第6話 好奇心は落ち着きと共に
4日目の朝には二階から下りて、一階にあるダイニングで朝食をとることが出来た。
ボクが家の中なら歩き回る事が出来ると確認した母さんは、そのまま仕事場へ行く支度をし始めた。
今日は土曜日なんだから、そのまま休んでいても良いと思うんだけど……。
週末を先に消化させて貰った様な物だから、プラマイゼロなのよ。
と言って母さんは笑ってた。
「今日も、昼過ぎに美古都ちゃんが来てくれるから、それまでは1人で無理しないのよ?」
ユウジと三人で朝食をすませた後、そう言って母さんは仕事場へ出かけて行った。
そのユウジも、近所の道場での朝練があるので8時前には家を出た。
この道場にユウジは5歳の頃から通っている。
西条道場と言うこの道場は、古武術を通じて健全な体作りを行っているとかで、近所では幼い頃から通っている子はそれなりにいるらしい。
ミコトも実はココの門下生だ。なんでも檜榎家とは遠縁らしく、小さい頃からお世話になっているのだとか。
さて、ユウジも昼前には戻るから、ボクがお昼ご飯を用意してあげないとね!
でも、久しぶりに1人きりでの留守番だ。
病気になってからは、いつも母さんがいるか、ミコトがいるかユウジがいるかで、大抵は誰かが目を離さずに見ていてくれてた。
4日目にしてやっと、目を離しても良いと思える程、回復して来たって事なのかな?
もう、家の中なら動き回れるしね!
でも急に動き回り過ぎてヘタリ込んだりしたら、余計な心配かけちゃうだろうし、適度に横になろうとは思っている。
そんな事を考えながら、階段を上って自分の部屋へ行こうとして通りかかった洗面台に、フッと映った自分の姿が目に入った。
思わず足を止め、洗面台の前まで移動して鏡に映る自分を改めて見てみた。
この鏡を見るのが、なんか凄い久しぶりな気がしてしまう。
思えば女の子になって今日で4日目だ、4日目の朝を迎えたのだ。
ナンかずっとバタバタしていたし、こうやって1人で鏡の前に立つなんて無かったモンな。
なので改めて鏡の中の自分を、シッカリ見ようと思った次第なのだ。
確かに少し変わったのかな? 気持ち顎周りが細くなった?
あれ? ホントに睫毛が伸びてる……。唇も……少し厚みが出て……柔らかい?
首も細くなったかな? あ、肩幅もか……、元々肩幅は無かったけど、もっと細くて撫肩になってるのか……。
ミコトに『美少女』って言われたけど、確かにこれは……『美少女』かもしんない。
……うん、ダメだ。自分で言うとかなり恥ずかしい。
そんで……胸。やっぱり、でかい。
メッチャたわわに育ってる。
Tシャツの上から手を当てて押し上げると、なんとも柔らかい感触が手を包み込んで来た。
「……やわらか、でかぁ」
こうして鏡で見ながら改めて触ってみると、驚きの大きさ柔らかさだ。
シャツの中に手を入れて直接触ると、その触り心地の良さに、やはり改めてため息が出た。
ちょっとシャツの中に手を入れて触ってる事にもどかしさを感じて、シャツを捲り上げる。
捲り上げたシャツは胸の上で止まり、大きな二つのお山が丸々と顔を出した。
「うっ……わ、……や、凄くないか? コレ……?」
今、女の子になったとは言っても、つい5日前まで身体はいたって健康な男子だったワケで……。
こんな凶悪なボリュームを持つ代物が、目の前で晒されてしまっては、心情穏やかで居られるワケも無く…………。
「うわ……タプンタプンいって……、ぁ、な、なんだ? ……す、すご……おおきぃ……」
そういえば自分のモノになった胸を、こうやってジックリ見るのは初めてだ。
そしてやっぱりコレは随分な代物で……。
この触り心地……。ミコトが毎日揉んで来るのも、ワカルかなぁ……。
そんな事を考えながら、鏡を見ながら自分の胸をワシワシしていると、その好奇心なるモノが頭を持ち上げて来た。
これはヤバイと思ったボクは、鏡の中で少し上気した自分の顔を横目に、急いで自室へ戻ったのだ。
部屋に入ると直ぐ、胸の上に引っ掛けていたシャツを脱ぎ捨てた。
改めて胸元がブルンと揺れたのが分る。
そして、ずっと後回しにしていた重要事項を確かめる為、履いていたモノを取り除くことにした。
それは、今までずっと使っていたボクのトランクスだ。
流石に女性ものなんて持っていないから、男物のトランクスをずっと履いていたのだ。
それを今スパっと脱ぎ捨てた。
そしてそのまま直ぐ首を下に向けて、重要部分の確認をしようと覗き込んだけれど……全然見えない。
大っきなお山が、視界を遮ってるのだ。
お山をかき分ける様に、左右に広げて、辛うじて足の付け根が見えようとしていた。
なんか、意識して無かったんだけど、良く見ようと息を吐いて下腹をへこませてるんですけど、意味あるのか?
ちょっとおマヌケな格好になってる気がする?
「うーーん、こんな事しないと見えないなんて……。確かにミコトより随分大っきいもんなぁ……。ミコトのはもっと小さいし……」
やっと見えたのはチョボチョボっとした……おか? っていうの? 良く分んないな……。
本陣は全然見えん! やっぱそうだよねー、外に出てる訳じゃ無いモンねー。男じゃないモンねー。
なので急いで、机の上に置いてある卓上鏡を持って来た。
普段は前髪を気にする程度にしか使って無かったけど、まさかこんな大変な確認に使う事になろうとは……。
……なんだか、すっごい事してないか? ボク?!
そもそも、数日前までボクは健全な男子だったワケで、年相応に女性の身体にもそれなりに興味はあったワケだ。
だからそれなりに好奇心を納得させる資料的なモノは、当然持っていて……。
ネットを漁れば、天然素材の画像なんかはそれなりに手に入るワケで。当然そーいったモノもそれなりに見ていたワケで。
でも今ここにあるのは画像じゃなくて、本物のワケで……。
この寝込んでいた三日間は、殆どこんな事は考えられなかったけど、身体が動く様になった途端この好奇心が止まらなくなった。
最早、自分の行動を止められない……。
「ぅわ……、凄……」
ナニが凄いのかはココでは言えない。
「わ……、わ、りあるくぱぁ……?」
手が勝手に動いていた。
声も勝手に出まくっていて、とにかく凄かった。
何が凄いかとか、やはり言えないがとにかく凄いのだ。
何回目かの凄いのが来た時、部屋の扉の外に物音がしたのに気が付いた。
え?! 今誰かそこに居るの? え? 今ボクがしてたコト見られた? 聞かれた?
あわてて、脱ぎ捨ててあったトランクスに手を伸ばした。
トランクスを掴んだのと同時に、扉がノックされた。
「ミナト……起きてる? ……まだ寝てるの?」
ぅえぇ?! ミ、ミコトだっっ!!
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