第15話 ミコトとお買い物
「さて、先ずは服から見て行こうか」
「あ、はい」
「ミナトはもっと、甘い系の服があって良いと思うんだよね!」
「あ、そうですか」
「その後はアクセかな? アンタ、あたしが上げたヘアピンしか持って無いでしょ?」
「あ、そうですね」
「そうだ! 後ネイルも! ジェルも幾つか揃えよ! サロンでやるとちょっと高いからさ。まずはお試し的な?」
「あ、おまかせします」
「さあ! 今日は忙しいぞー! 片っぱしから攻めて行こう!」
「あ、どうかお手柔らかに……」
朝からやたらハイテンションなミコトに、ボクはただ素直に返事を返すしか出来ずにいる。
このノリのミコトに真正面から挑んだ日には、どんな目に合うか分かった物じゃない。
今日のボクは、只ひたすら静かに対応する事に決めたのだ。
そんなミコトに手を引っ張られ、土曜日の今日、ボク達はこの街の商業施設へやって来た。
ココは地元でも有名な、海に面した古い倉庫を改造した施設で、小物や雑貨を扱ったお店も多くて結構人気のスポットだ。
ミコトとのお出かけは別に嫌ではない。いや、むしろ嬉しいくらいなんだけど……。
その目的が、ボクの女の子としての装飾品各種を揃える為だと言うのが、ボクの気分を微妙なものにする。
対するミコトの目は生き生きとして、めっちゃテンション駄々上がりなのは、間違いなくボクを着せ替え人形として楽しむ気満々なのだと分るワケで。
それでも、つい数日前にあんな事があって、心配をかけてしまった後だから嫌だと言うことも出来ず……。
ああ、ボクは今日1日オモチャになってしまうのだな……と。自ずと覚悟が完了してしまった次第なのであります。
そして予想通り、やはりボクは着せ替え人形になった。
ワンピースやツーピース。更に出たばかりの秋物コーデ。ミコトの目につく物は、片っ端から着せられたのだ。
恐ろしい事に、着せられたのは洋服だけでは無かった。
水着まで着せられたのだ!
もうシーズンは終わっただろうに、何でまだ置いてあるかな?!
え?! 在庫処分市?! ヤメテェ――――ッ!!
そんなボクの慄きなど気にするはずも無く、水着売り場を見つけた時のミコトの目の輝きは、尋常では無かった!
たちまち試着室に放り込まれ、次々とミコトが用意した水着を試着させられたのだ!
ワンピースはまだ良い。いや! 水着自体が勘弁してほしいんだけど!
そのワンピースでも、切れ込みがこんなに際どいのって大丈夫なの?!
それにチューブトップ? これ動き回ったら絶対外れるよね? 零れるよね?! ミコトは「大丈夫!」って言うけど、あの目は絶対信用しちゃダメなヤツだ!!
そしてビキニ!!
これ無理! これで人前とか絶対無理!
なのに何で次々と持って来るの?! コッチもチューブトップ?!
他の物もやたらと布面積が少ない! だからコレちっさいってば!
ンで何この最後に持ってきたヤツ! 紐だよね?! ネタ用でしょ?! 普通はこんなの着ないよね?!
なのに今、馬鹿正直に身に着けてしまっている自分が口惜しい……!
ってかミコト! なんでスマホ向けてんの?! なに普通に画像撮ってるのさ?!
「やあ、美古都。立花さん。奇遇だね」
「わぉ! ミナトくんスゴイ格好! 攻めて来るね――」
「ぎゃぁあぁ――――ッッ!!!」
何ぜかそこに突然、霞さんと多岐川さんの2人が現れた。
そしてボクの居る試着室を覗き込んで来たのだ!
ミコトだけならまだしも、この2人にまでこんな恥ずかしい格好を見られた!?
なんでいるの2人とも?! なんでスマホコッチに向けてんの?!!
「こりゃ凄い」
「画像保存していい?」
「安くは無いぞ」
「ちょ――ッ?! ちょぉおぉぉ――――ッッッ!!」
もう2人とも既に撮ってるよね?! これ、ミコトの許可が必要なの?! 本人の意思は?! ボクの肖像権とは一体……?!
「普通にコレは着れないな……」
「実に変態ちっくでたまらん!」
「あたしのミナトフォルダが爆烈するぜ!」
「だ、だからッ! 撮るなぁ――――ッッ!」
ボクの訴えなど、在って無い様な物。
そんな事は既に理解していましたけどね! シクシクシク……。
こうして、逃げ場を塞ぐ様に三方向からスマホを向けられ、ボクが羞恥で身悶える様を撮られる撮影会は、「何事か?!」と店員さんがやって来るまで続けられたのだった。
「デートの邪魔して悪かったね」
「でっ――?!」
気付けば、建物の外のベンチで萎れている自分が居た。
そんなボクに多岐川さんが、出会い頭のフックの様な一発を放って来る。
「アンタらも買い物?」
「うん。これから伊織と中華街まで行く予定」
でも慌てたのはボクだけで、ミコトも霞さんも全くの無反応。普通に会話を続けている。
動揺した自分が逆に恥ずかしくなって来た。
そのまま、あげた顔を静かに下ろしてしまう。
「キョウカがSNSに上がってたデカ肉饅を、どうしても今日食べたいって言うからさ」
「どうしても、とか言ってない!」
「食べるんでしょ?」
「…………食べるけど」
「そう言うワケで、わたしらは行くよ。ミナトくん、楽しんでおいで」
「……あ、うん。ありがとう多岐川さん」
「じゃあね美古都。またね立花さん」
「……うん、霞さん。また」
多岐川さんが霞さんの肘に腕を絡め、そのまま彼女を楽しそうに引っ張って行く。
スポーツウーマンな霞さんの身長は170を超えていて、多岐川さんもそれに近い。
2人とも長身で手足が長いから、とても絵になる。
ついついそんな2人の姿に見惚れてしまう。
「……あの2人仲良いんだね」
「そうだねー」
2人を見送るミコトは、目元が優しげで何故か少し嬉しそうな顔をしている。
「さて! あたし達も何か食べようか。お腹減ったでしょ?」
「そう言えばそうかも……」
「そこでパンケーキ食べよう! 苺とメレンゲがたっぷりと乗ったヤツ! 前からミナト食べたがってたでしょ?」
「う、うん。そうだね」
そこは地元ではちょっとばかり有名で、他所からもワザワザ食べに来る人が居るくらいの人気店だ。
ふわっふわなパンケーキに、タップリと乗った白いメレンゲ! そこにコレでもかとイチゴのソースがかかっている。
そんなパンケーキの姿が、お店の前のメニューは勿論、SNSにも頻繁に上がるのだ。
そんな画像には、目が離せなくなる魔力が溢れている!
でも客層はカップルや女子のグループばかりで、以前は男だけで入るには、チョットばかりハードルが高いと感じていた。
それをミコトは気が付いていたみたいだ。
「さあ! 行くよ!」
「あ……。う、うん」
ミコトはボクの手を握り締めると、そのまま楽しそうにお店まで引っ張って行ったのだ。
お読み頂き、ありがとうございます。
おもしろいと感じられましたら、ブクマ、ご評価頂けますと、作者のモチベーションが駄々上がりします!!よろしくお願い致します!




