の魔女、こっちは弟子のレイラだ」

最初に喋った方の女が自己紹介と、ついでにもう一人の方の紹介もしてくれた。だがその言葉は自己紹介には相応しくない。


「東の魔女?」

まさかそれが名前だとでも言うのだろうか。

「お、魔女を知らないのかい?」

奇妙な反応だった。

その声には驚きというよりも喜びの感情が込められているように聞こえたからだ。

つまり、俺が魔女を知らないことを喜んでいるように聞こえる。


「魔女という言葉は知っているが、あんたが魔女だとでも?」

魔女を知らないと言われれば嘘になるが、あくまで言葉として知っているだけだ。普通の人間は私は魔女ですなどと言われてそのまま信じたりはしないだろう。

「ああそうだ」

だがこの女は自分が魔女だと言って譲らない。冗談を言っているような様子もない。まさか本当に魔女なのだろうか。


「魔女だから、魔法が使えるとでもいうつもりか?」

おれは若干皮肉を込めて言ったつもりだったが、自称魔女は予想外の反応を返してきた。

「魔女なのだから当然だろう」

だがこの自称魔女は、俺の言葉が皮肉だと思わなかったようだ。まるで物分かりの悪い子供に言い聞かせるような口調だ。


「お前が魔女で、魔法が使える?」

だからと言って俺にはこの女が魔女であるという事がすぐには信じられない。

自称魔女の態度に俺は状況が呑み込めず、俺はさらに聞き返してしまう。

「そう言ったつもりだ」

俺が魔女を信じないのがよほど意外だったのか、この女の声からは戸惑いの色が感じられる。これ以上は話していても埒が明かない。


「だったら魔法を見せてみろ」

ならば実際に魔法を使えるかどうか実演してもらえばいい。

「じゃあこういうのはどうだい」

東の魔女は人差し指を立てると、その指先に火の玉が顕現した。


「まさか本当に」

それを見た俺は驚きを隠せなかった。

ライターやマッチどころか、一切の道具を使わずに火を起こす。それは俺の常識の中では魔法と言ってもいい現象だった。

「これで私が魔法を使えると信じてもらえたかな?」

もういいと思ったのか東の魔女の指先から火の玉が消失した。


「ああ、信じるしかなさそうだ」

この人物は魔法が使える事を当たり前と思っているらしい。

まさか別の世界に来たとでも言うのだろうか。

「そもそも私を知らないのか?」

どういう意味だろうか。この女性は有名人であり、知らないほ方がおかしいとでもいうつもりだろうか。


「初対面だと思うが」

俺からすれば見た事のない顔だ。

「やはり島の外の者か?」

島。さっき俺に話しかけてきた声だけの存在も島がどうとか言っていた。

魔女の言い方を察するにここはどこかの島なのだろう。

そもそもこの島がどこなのかが分からない。


「この島の名前は?」

名前を聞けば何かが分かるかもしれないと思い、島の名前を尋ねる。

「我々はオーワンランドと呼んでいるが、島の外の者は禁断の島と呼んでいるらしい」

何だその名前は。


「どちらの単語も聞き覚えが無いな」

少なくとも俺の住んでいた場所の近くにはそんな島は無い。

「では、予定通り別の世界から召喚できたようだな」

予想はしていたが、魔女の口から召喚という単語が出てきた。


「ここは別の世界なのか?」

確かにオーワンランドという国も名前も聞いたことは無い。

そういえばさっき聞いた声が魔法がどうとか言っていたが、本当に魔法のある世界に来てしまったのか。

「この島の名前を聞いた事がないというなら、そうなるだろうね」

やはりそうなのか。そう思いながら今後の事を考えようとして手を頭に当てようとしてふと気が付く。

体が動かないのではなく、手の感覚がない。

だが視界は動かせる。

視界をゆっくりと下げるとそこに映ったのは人間の体ではなかった。


「体が杖になっている?」

予想外の現実を見てしまった事で思わず声が出た。そもそもこれは現実なのだろうか。

「ああそうだ、君を杖に植え付けたのは私だ」

師匠と呼ばれた女が俺の言葉を肯定した。


「お前がやったのか?」

魔法を使うような相手だ。信じるしかないのだろうが、すぐには信じられない。

「何から話そうかな。ところで君、生前の記憶はあるのかい?」

「生前?」

物騒な単語が飛び出してきた。

「一応死者の魂を呼び出してその杖に宿らせたつもりだったんだが、もしかして生きたままの魂を召喚してしまったかな?」


「つまり俺は…」

やっぱり死んでいるのか。

「もしかして死んだ事に気が付いてなかったタイプかい?」

まるで何度かこれを試しているような口ぶりだ。


「確かに俺は車に轢かれて…」

救急車に乗ったあたりで意識は途絶えた。あの後死んだという事だろう。

「くるま?」

女は俺が口にした単語が何か分からないらしい。

「車を知らない?」

魔法を使えるという事は車は不要そうだが、この世界に車は存在しないのか。

「聞いたことのない単語だ」

やはり車を知らない様だ。


「それって帝国が使ってるアレでは?」

レイラが横から口を開いた。

「ああ、あの物を運んだりするのに使う乗り物か」

どうやら車を知ってはいるようだが馴染のある物では無いらしい。そして、自称魔女の口ぶりからは嫌悪感が滲み出ている。おそらく帝国か車のどちらかに嫌な思い出でもあるのだろう。


「その乗り物に轢かれて死んだんだ」

「つまり君がいた世界には、帝国のように車を日常的に使っていた訳かい?」

「ああ」

嘘を付いても仕方がない。ここは正直に答える事にした。

「念のために聞いておくけど、君は帝国の人間ではないよね?」


「帝国とはどの国の事だ?」

俺には東の魔女が何を言っているのか分からない。

というか、俺が帝国の人間だとマズイのだろうか

「魔法どころか、帝国を知らないのか」


「ああ、知らないな」

それは本当の事だ。

そして薄々俺が思っていた事があったが、東の魔女は同じ結論に至ったらしい。

「ならやはり島の外ではなく、全くの別世界の魂の召喚に成功したと考えるのが妥当だろう」

やはり俺は別の世界に来てしまったのだろうか。


「何故俺を召喚したんだ」

とりあえず、まずは俺が置かれた状況を把握したい。この魔女が俺を召喚したというならその理由を知りたい。

「よく聞いてくれたね。誰でも良かったわけじゃない」

どうやらこの魔女は説明をするのが好きらしい。俺の質問を聞いて嬉しそうにしている。


「俺を選んだ理由があるのか?」

「ああ、召喚条件があった」

魔女の言葉を遮るように、大きな音とともに部屋全体が揺れた。

魔法のある世界だ。こういう音がするのも日常なのだろうか。


「何の音だ?」

そんな呑気な考えが一瞬頭をよぎったが、魔女のリアクションを見るにどうやら違うらしい。

「まさか、西の魔女?」

レイラは犯人に心当たりがあったのか、犯人と推定される者の名前を挙げた。


「誰だそれは?」

当然俺はその名前に心当たりはない。

とはいえ目の前に東の魔女がいるのだから、その仲間か何かだろうか。

「彼女は今この島に対して反乱を起こしている」

まだ状況がよく分かっていないが、反乱という単語と、先ほどの爆発音を考えれば結論は一つだ。


「敵って事か?」

「ああ」

残念ながら同じ魔女であっても仲間ではなかったようだ。

「どうするんだ?」

「逃げる」

東の魔女は迷うことなく俺の質問に答えた。


「そんな、戦いましょう」

だがレイラがそれに口を挟む。彼女は戦った方が良いと考えているようだ。

「ダメだ」

それでも東の魔女は考えを変える様子は無い。

「何故です?」

「南の魔女は、西の魔女に捕まった」

三人目の魔女の名前が出てきた。

「デタラメでは? 西の魔女にそんな実力は無いはずです」

どうやらレイラは西の魔女の実力は低いと考えているようだ。つまりは戦えば勝てると思っている。だからこそ逃げずに戦おうと進言したのだろう。


「昔の彼女ならな。だが今の彼女は帝国と手を組んでいる」

どうやら東の魔女も、西の魔女の実力は低いと考えているようだが、それよりも彼女が手を組んだ相手を危険と判断しているようだ。

「だから南の魔女を捕らえる事に成功したと?」

「ああ、彼女は帝国と手を組んだ結果、南の魔女を捕らえる手段を手に入れたのだろう」

「戦えば我々も捕まるという事ですか?」


「ああそうだ。下手に戦わないほうが良い」

南の魔女の実力がどれほどなのか、俺には分からないが、とにかく今俺たちは西の魔女と戦わないほうが良いらしい。

「分かりました」

どうやらレイラも逃げる事で納得したようだ。


「それと、この杖は君が持っていなさい」

そう言って、西の魔女は俺をレイラに手渡す。

「そんな、それは師匠の研究成果です。師匠が持っていた方が」


「万一西の魔女と遭遇したら、恐らく私を狙うだろう」

俺はここがどこかよくわからないが、おそらくは東の魔女の自宅か研究所であり、西の魔女はここに東の魔女がいると知って襲って来た。

そうなると当然狙いは東の魔女になるのだろう。

「まさか、魔女同士が戦うなんて」

どうやらレイラはそれが信じられないらしい。


「ここを襲撃したという事は私が狙いだ。それしかありえない」

「だったら猶更この杖は師匠が持っていた方が良いです」

「ダメだ。この杖は研究成果だ。後世に残す必要がある。私よりも君が持っていた方が安全だ」

先ほどの話を聞いて察するに、今の西の魔女と戦っても勝機は低いのだろう。

「それって、師匠が囮になるって事ですか?」

そんな相手が迫ってきている中で、レイラに杖を託すというのはどういうことか。考えられる理由は一つだけだ。


「そうだ。杖が奪取される事は防がないといけない」

つまり東の魔女にとっては、自分の命よりも

自分の研究が優先されるという事だ。

「でも、それだと師匠は」

そこまで言って、レイラは言葉を濁す。どうやら最悪の展開は予想しているようだが、口にはしたくないらしい。


「万一私に何かあったら君が研究を引き継げばいい」

この二人は師弟関係だ。師匠の研究を弟子を引き継ぐというのはよくある話だが、魔女にも適応されるようだ。

「でもそれは…」

レイラは何かを言いたそうだがそれを口にできない。自分の師匠が死ぬことなど想像したくないという事だろう。


「そのための弟子だろう」

対照的に、東の魔女の方は既に覚悟は決まっているようだ。

「分かりました」

そう言ってレイラは改めて俺の事を見る。何か思うところがあるのだろう。


「まあ、ここを逃げ切ればそんな心配は無くなるが」

レイラの不安げな表情を見て、東の魔女が声を和らげる。東の魔女も、最悪の事態には備えるが、易々と死ぬ気は無いらしい。

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