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ボクが『たわわ』になったので、彼女のヨメになりました。  作者: TA☆KA


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第14話 ひとりで帰れるもん

 登校を再開してから、既に二週間以上経っている。もう半月も経つんだと改めて思ってしまう。

 毎日ミコトが付き添う様に一緒に登下校してもらってるんだけど……。

 もうそろそろボク1人で帰っても、良い頃合いなんじゃないだろうか。


 今日ミコトは下校間際、先生に何やら用事を言い付かったので少し待っていろと言われてた。

 だからその日は初めて、一人で下校しようと思ったのだ。


 一応L〇NEを入れようと思ったけど……。

 スマホのバッテリーが落ちてた。いい加減ヤバいかな。

 モバイルバッテリーも家に忘れて来たし。

 仕方がないので校庭にいた(かすみ)さんに、「先に帰ってる」とミコトに伝言を頼んでおいた。


 大体ミコトには世話になりっぱなしなので、結構な負担をかけている筈なんだ。

 だから、いい加減1人でも大丈夫だと言うところを見せた方が良いんじゃないかと思う。

 そうすればミコトも少しは安心するんじゃないかな。


 そんな事を考えたら、ちょっと気分が上がってきた。

 陽射しは相変わらず厳しいけど、今日は心持ち過ごし易い方だ。風がちょっと気持ちイイ。



「ねぇ? アオフーパークってコッチの方でいいのかな?」


 そんな風に気持ちよく歩いていたら、突然声をかけられた。

 大学生くらいの男の人だった。

 髪は金髪で、赤や青のメッシュが入ってる。

 ちょっと軽っぽいけど、ものすごく笑顔だ。

 道に迷ったのかな? アオフーパークは全然コッチじゃないんだけどな。


「え? アオフーなら駅の近くですよ。全然逆です」

「マジ?! あっちの方?」


 学校は高台にあるので、駅までは結構長い坂を下りる事になる。

 途中、開けた場所があるんだけど、そこから駅方面が広く見渡せるのだ。

 ボクはそこから、向こうの方だと指をさして教えて上げた。


「ええ、そうですよ。ココを真っ直ぐ下って突き当りを右に行って、通りに当たったら今度は左へ行って……」

「あ、ゴメン! 一度に言われても分かんないや。オレこの辺、良く知らなくってさ」

「ああ、そうなんですね」

「この道、君も行くんでしょ? 途中まで一緒に行って貰っていいかな?」

「……まあ、途中まででしたら」

「ホント?! 助かる~~。ありがとう! じゃ、さっそく行こうか!」

「え、え? あ……」


 なんか押しの強い人なのか?

 その人はボクの右横にピタリとくっ付いて、一緒に坂を下り始めた。


「いや~~、それにしてもツイてるわー」


 間違ってこんな所まで上って来ちゃったのに、ツイてる?

 あ、途方に暮れる前に、道を教えて貰えたって事にかな?


「もっと先に進んでからだと、もっと分らなくなったかもですね」

「ン? いやー、そうだね、そうかもね」


 あれ? なんだろこの人上の空? っていうかこの人の視線さっきから……。


「キミ、ホント凄いよねぇ。よく言われるでしょ?」

「は? なにがですか?」

「いやいや、マジ凄いって! 間近で見るとほんとヤバい」


 その人は自分の左腕を回し、ボクの左肩に手を置いた。

 そんでグイっと身体を寄せて来る。


「え? ちょ、ちょっと?」

「いや~~ホントラッキーだわ! こんなトコでこんな子と知り合えるなんてさ!」

「あ、あの! 放してもらっていいですか」

「まあまあ、良いじゃんこうしてお知り合いになれたんだからさ! ね? 折角だし名前教えてよ!」

「だから、ちょっと離れて……」

「いやマジスゲェって、このボリューム! ちょっとこれシャレになんないよね?!」


 あ! この人さっきからずっとボクの胸ばっか見てるんだ!

 ちょ、ちょっと? 肩にかけた手がドンドン伸びて、胸にまで指先が届こうとしてる?!


「ですから! 離れて下さい!」

「大丈夫だからさ! ね、だから名前教えて?」

「み、道分かりますよね? 離れて貰っていいですか?」

「道に迷ってるんだからさ。教えてくれるのが親切ってものじゃない? ね、名前」

「で、ですから、離れて……」


 顔が近付いて来る。

 なんとか離れようとするんだけど、この人の腕の力が思ったよりも強くて離れない。

 右手を使って離れたいんだけど、相手との体に挟まれて上手く使えない。

 左腕も肩を押さえられているので、やはり力が入らない。

 ちょっと、これヤバくない? ヤバいよね!


 と、突然、左の二の腕が掴まれて、身体が横へグイッと引っ張られた。

 そのまま男の人から身体を離す事が出来た。


「走るよ!」

「え?」


 ミコトだ。

 ミコトがボクの腕を引っ張って、強引に男の人からボクを引き離したのだ。

 そしてそのまま今来た道を戻る様に、ボクの腕を引っ張って走り始めた。


「ちょっ! オイ待てよ!」

「もっと速くッ!!」

「ま、ま、待って!」


 もっと速く走れとミコトに急かされ、元来た学校方面へとボクらは走った。

 学校への道は上り坂なので、全力で走るのはかなりキツイ。

 それでもミコトはボクの手を握って、坂をドンドン登っていく。


 校門が見えて、何人かの生徒達とすれ違った辺りで、ようやくミコトから止まって良いとお許しが出た。


「ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ! ぜぇ!! ……」

「はあ、はあ、はあ、はあ……」


 メッチャ息が上がってる。

 ちょっと直ぐには喋れそうにない。

 例の男の人は……。どうやら坂の下に置いてこれたみたいだ。

 流石にココまでは追いかけてこないか。


「もう! 何やってんのよアンタは?!」

「ぜぇ……はぁ! はあッ! ……な、何って? はぁ! はぁ」


 ボクはまだ呼吸が荒くて喋るのも大変なのに、ミコトってば肩で息はしてるけど、もう普通に話してる。凄いな。


「何でナンパなんかされてんの?! って言ってんの!」

「はぁ、はあ、……ナ、ナン……え? ……はあ、はあ」


 膝に手を付き身体を折り曲げ、ゼイゼイと息を切らせてるボクに向かって、腰に手を当てたミコトが上から言葉を落として来る。


「流石にココまでは追ってこないでしょ。何なら、そこの交番に行っておく?」

「……はぁ、はぁ、こ、交番? い、いや! そこまでは……はぁ、はぁ」

「アレは間違いなく性犯罪者だよ! チッ! やっぱり一発殴っておけばよかったか……」

「はぁ、はぁ? ……ちょ、ちょっと、ちょっと!!」


 ミコトはこう見えて結構武闘派だ。

 前にも言ったけど、弟のユウジが通っている道場に、ミコトも小さい頃から通っている。

 檜榎家(ミコトんち)とは遠縁でもあるこの道場には、今でも週一くらいは顔を出しているらしい。

 ユウジの話では、ミコトは結構強いのだとか……。


 昔ボクを守ってくれたミコトは、年上相手にも負けてなかったからね!


「で、でも……それシャレに成らなくなるよ!」

「本気でなんか殴んないわよ」

「本気で殴ったらマズイよね?!」

「もう! アンタがナンパなんかされてるのが悪いんでしょ?!」

「ぅえぇ?! なにさソレ! え? ナ、ナンパ?!」

「メッチャ口説かれてたでしょうが! まったく!」


 ミコトが凄く目を釣り上げて迫って来る。「知らない人に着いて行くな!」とか「もう立派な女の子なんだから!」とか言われても……。ただ道を教えてただけなのに、ねぇ……?

 え? でもあれってナンパ……だったの?


「自覚無しかっ!!」


 また怒られた。


「大体なんで『待ってて』って言ったのに、黙って1人で帰っちゃうかな?!」

「そ、それは……。ちゃ、ちゃんと霞さんに伝言……したし…………」

杏夏(きょうか)に聞いて、急いで追いかけて正解だったわよ!」


 ついしどろもどろになって、目線を逸らしてしまう。

 ひとりで帰れるところを見せるつもりだったのに、この状況はなんとも顔を合わせづらい。


「あんなのに着いて行ったら、どこに連れ込まれるか分かんないんだからね!」

「…………うん」


 実際のところ、アレがナンパだったなんて、ミコトに言われるまで思いもしなかった。

 だって、自分がそんな事されるなんて想像もしてなかったんだから。


 下を向いていると、ミコトが黙って抱きしめて来た。


「……あんまり心配させないで」

「…………うん、ゴメン」


 ミコトに心配かけたのはよく分かる。

 やっぱりボクはまだまだ頼りないのかな?

 独り立ちとかまだ、当分先になるのかな?


 そんな寂しい思いを抱きながら、ミコトの温もりについつい心地よさを感じてしまっていた。

お読み頂き、ありがとうございます。


おもしろいと感じられましたら、ブクマ、ご評価頂けますと、作者のモチベーションが駄々上がりします!!よろしくお願い致します!

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― 新着の感想 ―
女の子二人(?)の関係がてぇてぇすぎる。 このままプラトニックにいくのもいいかもしれない。
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