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不死身の生還者〜生き残り騎士は魔石の子らとの帰還を誓う〜  作者: 氷雨そら


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8/12

王都、共同生活 2


 かくして、メリーナを除く子どもたちはバルトとともに王城に招喚された。

 国王は、彼らを呼び出すと開口一番こう言った。


「堅苦しい挨拶は良い。望むものを何なりと申せ」


 国王はいつも浮かぶ表情の読めない笑顔を消して、厳しい表情を浮かべている。

 だが、バルトは知っている。国王は大の子ども好きなのである。

 なぜ知っているか……それは……。


「ルビーお姫さまになりたいです!!」

「る……ルドラも!!」


 バルトの思考は、双子の元気な返答で中断された。

 お姫さまとは……しかし、目の前にいるのは国王だ。

 全く叶えられない願いでもない。


「ふむ、それもいい」

「「わーい!!」」


 国王の考えと、ルビーとルドラの考えはおそらくずれている。

 バルトは、やっぱり国の安寧が第一な国王を睨め付けた。


「まあ、睨むなバルトよ。そなたも願いを言ってみよ」

「……陛下、いつもと同じで結構です」

「欲のないことだ。では、そなたの分は全てそうするとしよう。さて、ウォルフとルードニックは何を望む?」

「お菓子をたくさんください!」

「……壁の外の民に援助を」


 二人が答えると、国王はニヤリと笑った。


「王城中の菓子をかき集めるとしよう。まあ……望むほどあるかはわからぬが。それから、壁の外の民の援助を今回は倍とせねばな」


 ルードニックだけは意味がわかったのだろう。

 バルトに驚きの視線を向けた。


「隊長殿は……今までずっと?」

「当たり前のことをしたまでだ。それに、もっと多額の援助をしている者もいる」


 バルトは武功を上げるたびに、報奨を壁の外の人々のために使うよう申し出た。

 生活であれば、バルト分の魔獣の素材をオルセイが売ったわけ前で十分すぎる。


 明日死ぬかもしれない自分には不要な金だと思いながら、誰より生き延びているが……。

 ちなみに、最も多額の援助をしているのかが誰なのか、バルトは知らない。

 だが、案外近くにいるのかもしれない。


「さて、ではまずルビーとルドラに褒賞の一部を与えるとしよう」


 国王が軽く手を挙げると、心得たように王城の侍女たちが現れた。

 彼女たちはルビーとルドラににこやかに声をかけて連れ去った。


「さて、これから先のことであるが」

「……子どもたちには、やはり戦場はまだ早いと存じます」


 バルトは思っていることを正直に口にした。


「だが、今戦わねば、子どもらは大人になることができぬだろう」

「――それは」

「戦います」


 低い声はルードニックのものだ。

 バルトは気がついていた。

 ルードニックが、今回仕留めた魔獣はたった一匹。それでも、生き物を屠った。

 ルードニックにとって覚悟の一撃であった。


「――俺も戦います」

「ウォルフ」

「斥候は殺されてしまいました。身軽な者が必要です」


 確かに身軽で器用で戦うこともできる短剣使いのウォルフは、斥候に向いていることだろう。

 だが、彼はまだ十一歳だ。


「どちらにせよ貴殿が生きている間は、彼らの育成を頼むほかあるまい」

「……」


 バルトは不服そうな表情を浮かべたが……事実、彼らが扱う魔導具に触れ、使い方を指導できるものはバルト以外にいない。


 他の魔石所持者ですら、魔石が嵌め込まれた他者の魔導具に触れることはできない。

 ある時から、バルトだけがどの魔導具でも扱えるようになった。

 そう、バルトの魔導具の魔石が砕け散った、九年前から。


「ということで、屋敷を用意した」

「は?」

「今の住処では全員住むには手狭であろう?」

「そ、そそそそれは?」


 バルトは嫌な予感に声を振るわせた。

 だが、確かに子どもらは騎士団の寮で住むには幼すぎるし……それぞれワケありだ。


「エンデローグ卿。子どもらと一緒に暮らすことを命じる!」

「……俺は!」

「「わーーーーい!! 隊長殿と一緒〜!!」」


 フリルたっぷり、リボンいっぱいのドレスに身を包んだルビーとルドラが走り込んできた。

 髪色に合わせてか、ルビーのドレスは赤、ルドラのドレスは淡いグリーンだ。

 二人とも本当のお姫様のようだ。


 今の会話が聞こえていたのだろう。二人はバルトに抱きついて、わーいわーいと歓声を上げている。


 ルードニックとウォルフもバルトに縋るような視線を向けている。

 バルトはお人よしなのである。子どもと関わったことがほとんどないが、面倒見が良い男だ。


 ――彼にこの状況で断るという選択肢はない。どちらせよ、この国で王命は絶対であるという事実は別にしても。


「陛下のご意向のままに」


 彼はガックリと肩を落とし、国王の命令を受け入れ、子どもたちは両手を挙げて喜んだ。

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