王都、共同生活 3
「それにしても広い」
与えられた屋敷は、今日から住めるように整えられ、料理人やメイドまでついていた。
「……慣れない」
使用人の数は少ないが、彼らは皆丁寧に頭を下げてくる。
陛下からエンデローグの家名を賜ったものの、バルトは貴族然とした生活はしてこなかった。
戦場で何があるかわからないのに、高価なものを買ったり王都に豪邸を建てるなど無意味だと思っていたのだ。
「「わー!! お城に住めるの?!」」
以前、国王の妹が着ていたのだというドレスを着たまま、ルビーとルドラが屋敷内に突進した。
お城ではない。だが、城のように広い。
エントランスホールを一周して、二人は戻ってきた。
「ルビーがお姫様なら隊長殿が王子様?」
「ルドラの王子様になってもいいですよ〜」
「んっ? がらじゃねぇな……」
頷いたが最後、二人のおままごとに永遠に付き合わされる。バルトの予感はあながち間違ってはいないだろう。
「ざーんねんっ」
「ざんねんですねぇ」
二人は向かい合って、クフフと笑った。
「旦那様、お食事とお風呂どちらになさいますか」
「……」
バルトが半眼になった。
メイドたちの中に一人だけ見知った人物が紛れ込んでいる。
メイドのお仕着せを着ているが、特徴的なのは魔導具仕掛けの右腕と、右目を覆う眼帯だ。
「ミレナ第五部隊長。なぜこちらに?」
「利き腕と片目を失い、今は元、ですね。ちなみに王命です」
「……そんなはずなかろう」
「良いではないですか。私なら子どもたちに、指導できますよ」
「それは」
「それだけではありません。魔導具の義手ではありますが、日常や子どもたちのお世話は問題ございませんわ。女の子もいるのに……はっ、ケダモノ!?」
「ふざけるなっ!」
バルトは、がっくりと頭垂れた。
ミレナは鬼教官として、新人の指導を担ってきた。
こんな冗談を言うキャラではなかったはずだが……。
――戦場以外の彼女をバルトは知らない。
「……いや、助かるな。子どもと関わったことがない」
「私はたくさん姉妹がおりました。……今はもう誰もいませんが」
「……そうか」
バルトが彼女を慮るような視線を向けた。
彼女の唇が軽く歪む。
「私以外、皆所帯を持って実家から出てしまいました」
「はあ……そういえば、そうだったな」
「さあ、まずはお風呂ですよ〜。お風呂は二つありますから、ルビー様とルドラ様は一緒に来て下さいね。ルードニック様とウォルフ様はお風呂嫌いな旦那様を連れていって差し上げてくださいね」
「嫌いではない」
しかし、子どもたちの視線はバルトを疑ってかかっている。
「隊長殿、戦場には確かにお風呂がありませんが」
「隊長殿、俺たちと入りましょう?」
「入れば……良いんだろう」
バルトはため息をついて、ルードニックとウォルフに続いた。




