四話 ギャルの婆ちゃん
「イッチー、凄いじゃん!」
目の前には、真っ黒焦げのワイバーン。
かめはめ波のポーズで固まっていました自分ですが、相良さんの声で我にもどりました。
痛い。全身が超痛い。
「ちょっ、イッチー大丈夫?」
「大丈夫じゃないっす……」
地面に倒れた自分。
身体全体が痛く、全部の筋肉が悲鳴を上げているかと思えるぐらい痛いです。
倒れた自分に駆け寄ってくれて、起こしてくれました。
そして、辺りをキョロキョロ見渡す相良さん。
「イッチー、とりあえずここを離れよう」
「どうしてですか?」
「だって、ここまだ王都と目と鼻の先じゃん! アイツらが来ちゃう」
アイツらとは、王様関係者でしょうか。
「来たら不味いんですか? むしろ、自分等も仲間に加えてくれるんじゃないですか?」
無能と追放されたが、これで祝福があると証明出来たのではないか?
「駄目。だってアイツら敵じゃん」
「敵なんですか?確かに追放されたのは酷いと思いますが、敵ではないのでは?」
自分は何故相良さんが、王様関係者を敵と言い切ってるのかわかりません。
「敵だよ。だってウチの婆ちゃんが言ってたもん。
異世界に召還されたら、召還したやつをまず疑えって」
相良さんのお婆さんがですか?
「どうして、相良さんのお婆さんがそんな事知ってるんですか?」
「だってウチの婆ちゃん元勇者」
「はい?」
「元・勇・者」
「何言ってるんですか?」
つい笑ってしまう。
「てめぇ、何笑ってるんだよ」
冗談では無かったようです。
相良さん。わかりましたから、ヘッドロックは辞めて下さい。
身体がバラバラになりそうです。
「ウチさ、両親居なくて婆ちゃんに育てられたんだよね。で、よく婆ちゃんは元勇者だったって話、してくれたんだよね」
「そうなんですね」
「それでね、作り話ってわかってるのに妙にリアルでその話、大好きだったんだよね」
楽しそうに話す相良さん。
お婆さんの事が大好きだったことがわかる。
自分も一応、相良さんのお婆さんを信じてみようと思います。
「じゃ、イッチー行くよ」
「はい」
身体はボロボロだが、なんとか歩き出します。
それから数時間歩くと、丸太で出来た古いログハウスを見つけました。
「イッチー、日が暮れてきたし、今日はここに泊まろう」
「そうですね」
なぜ、こんなところにログハウスがあるのかわかりませんが、誰も住んで無さそうなので、一晩ここをお借りしようと思います。
拝啓、お父さんお母さん。
こうして自分の異世界初日が終わりました。