三話 ヲタクとギャルとワイバーン
「で、で、でた! ドラゴン!!!」
体長……とりあえずデカイ生物です。
「イッチー! これドラゴンじゃない。ワイバーン!」
「相良さん、なんで知ってるですか? ってグールルですか!」
「そうだよ」
「てか、自分を盾にしないで下さいよ」
自分を盾にする相良さん。
僕の異世界転移は初日で終了なようです。
「イッチー! なんとかしてよ」
「なんとかってなんですか!?」
「なんとかだよ!」
「とりあえず……」
「逃げる(ましょー)ぞ」
全力で逃げる自分と相良さん。
ワイバーンからすれば、自分たちなんて蟻みたいなものでしょう。
もしかしたら追って来ないかも……
めっちゃ追って来ました。
ワイバーンは空を飛ぶ生物。
走るのは苦手。それでも二本の後ろ足で走れる。
時々、前っぷしに転ける。
「ってグールルが言ってる」
「知ってますよ。今、目の前で起きてるんですから! てか、この辺りはモンスター居ないんじゃないですかー!?」
木々を倒しながら、全力で僕達を追って来ている。
「はぁはぁ、ねぇ、魔法とか無いの?」
「はぁはぁ、無いですって。あれば追放なんてされませんって」
「はぁはぁ、祝福だっけ?あれイッチー本当に無かったの?ウチ【ギャル】って出たんだけど、おじいちゃん達なにも出てないって言われたんだよね」
「相良さんもですか!? 自分は【ヲタク】って表記されてました」
「ヲタクっ! ぷぷっ ウケるんですけど」
「こんな時にウケないで下さい」
どうやら自分だけでは無く、相良さんも祝福を貰っていたようです。
でも、どうして他の人に見えなかったのしょうか?
「イッチー、良いこと考えついた」
「なんですか!?」
「イッチーを囮にして、その間にウチが逃げるってどう?」
「却下です」
必死で逃げていると、森を抜け、平原に出ました。
「やった。これで走りやすくなる」
「でも、ワイバーンもですよ」
「知ってる。というより、もう体力の限界」
「自分もです」
人生で一番全力で走ったかもしれません。
火事場の力っやつでしょうか?
「痛っ」
「相良さん!」
塗装が全くされてない道。つまずき転んだ相良さん。
このままではワイバーンに襲われてしまいます。
自分も男です。
女子を置いて逃げれません。
ワイバーンと戦おうとしたときに、おなかの奥に何か熱いものを感じました。
その熱いものが、腹から心臓へ、そして手の方に移動し、どう使うか自然とわかりました。
鳥山明先生ありがとうございます。
「気功砲ー!」
自分の手から出た衝撃波がワイバーンに直撃しました。
そして丸焦げになったワイバーン。
「イッチー。スゲーじゃん!」
なんと自分がワイバーンを倒してしまいました。