第13話 秘密会議
その日のお昼休み、学校を休み始める前から借りっぱなしになっていた本を返す為、ボクは図書室へと来ていた。
ついでに、本の続きを借りようかと書架を見回っていたら……。
今ボクが居る本棚の向こう側の机から、なにやら数人で会話をする声が聞こえて来た。
本棚を挟んでいるとはいえ距離は直ぐそこなので、聞くとは無しに会話が耳に入って来る。
知っている人の声だな。
本棚の隙間から覗いてみると、辛うじて顔を確認する事が出来た。
あれは……多岐川さん?
なんか普段よりテンション高目?
1人は……クラス委員の藤島 弥生さん?
真面目なイメージあるんだけど、ちょっと声の雰囲気違うかな?
さらにこっちの人は……同じクラスの竹内 奈緒さん?
クラスでは会話してるとこなんて殆ど見ないけど、なんか楽しそうだぞ?
全部で5人かな?
後の2人は他所のクラスで名前分らないけど……、確かこの5人ってみんな文芸部じゃなかったっけ?
お昼休みに部活の集まりかな?
「ミナコウこそが至高! これは不変!」
「立花サンは総受けでこそでしょうが!」
「いあいあ、あの顔で誑かしまくるから捗るのだ!」
あれ? な、なんだ? 何の話だ? 部活じゃないの?
なんかボクの事話してる?
「ぬぅ、総攻めも確かに捨てがたいが……」
「いや! 何言ってんの! あり得ないでしょ?! 愛されてこそ! でしょが?!!」
「可愛い男子はやられてるに決まってんだろ! それが真理!!」
「普通、こんなん戦争案件なんだけどねぇ……」
「ウチはキャパ広いよねー」
「いや、単にみんな無節莊の住人なだけなのだよ」
「あぁーーーっ! でも現状ではノーマル展開にしかならぬ!!」
「いやいやいや! まだ変わっていない世界線が存在している、筈! ワタシはそれを模索する!」
「確かに、現状救いはそこにしかないのも事実」
竹内さんって、こんなに話す人だったんだ。
クラスでは大人しい人の印象だから声も碌に聞いた事無かったんだけど、意外な一面だ。
「でも、現状のミコミナもてぇてぇ……」
「確かにてぇてぇ……。特にミナトくんの反応はてぇてぇの極み! 狙ってやがんのか? ヤツぁ?!」
「確かに……確かに! あの天然はあざとい! だがソコが良い!」
藤島さんも、教室では眼鏡をかけたいかにも『委員長キャラ』的な真面目な印象だったけど……。
やっぱり部活仲間同士だと、こんな砕けた様子になるんだな。これも意外な一面だ。
「檜榎さんに至っては、てぇてぇを既に飛び越えてて草……」
「ありゃもう隠す気ないよね?!」
「いっそ清々しいとも言える……のか?」
「いや生臭っしょ」
「ブレーキ付いてねぇからアレは」
「ヤンデレっぷりは絶賛増量中だな」
「ブレーキ無くして、くれぐれも事故だけは起こさないで欲しいもの……あれ? 起きても良いのか?」
「宜しいのでは御座いません事? 皆様でお見守り致しましょう」
「いきなりキャラをぶち込むな。でも、見守るには一票」
「同じく一票。わたしは砂かぶりで鑑賞する!」
「ああ! でもワタシはやはり、無理やり佐伯クンに押し倒されているのが見たい!」
「今リアルでやったら普通に案件だよねソレ」
「只のノンケモノだし」
「いやだから創作……。付いてる体で」
「付いてる言うな」
「て言うかコイツ、この前親に創作ノート読まれたらしい」
「マジか?!」
「母親にノート返された時、鼻で笑われたとか……」
「……ぉふ」
「いたたまれない!」
「くぅっ! 親に性癖バレした自分に、既に死角は無ぇ!」
「瀕死じゃねぇかよ!」
ボ、ボクは一体何の話を聞いているのだろうか?
これは聞いていていい話なのだろうか?
忘れてしまうのが平和な気がする……うんそうだ、そうしよう、忘れてしまおう!
そっと静かに音を立てずに床を這ってそこから離れ、何とか気付かれる事なく図書室を出る事が出来た。
ああ、世界っていうのは、まだまだボクの知らないコワい事で溢れているのだなぁ……。
と心の底から思った午後だった。
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