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ダンジョン


ダンジョン前の宿場




「皆!朗報だ!!」



 ギルドから派遣された回復士によって、重体の人達は全快となり、一息をつけたところで、試験官が大声を上げながら来た。


「俺が報告をしたワイバーンの討伐で貢献、活躍をした者達は合格となった!

今から、冒険者を配るから、俺が読み上げた名が前に来てくれ!」


 試験官の言葉に冒険者受験者達がざわめく。ワイバーン討伐を試験と見立てて、合格不合格を判断していたようである。

 そういえばと大社はアインを呼びかける。


「そういや、一昨日、試験管からワイバーンの群れの討伐の時に何をしたのかと質問されたか?」

「されました。そして、答えた内容を書類に書き留めていました。それは受験者全員にもやっていたそうで、おそらく、書き留めた書類はギルドに報告したのでしょう。」

「合格者は今、重体の人でも含まれるんだろうね。コレはコレからダンジョンに挑戦できないと悔やんだ人も喜ぶな。」


 次々と名を呼ばれ、周りが歓声、嘆きの声がこの場を満ちた。

 そして、最後に大社たちの名が呼ばれた。


「ソイ!アイン!この2人は特例だ!2ランク飛び級の金級だ!!」


 わぁ。マジでか。


 大社はそう小さく呟いた。


 周りが驚愕や称賛、又は疑惑の声も上がる。金級(ゴールドランク)というのは冒険者のランクのことだ。


 冒険者のランクは全部で7つの階級がある。


銅級(ブロンズランク)

銀級(シルバーランク)

金級(ゴールドランク)

精銀級(ミスリルランク)

金剛不壊級(アダマントランク)

黄銅鉱級(オリハルコンランク)

日緋色金級(ヒヒイロカネランク)


 ランクは下に行くにつれ、依頼されるものと受けることができる依頼の難易度が上がると同時に身分も上がり、閲覧できる資料が増えたり、権限を持ったり、一般人は入れない所に立ち入ることができたりする。


 ちなみにこのランクは魔物や災害にも当てられる。


 冒険者の新人は銅級(ブロンズランク)ランクから始まるはずなのだが、どうやら、私達は飛び級で下から三番目の金級(ゴールドランク)になったらしい。

 疑惑の声が上がったのは、今まで飛び級で銀級(シルバーランク)は過去に片手で数えるほどだが、あったらしい。しかし、金級(ゴールドランク)になったのは前代未聞だというらしい。


「この2人はワイバーンの討伐数がこの中で圧倒的に多かった。その上、無傷で帰って来れた。そして、怪我人に治癒、応急処置を施したその手腕は薬師や医者も唸らせたほど素晴らしいものであった。よって、金級(ゴールドランク)にふさわしい実力を持っていると判断した。」



「前に趣味で薬と医療を嗜んだのが功を成したな。」

「念のためにお聞きしますが、嗜んだ範囲はどれほど?」

「当時の医療全般。どうせならと、皆伝とまで極めてみたぞ。」

「・・・その当時というのは。」

「ん?んー、だいぶ前?」


 ソイの言う前とは、どの程度なのかは知らないが、精霊の言う“前”はザラに何千年前を指すことがある。大社の正体が正体であることから、尚更、遥かに昔なのだろう。


「まあ、当時とはいえ、今はどれほど進歩したのかも気になるから、機会があれば、学ぼうと思っているよ。」

「冒険者を志したのはそれで?」

「大雑把に言うと、暇つぶし。」






翌朝



 やはり、大社とアインは有名人になっていた。

 一気に金級という出来事はパンチが効きすぎたというのもあるが、もう一つの原因もある。


「女神様!!コレを献上します!!」

「アハハ、有難う。」


 このように、さまざまなな物を献上してくるのだ。この人達はワイバーン討伐で怪我をしたのを大社が治した奴らだった。


「何があったんですか?」

「信者が出来た。」

「何やっているんですか?」


 大社は知らん、とそっぽ向いて口笛を吹いたが、その後すぐに大社はなにか思い出したかのような顔や声をあげた。


「ああ、それから。」

「何ですか?」

「ダンジョンに行くことにした。アインも行くよ。出発は明日。」

「いきなりですね。それに何故、我も行く前提なのですか。」

「従者でしょ。」

「あの契約は一時的なものです。そもそも、貴方はいずれ、この世界から去りますよね?我はその時までに付き添うつもりです。恩人ですので、我にできる事をしますよ。」

「つまり、期間限定で使い走りになるって事でしょ?」

「・・・それは、そうですね。」



――――――



翌朝、朝ごはんを済ませ、ダンジョンに向かった。大社やアインの予想通り、信者達が嘆き、騒いだ。


「女神様ぁ!!!!」

「天使様ぁ!!!!!!」

「行かないでぇえ!!!!!」

「ご武運をぉ!!!!!!!!!」


「天使じゃないよー。」

「女神様という所は否定しないんですね。」

「そりゃあね?性別無いからどちらとも言えないんだよねぇ。でも、人間だった頃の性別で言うと、男神だな。」

「ほう、・・・・人間だった頃?」


 アインは大社の言葉に違和感を持ち、思わず、そう呟いた。


「そのまま心の中にしまうか、魔法でゴッソリ記憶をなくすかのどっちが良い?」

「心の奥底に鍵をかけてしまいます。」

「宜しい。」


 ダンジョン迄は、ダンジョン前の宿場からは徒歩3分ほどでついた。

 ギルドカードを見せる必要があり、見せたらまだ新人で金級であることに驚かれた。


「ようこそ。

此方がダンジョン挑戦者の証明書です。これは踏破したエリアを記録する物です。また、このダンジョンは死亡率が高い為、生死の確認も兼ねています。必ず紛失しないでください。此処に戻りましたら、返却してください。

ではご武運を。」


 前の世界で言うGPSみたいなカードを渡された。巾着袋の中に提出したギルドカードと共に入れる。


「よし!楽しみだ!!」

「静かにしてください。周りから注目されます。」

「はーい。分かったよ、お母さん。」

「誰がお母さんですか。」


 そういうやりとりをしながら、ダンジョンの中へ挑戦していった。


「宿場にいた時は理由を聞かせてくれませんでしたが、教えてくれませんか?」

「ん?んー、理由は3つあるよ。

一つは感覚をこの世界の基準に合わせたい。

二つはアイツらと遭遇しないことだ。」

「アイツらとは?」

「私の愛し子達。」


 その私の言葉にアインは目を見開いた。


「そいつらはお前と同じ加護だけど、

お前と違って一時的なものじゃあない。

魂が尽きるまでの永遠だ。」

「・・・・貴方のことなら、最上級の加護を授けているのかと思いました。」

「いや、ソレはない。

というか、私がそんなもんを授けたら、大問題になる。」

「それはそうですね。」



加護


 神の称号を持つ者も含めた最上位の存在が格下の存在に授けるものである。


 その加護には四種類ある。

 下にいくにつれ、強さや価値、希少性が高くなる。それと同時に加護を与えた者と被加護者との関係が密接になる。


冥護

命に関わるような場面で運アップ、強化するもの


恩恵

自分の他にも、周りのものに恵みを与えるもの


守護

冥護の上位互換。

結界、天誅としての大魔法が発生するもの


慈愛

守護と恩恵の両方を持ち合わせる。

ガチのやつ。


 大社が授けたことがあるものは冥護のみ。

 大社が恩恵以上の加護を授けることは未来永劫必ず無い。


「それで?」

「ん?」

「貴方、さっき理由は3つあると言いましたよね?何ですか?」

「ああ、それはね。

ダンジョンを改良するためさ!!」

「此処、公の場ですよ。」



――――――



ダンジョン地下10階(最下層)


 意気揚々と挑戦した大社達は僅か半日で暇を持て余した。


「このダンジョン、初心者向けだからか、そんなに手応えなかったな。」

「ソレ、他の人が聞いたら、泣きますよ。」


 火を起こして、大社達が狩った魔物を焼いてムシャムシャと食べる。


「あの時、誰も聞いてなかったのは良かったもの、ダンジョンを改造するとはどういうことですか?」

「改造じゃなくて、改良!」

「どちらも同じです。」


 すぐさま訂正した大社にアイン呆れの眼差しで突っ込まれた。大社はぐうの音も出なかった。


「そもそも、ダンジョンの改良って、簡単にできることなのですか?私も参加させているということは、貴方だからできるのではなく、そこら辺の人でも出来るということですよね?」


「正解!!頭の回転が速い人との会話はスムーズでいいね!ちょっとつまらないけど。」


 つまらなさそうな顔から一変、説明、解説する時の大変楽しそうな顔をする。


「私だったら、外からでも出来るけど、そこら辺の人がするなら、先ず、ダンジョンの核の所まで辿り着かなくてはならない。」

「ダンジョンの核?壊せば、ダンジョンが消えるという球のことですか?」

「そ。ダンジョンの心臓である核。」


 その核を壊せば、ダンジョンの全てが消える。つまり、その核こそがダンジョンの全て。ソレに干渉すれば、ダンジョンを好きなようにすることができる。

 このことは、この世界の誰も知らない。


 使えば、ダンジョンの外に転移することができる古代遺物(アーティファクト)だと思われているのだが、その使い方はダンジョンの核に干渉することでできたことだ。

 意外と近くに世界の情勢を変えてしまいそうなヤバい物があるということに全く気づかない人間達の様子は大社の目に大変面白く映っていた。

 核について、説明していると、だんだんとアインの顔が険しくなった。


「・・・・・まさか。」

「うん。気づいたようだね。」


 聡い奴は好きだよ、と大社はイタズラっ子な声で説明を続けた。


「ダンジョンの核に干渉することができるということは、使い方次第だと、資源を無限に採掘することができるし、又は、難攻不落のダンジョンにして、籠城することも可能だ。無限の資源、つまり、お金を尽きることもなし。飢えることもなし。とびっきり、理想的で素晴らしい国を築けるじゃあ無いか?もし、このことが世の中に晒されたら、世界規模の争奪戦が起きるねぇ。」


 そう愉しげに語る私とは対称的にアインはどんどんと顔が険しくなる。

 人外の美しい顔が歪み、歪まれた瞼の下から覗く、黒目の中にある紅瞳が面倒臭いと顕著に語っていた。


「・・・・・・・此処に誰もいなくて良かったです。」

「ハハッ!知ったところで私が記憶を消去するから安心しなよ!そもそも、こんなこと、大勢の者がいる所で言わないよ!」

「・・・・さっき、改造すると公の場で言ったのは誰ですか?」

「アレはギリ問題ない!」

「・・・・・改造をするなら、どのようにするのですか?」

「改造じゃなくて、改良だって。」


 そう文句を言いつつも、ダンジョンの最下層にまで降っていった。


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