九話 ヲタクとギャルとゴブリン
「相良さんあんな事言って大丈夫なんですか? 自分たち初クエストですよ」
「余裕っしょ!だって、イッチーはAランクのワイバーン倒したんだよ。Fランクのゴブリンなんて余裕っしょ!」
ゴブリン討伐のために町を出た自分と相良さん。
王都とは反対方向です。
「なんかね、ゴブリンの討伐は討伐した証しに耳を切り取らないといけないんだって。キショいよね」
ギルド職員から渡された、麻袋と小刀を自分が持っています。
キョショいと良いながらも、楽しそうな相良さんと町から出て一時間ほど進みました。
「なんかね、この変にゴブリンの巣があるんだって」
「グールルすか?」
かなり便利な機能です。
ゴブリンの巣を探していると、一匹のゴブリンと遭遇しました。
「うわっ! 出た! ゴブリン」
小学生ぐらいの大きさのゴブリン。
手にこん棒を持っています。
「ギャウッ」
こちらに向かってきました。
「イッチー、ゴブリン来たよ。やっちゃって」
「やっちゃってってなんですか? 相良さんが戦うんじゃないんですか?」
「ウチ? 無理無理。だって祝福【ギャル】だよ。戦えんて」
「自分だって【ヲタク】ですよ。戦えませんて」
「かめはめ波撃てるじゃん! ヤバい。ゴブリン来たってっ!イッチー早く!」
ワイバーンを倒した時と同じように、腹の奥が熱くなるのを感じ、心臓を通り両腕に熱が伝わる。
「気功砲ー!」
ゴブリンに直撃し、ゴブリンのいた辺りの地面がえぐれる。
「イッチー。やっぱすげ~じゃん♪」
現実世界では、パッとしなかった自分ですが、
異世界では、もしかしたら自分凄いのかもしれません。
「相良さん、自分もう限界っす」
「はっ、何言ってるの? ゴブリン五体討伐しなきゃならないんだよ」
そうでした。
五体倒して、倒した証しにゴブリンの耳を持って帰らなければいけないのでした。
「つか、ゴブリン丸焦げで耳切れなくない?」
「マジっすか?」
「マジっす」
「……まあ、しゃーない。次から加減しよう。よし、次、次」
「相良さん、自分もう限界っす」
「はっ?」
「自分、気功砲一発が限界っす」
気功砲を一発撃てば、身体全身が酷い筋肉痛みたいになって動けなくなります。
「手加減しなよ。全力で撃たずに、何発に分ければいいじゃん」
「簡単に言いますけど、めっちゃ難しいす」
練習すれば、加減することができるのでしょうか?
「イッチー、あれ」
今の衝撃のせいか、
ゴブリンの巣からゴブリンたちが出てきました。
「もしかして、今結構ヤバい感じ?」
「そうですね。自分もう限界っす」
「でも、ゴブリンたちも今のにビビって襲ってこないんじゃね?」
「そうだといいのですが……」
願いも届かず、ゴブリンたちは自分たちの方に向かってきました。
「「……逃げろ~!!」」