二話 ヲタクとギャル
王都から二時間ぐらい歩いたと思います。
「ねぇねえ、この花の色ヤバくない?
ウケるんですけど」
自分と一緒に追放された、クラスメイトの相良さん。明るくクラスでも人気者の彼女です。
「ねぇってば。聞いてる」
「あっ、はい。聞いてます」
「なら、返事ぐらいしろよぉ~」
同じクラスの方ですが、これまで一度も話したことがありません。
はっきり言って僕には苦手なタイプです。
「ねぇ、これからどうすんの?」
「とりあえず、となりの町まで行こうと思ってます」
ふーんと、言う彼女。
どうやら僕に追いてくるみたいです、
「てか、なんでそんなに変な歩き方してんの?」
「だってここは異世界ですよ。いきなりモンスターや盗賊が襲ってくるかもしれないじゃないですか!」
「そんなもん、いねーよ」
「なんで言い切れるんですか!?」
「だって、王都からまだそんなに離れてないじゃん。そんなんいたら、騎士団や冒険者が討伐してるって」
確かにそうです。
全身に力が入ってたせいで、体が痛い。
「というか、相良さん。凄いですね。普通そんな事思い付かないですよ。異世界モノのアニメとか好きなんですか?」
「異世界モノのアニメ?
そんなもんみたことないよ。これに聞いたんだよ。こ・れ・に」
彼女は僕に向けてスマートフォンを見せてきました。
「はい?」
「はい? じゃねーよ。グールルだよ。グールル」
「なんだ、検索アプリか……ってスマホ使えるんですか!?」
「当たり前じゃん!」
「いえ、僕の電源すら入らないんですけど……」
「マジ!? ウチのスマホすげ~! ウケる!」
なんでだ?
自分も一応両親に連絡をいれようとしましたが、電源が入らない状態になっていました。
「でも、電話とか出来ないんだよね~」
元の世界の家族に連絡出来ればと思いましたが、
そう甘くはなかったようです。
「てかさ、名前なんだっけ?
ウチ名前覚えるの苦手でさ~」
「あっ、一条です」
「ふ~ん。ならイッチーだね」
「イッチー……ですか?」
女子の方にあだ名で呼ばれるのは初めてです。
「な~に、照れてんだよ」
「照れてませんよ」
「なら、顔見せろよ~。うわっ!?なに」
急に突風が吹きました。
砂ぼこりが舞い、それを腕でガードし、突風が収まり顔を上げると、そこには巨大な生物が。
「でででた……!!ドラゴン!!」