一話 自分、異世界へ召還されました。
拝啓、お父さん、お母さん。
現在、自分の目の前には、地球には恐らく存在しないだろうと思われるファンタジーな森が広がっています。
見たことの無い植物でいっぱいです。
何故こんな所に居るかと簡単に説明しますと、
どうやら自分は、ミネゴルド王国の王様とやらに、勇者として召喚されたみたいです。
しかも学校のクラスごと。
召喚されたクラスメイトの反応は様々でしたが、王様の側近の方に説明を受けて、渋々魔王を倒す様です。
元の世界に帰るにはその方法しか無いと言われたからです。
自分もその一人でした。
しかし、その後が問題でした。
この異世界に召還されるときに『祝福』と呼ばれるものを、この世界の神様から与えられました。
一人ひとり違う祝福を与えられたようです。
どのような祝福を与えられた確認する作業をしました。
かなり汚れた木板。その枠ぶちには見たことのない紋章がびっしりと刻まれてました。その木板を渡され、みんな血を一滴垂らしました。
暫くすると周りから、
「何か板に【戦闘狂】って浮かんで来たんだけど!」
と聞こえてきた。
「おお! バトルマスターですか! 流石勇者様、バトルマスターは戦闘のプロフェッショナルの祝福ですよ」
「俺は【聖騎士】」
「私は【賢者】」
王様達の反応具合からすると、どれもかなりレアらしいです。
自分の木板にも何か文字が浮かんで来ました。
【€$ヲタク€$】
……なんですかこれ?
他のクラスメイトは、格好いい祝福をもらっているのに自分はヲタクです。
これはちょっと恥ずかしいです……
そう思っていると、王様の側近の方が自分に話しかけてきました。
「貴方は如何でしたか?」
恥ずかしく、周りに聞かれたく無かったので、そっと木板を側近に見せました。
「文字が浮かんでませんね、もう少し待ちましょう」
そう言うと、他のクラスメイトの所に行きました。
文字が浮かんで無い?
しっかり書いているのですが?
老眼で見落としてしまったのでしょうか??
あれから小一時間が経ち、文字が浮かばなかったのは、自分ともう一人。
そんな自分達を見て、かなり困った様子の王様とその側近。
ひそひそと話をし、ため息を吐き、自分に話かけてきました。
「残念ながら、そなたは祝福が貰えなかったようじゃ」
それからの事は、よく覚えていません。
少しの支度金を渡され、追い出されました。
追放というやつです。
祝福が無い勇者は只の一般人との事。
そして、クラスメイトの皆様。
誰か一人ぐらいは助けてくれても良いと思います。
確かにボッチだったが酷くないですか?
取り敢えず、王都には居たくない。
というか居れない。
自分達を召喚するのに、かなりの税金を徴収したそうだ。
それが役立たずなら、自分に敵意が向いてもおかしくないからです。
取り敢えず、一番近い町を目指す事にしました。
そんなこんなで、現在ファンタジーな森の中という訳です。