十一話 勇者と小さなドワーフ
「相良さん、これはどうですか?」
自分たちは今、薬草採取をしています。
ゴブリンの討伐失敗してから、一週間が経ちました。
あれから、薬草採取や露店で野菜売りのバイトでお金を稼いできました。
食費を稼ぐだけで精一杯で、毎日教会で寝泊まりしています。
「ん~。それはただの雑草」
スマホで撮影すると、名前と効力などが表記されるみたいです。
本当に相良さんのスマホはどうなっているのでしょうか?
「そんなことよりさ~、イッチーは特訓しなよ」
全力一発撃つとガス欠になってしまうので、力をセーブする方法を探します。
大きな岩に向かって衝撃波を放ちます。
……出ません。
もう少し強く……出ません
「相良さん、出ません! 全力じゃないと撃てません」
「は? マジで?」
「マジっす」
この一週間、力をセーブする練習をしてきましたが、いまだに一度もうまく出来ません。
ふたりで頭を抱えていると、聞き覚えのある声が聞こえてきました。
同じクラスの人達。つまり勇者たちです。
「どうします? 相良さん」
「とりあえず、隠れよう」
川島くん、青山くん、酒田くんの三人の姿が見えました。
だれかを追いかけてるようです。
「待て!ドワーフ」
「青山!おまえは右から追え」
三人の前方には、小さな女の子が走っていました。
「ヤバい。追い付かれる」
「相良さん、どうしましょう?」
川島くん達三人のほうが速く、今にも捕まりそうです。
「それにしても、どうしておいかけてるのでしょうか?」
「知らん、それでも小さい子どもに、男三人がかりなんてクソだぜ」
そう言って相良さんは飛び出して行ってしまいました。
自分もあとを追います。
「おい! 待て! クソども」
「だれがクソだ!」
「おい! コイツら無能のふたりじゃねーか?」
「誰が無能じゃ! ぶち殺すぞクソボケナス!」
川島くん達三人が立ち止まります。
「おい!無能ども。こんなところで何やってるんだよ」
「こっちのセリフじゃ! なんでこんなところで小さな女の子追いかけ回してんだよ。ロリコンやろうどもが」
「誰がロリコンだ」
「おまえ達だよ。女の子の尻追いかけ回してる時間あるなら、特訓して魔王さっさと倒せや。バーカ」
確かにせっかく貰った祝福です。
魔王を倒すために使って欲しいです。
そうしたら、もしかしたら自分たちも元の世界に戻れるかもしれません。
「だから、ドワーフ奴隷にして良い武器作らせんだよ。わかったか無能ども」
「奴隷!? うわ! 引くわ~」
「確かに引きますね」




