表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/33

寝込んだ。

たまたまちょうどいいタイミングで個室をもらってしまった……なんて思いながら寝ていたら、

お見舞いの嵐だった。


マハトさんからは、「風邪薬。飲んで。今」と飲むまで動かないという圧を感じたし、ジュードさんは珍しく「なんか食べたいものとかあるか?」と……リクエスト受け付けるなんて初めて見た。リシェルさんにはなぜか「……そうよね、疲れてるわよね。気付いてあげられなくてごめんなさい!」……謎に謝られた。


風邪ひいているとボーッとするよね。

……疲れが溜まっていたのかな。

ジョギング中に霧の中を走り抜けたらそこは異世界でした、から始まり、なぜか持参していなかったはずのリュックに、詰めた覚えのない荷物がぎっしり入っていて、それをちょこちょこ売りながら屋台で買い物して、ダンジョンでレベル上げをして。


「……なんかこういうのって、神様とか女神様がボンッと現れて、チート能力を授けてくれたりするものじゃないの?」

思わず口に出てしまった。

「レベルは上がらないし、上がってもちょっとだし……お金全然貯まらないし。家賃も食費も払えてないし。キックボクシングで戦ってるから身長低い私はリーチも短いし、インファイターで攻撃範囲も狭いし、かといって剣はいまいちしっくりこないし、魔法がなんだか全く分からないし。」


「みんなに会えてなかったら……本当にやばかった。」

それっきり体の怠さに負けて黙り込む。

独り言を呟くのさえきつい。


でも、それでもみんなはここで生活してるんだよね。

お金を稼いで、住む所も自分で見つけて。

「すごすぎる……。」とだけ口にしたあと、また寝てしまった。



不思議な夢を見た。

可愛い猫が両手を合わせて上下に振るポーズをしながら「ごめんにゃさい!」「ごめんにゃさい!」と申し訳なさそうに言う姿だ。

あんまり可愛かったので「いいよ~。」と言って、夢から覚めた。


……なんだか急に寒気がしてきて、熱が上がってきたな…と思った。震えるほど寒い。しばらく震えていたら、今度は暑くなってきた。これはもしかしたら38度超、いや、39度いくかも……免疫力が下がってたのかな、と思った。



それから、寒くなって、暑くなってを5回くらい繰り返して、キツイな…体力の消耗がキツい…これ以上体温の上がり下がりが続いたらまずいと思った。……やけに全身が苦しい感じ。

マハトさんが部屋に駆け込んできて「飲んで!早く!」と薬を渡してくるので飲んだらなんだか栄養ドリンクみたいな味がした。思わず「美味しい。」と言ったら「バカじゃないの!?」と怒られた。

理不尽大魔王か。理不尽大魔王マハト……。

ニヤニヤしながら私は再び寝た。



「それで、話ってなんだよ、マハト」

キッチンに集まったリシェルとアラン、ジュード。

「言っておかないといけない事がある」

はーっと息を吐いたマハト。


「ナオはおそらく異世界から来た」

「へぇ~。……ん?そう言われても違和感ないな。」

「……どこから来ても驚かないわよ。あの子、モルディアンから来たって言ってたもの。」

「グフッ!くっくっ……モルディアンから来たなら人間なはずないのにな。」「アラン……お前性格たまに悪いよな」


マハトの眉間に皺が寄る。「ナオが体調を崩したのは魔素を取り込めなかったからだ。くそっ……違和感に気づけなかった。あのまま死ぬところだった!僕のミスだ!」

ダァン!とテーブルを叩く。



マハトが自分を責めているところを初めて見た一同は、真面目な顔を作った。そして思った。ちゃんと話そうとすれば話せるんだな…。


「でもマハトがいるからナオは死なない、だろ?」

「【賢人】マハトだもんね。」

「魔素は摂取させたんだろ?」



「当たり前だ。急いで空気中の魔素を集めて物質化した。ナオは美味しいと喜んで飲んでたよ。」

「ブッ……くっくっ……」「アラン、やめなさいよ、消し炭にされるわよ、【獄炎】のマハトに」

「その呼び方バカみたいに聞こえるからやめて」「二つ名がふたつ……くっくっ……。」「…………。」


ジュードが腕を組んだ。「ナオは色々抱え込みやすいように見える。帰宅の時も、食事の時も、いつもだ。3ラスの時から金の無心すらされなかったし…………。」

タオルを買ってもらったことを思い出し押し黙るジュード。



「あー、家賃や食費を入れたいと言ってたなー。」

「アラン!言うの遅い!……可哀想に……2スベインで喜んでたのよ、あの子。……レベル上げを焦っていたのも、早く強いモンスターと戦ってお金を稼ぎたかったのかも。……ナオのペースの邪魔をしないようにと思っていたけど……この際だもの。心の負担を取り除いてあげましょ。」

「リシェルがわる~い顔で笑ったので、ナオの回復次第、行きますか。」「今回の詫びも兼ねて僕も行く」「はい決定ー。」



「ナオのジョブに合った装備を買ってこなきゃ。」

「僕が買う。鑑定スキルがあるからな。それに魔素を取り入れ始めると魔力が使える。慎重に選びたい。」

「マハト太っ腹~!」「ほざけ。……僕のせいで死にかけたんだ。これからは悪いけど【賢人】の僕がナオから目を離さないと誓う」


ジュードが椅子を引いて立ち上がる。

「早めに準備しとくか!あ、あれ着る?」

「ナオのも作ろうよ!」

「そうしよう。俺たちはパーティだ。異論ある人ー?」

「え、色はやっぱり黒なのか?」

「……バカみたいに見えるから着たくないんだけど」


「ということで、全員一致で本日は解散~!」

「……適当すぎない?」



私は結構長く寝込んだみたいで、あんまりはっきり覚えていないんだけど、ジュードさんの作ってくれた消化のいいスープと、マハトさんが飲ませてくれた美味しい栄養ドリンク(?)

でかなり体が楽になった感じがした。

数日後に起き上がり、部屋を出たら、


「みんな!ナオが起きてきた!体は大丈夫か?」

「あ、大丈夫です。ずっと寝てたので身体が重い感じです。」

「ナオ~!元気になって良かった!これ、プレゼントだから着てね。全員お揃いだから。」「…………これ、マハトさんも着るんですか」「もちろんよ!」


「……肉はまだ無理そうだな。少しずつまた俺のスタミナメニューで…」

「せめてお魚とか!バリエーションが欲しいって言うか!」

「自分で作るか?リシェル」「……炭よりは肉の方がいいかな、俺は」

いつもと変わらない光景にホッとした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ