第9話 初登校
「うわ! ホントにこれ立花くん?! いや、立花さんか!」
「メッチャ女の子じゃん! メッッチャ美少女じゃんっ!! マジか?! スゲーーッ!!」
「こ、これ本物? ホンモノの質量感??!! ふわわぁぁ!!」
「みみミみミ、ミコトーーーーっっっ!!」
一週間ぶりの登校は、とてもとても勇気の必要なものだった。
とても必要な物だった筈なんだけど……。
ミコトに引き摺られる様にして連れられて、教室に放り込まれたボクを待っていたのは、女子達による身体検査(?)だった!
「うっわ! 睫毛、長っ! なにこのカール! スんゴ!!」
少しヤンキー入ってる鈴谷 皐さんが、茶髪のサイドテールを揺らしながらボクの目元を覗き込み、驚いた様に声を上げた。
か、顔がメッチャ近い!!
「肌がツヤツヤだな。何だよこのしっとり感? それでいて筋肉にも張りがある……」
ボーイッシュで体育会系な霞 杏夏さんは、感心した様にボクのほっぺたとか、露出してる肌を撫で回してくる
あ、脚とか……う、内腿とかは勘弁してぇぇ!
「キュ! キューティクル! キューティクルがっっ!! サラッサラ!! うきぃーーっっ! ぶはぁ! なに? このイイ匂い?!!」
ダウナー系でクールなイメージだった多岐川 伊織さんは、ボクの髪に顔をツッコんで何故か奇声を発している。
髪だったら、多岐川さんの黒髪ストレートの方が綺麗だと思うけど?!
「ぅひゃぁぁあ! ふかふかぁ……! う、埋まる! 埋まるよぉ~~! ミコっちミコっちッ!! くれ、コレ! くれっ!! くれぇ!!」
そして、ゆるふわ系の嶋岡 綾乃さんはボクに抱き着いて、両手でボクの胸をパッフンパフンしている始末!
以前から抱き癖がある人だとは知っていたけど……。コ、コレはちょっと!
「ヨーーシ! おまいらそこまでだ! とっととミナトから離れろ!!」
「はひゃん!」
女子集団に翻弄されていたボクを、ミコトが強引に引き剥がした。
その時、嶋岡さんに掴まれていたボクのソレは、その勢いで大きく跳ねた。
おかげで思わず口から変な声が出てしまったのだ。
「アンタらミナトの事、オモチャか何かと勘違いしてんじゃないの?!!」
ミコトが『シャーッ!』とばかりに威嚇しながら、ボクをその身体の後ろに隠してしまう。
嶋岡さんは「あ! ヤバイ?」って顔して一歩下がった。
「あー、美古都。アタシ達が悪い、燥ぎすぎた。だから落ち着け!」
「み、ミコト! 大丈夫だから! ボクもう大丈夫だから!」
霞さんが、戦闘モードにでも入ってしまったミコトを宥めようと、「ドウドウ」と声をかけている。
ボクも、ミコトにもう大丈夫だとアピールした。
キレた時のミコトはホントにコワいからね……。
まあ、変な声を披露してしまった事は大丈夫では無いんだけど、とりあえず大丈夫と言っておく!
霞さんは、ミコトを落ち着かせようと深呼吸をさせていた。
ここは彼女に任せて、ボクは少し離れた方がイイかな。
こういう時のミコトの扱いは、この人が一番上手いんだよね。
「な、なあ、ホントにキミ……いや! お前、立花 湊……なのか?!」
「え? う、うん……立花……湊、だよ?」
女子達から距離を取ったボクに、男子の一人が恐る恐る声をかけて来た。
ボクの悪友の佐伯 康太だ。
コータはボクの事を、頭のてっぺんから爪先まで目を見開いて眺め、ある一点で更に目を見開いて視線を留めた。
何処を見入ってるんだ?! 何処をっっ?!!
ボクは咄嗟に手をクロスして、胸元を隠した。
「ど、ドコをガン見してんだよっ?!!」
「あっっ!! ゴ、ゴメン!!」
気持ちは分からないでも無いけどさ……。
でも、ちょっとあからさま過ぎるだろ!
「ミナト……結構縮んだか?」
「う、うん……少し」
そう言って来たのはコータと同じく悪友の1人、柳 陽介だ。
彼は身体が大きく寡黙で言動も落ち着いているので、同い年なんだけど皆からは『ヤナギさん』と、さん付けで呼ばれている。
「あ、でもそうでもないのか?」
「だから! ドコ見て言ってンの?!」
ヤナギさんは身長が180を超えている。今のボクとは20センチ以上も差がある事になる。
その大きな体で上から見下ろされると、結構な圧を感じるんだけど……。その目線がボクの頭の天辺から、スッとその下に落とされるのをシッカリ感じたのだ!
身長は縮んだけど、胸が飛び出たって言いたいんでしょ?!
全く! どいつもこいつも!
「……おい、ホントに立花なのか?」
「近くで見せてくれよ……うわ、ホントに睫毛が長ぇ」
「うぉお! スゲェイイ匂いがぁ……」
ボクがコータやヤナギさんと話してるのを見て、他の男共も集まって来た。
ぅおっ! ち、近い!
あれ? 何だこの匂い? 男臭い?
うわ、なんか男の匂いが気になる?! なんかヤダぞ!
「ミナトぉぉ! 親友だろぉ?! 一回で良いから揉ませてくれよぉぉ!!」
「ぅわぁぁ。うるさい離れろバカ! お前なんか知らない人だ!!」
更に這いずる様にして、ボクに近付いてくる奴がいた。スマホに『巨乳の看護師さんいたか?!』と聞いて来たボクのもう1人の悪友、安藤 健だ。
アンドは、巨乳好きを公言して憚らない筋金入りの変態だ!
その変態が、ボクの足首を掴んで、血走った目でボクを見上げながら世迷言を吐いている。
ぅぎゃ! スカートの中覗く気かコイツ?!
スカート押さえながら、足から振り払おうとするけど離れない!
マジでキモイよコイツ!!
「ナニ言ってんだよ! 親友だろ? 親友だよな?! 頼むからさぁ、頼むよ! 見るだけで良いから! 見るだけ! ちょこっとだけちょこっと!! なっ?! なぁ? なぁあ?!」
「バッカじゃないのお前?!! 五月蠅い! 黙れ変態! 近付くな! 触るな!!」
「ミナトぉぉ、少し! 少しだけだからぁ、ホラ! チョットだけ! チョッと!!」
「ぎゃああぁぁ! さ、触るなっつったろぉ!! 向こう行け変態ぃぃ!!」
「ぅぎゃぁぁ――――ッッ!!!!」
ゾンビみたいな雰囲気で、両手をワキワキさせながら伸ばして来るのが、メッチャキモかったので思いっきり蹴り上げてやった。
蹴られたゾンビアンドは、ゴロゴロと転がって壁に激突して白目をむいた。
「おお、安藤が蹴り飛ばされた」
「結構転がるな」
「蹴られた時、中見えてね?」
「……オレも蹴られてぇ」
うわぁぁ、変態ばっかだよこのクラス!
少し復活したアンドが、まだ「チョッとだけでイイからぁ」と手を伸ばして言って来る。
「なにアイツ? 引くわぁ」」
「安藤……普通にキモいんだけど」
「性犯罪者だな。2年女子のグループに流しとくわ」
霞さんが凄い目でアンドを見ていた。
多岐川さんが冷たく言い放つと、鈴谷さんがL〇NEのグループに何かを書き込んだ。
この日からアンドは、2年女子達から空気として扱われる日々が続く事になったのだ。
同情はしないよね! 自業自得だものね!!
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