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僕が見ることの出来ない平和な世界

 僕は19歳のライ=アルデント。

 100年に一度竜に捧げる生け贄に選ばれてしまった可哀想なイケメンだよ。

 生け贄に選ばれた可哀想な人とはいっても、

 昨日くらいまでは公爵家の次男坊だったんだけどね、

 悪役貴族として国中に名を馳せていた僕は竜に捧げる生け贄に選ばれて、

 気が付いたら屈強な兵隊さん達に取り囲まれていてね、

 無理やり生け贄の祭壇へと連れてこられたってわけ。


 唯一の取り柄は顔だけ、

 公爵家の地位を理由に好き勝手する僕に味方はいなかった。


 生け贄の日の前日、僕の家族は妙に優しかった。

 今思えば、いくら出来損ないのバカ息子とはいえ、家族が死ぬことに対して抵抗があったのだろう。

 普段は別々の食事も昨日は家族全員揃って食べた。

 最期くらい家族全員で食事をしよう・・・か。

 さすが僕の家族、とっても優しい。

 あぁ、大好きだな。


 ズキズキと痛む心臓を抑えながら、星が美しい夜空を見上げる。

 今までの無理がここに来て僕を襲う。

 不治の病だ。もう、長くはないだろう。

 ここまで隠し通せて良かった。

 どうせ先が長くない僕が生け贄に選ばれるようにと傍若無人に振る舞っていたけど、少し・・・無理をしすぎたかな。

 さっきから、心臓の痛みが酷くなっている。

 

 悪役貴族。

 

 いや、頭では分かっているんだ。

 でも、大好きな人たちからそれを言われるのは少々辛かったな。でも・・・


 ノブレス・オブリージュ


 僕の大好きな言葉だ。

 恵まれた地位には責任が伴う。

 それと同じだ。

 分不相応な願い事にはそれ相応の代償が伴う。


 ・・・僕の願い事はもうすぐ叶えられる。だから、大好きな人たちから悪く言われるのは辛かったけど、やって良かった!!!今ではそう思える。


 僕には願いが2つある。

 その内一つは、もう叶っている。


 美しい世界に生まれること、僕には分不相応な願い事だったのだろう。

 美しい世界に生まれる代わりに、僕には不治の病が与えられた。


 もう一つの願いは平和な世界。


 僕は、この世界が大好きだ。

 この世界に住んでいる、すべてのものが大好きだ。

 家族、幼馴染、元婚約者、世話係、剣の師、魔法の師、あげだしたらキリがないけど、僕はこの世界の人たちが大好きだ。

 でも、僕はこの世界の人たちの心からの笑顔を見たことがない。

 理由は分かっている。


 生け贄だ。


 自分が生け贄に選ばれるかもしれない。

 自分の大切な人が生け贄に選ばれるかもしれない。

 皆、不安がっていた。

 だから僕は悪役貴族になった。

 どうせ先は長くないんだ。生け贄になって死んだほうがこの世界の為だ。

 悪役貴族なら死んでも誰からも悲しまれることはない。


 さて、そろそろお別れの時間だ。

 竜がこちらに向かってくる気配がする。


 抵抗はしない、覚悟はできてる。

 でも、やっぱり願っちゃうんだ。


 叶わぬ願いだとは分かっていても・・・願わずにはいられない。

 皆が心からの笑顔を浮かべる平和な世界。

 僕が見ることの出来ない平和な世界。


 「ああ、見てみたいな」





 ------------

 〈あとがき〉

 この度は本作を読んでくださり有難うございます。

 面白いと思ってくれた方は感想を書いてくださると恐縮です。

 

 

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