キックボ
☆-☆-☆
「ただいま帰りました...」
どうしてもタダ飯食らいの居候という気持ちが先に立ち、堂々と挨拶できない中、「おかえり~!」と声を掛けてもらえてホッとする。
「手を洗って着替えておいでー。あら?服って持ってる?」「えーと...。」
実は異世界に来てしまった時に、売れそうな持ち物はほとんど売ってしまってからの3ラスなのだった。......実は屋台で色々食べたんだけど……。
「良ければ皆さんの不要な服があれば、全部ください。」
開き直って図々しくお願いした。
☆-☆-☆
とりあえず、服は後回しにしてご飯を食べることになり、やはり肩身が狭い思いだ。タダ飯食らいが頭から離れない。
異世界に来る前の世界の言葉が自分を苦しめる、なんてことあるんだな。
今日もジュードさんが作ってくれるらしい。
美味しそうな匂いがする~!
「美味しそう~!」
「...肉だな」
「...肉だ」
「文句あるなら食うな!」
今日もステーキで、たんぱく質を多めに取りたかった私にはありがたかった。いただきますをして食べる。美味しい。
野菜のスープも優しい味。
パンは買ってきたものだそうだ。
「ご馳走様でした!」と言うと、不思議そうな顔をされたけど、ジュードさんがみんなに「こいつのコレは気にするな」って言ってた。
☆-☆-☆
後片付けを手伝ってから、みんな部屋に戻ってゴソゴソして、たくさんの服をくれた。リシェルさんの服、凄いな...。
試しに着てみたらみんなに凄く笑われた。肩がずる、と下がる。
やっぱり出るとこ出てないと、似合わない服ってあるんだなぁ。悔しいので繕ってパジャマにしようと決めた。
アランさんの服も凄かった。生地の触り心地が上質すぎる。シルクとか、カシミヤをイメージしてもらえると助かる。
「...もしかしてアランさん、すごくお金持ちのお家で育ちました?」
「...なんでバレたんだ...」
ジュードさんの服はシンプルで動きやすい。密かに日常使いしようと決める。ダンジョンでも着れそうだ。ただ、色が黒しかない。さすがは忍び...と勝手に頷く。スカウトとアサシンで戦うのを見てみたい気がする。
シャワーを浴びてさっぱりして、歯磨きなんてしていると、なんだかすっかり馴染んだ気がして、ここに居ていい気がして少し安心した。
アランさんが手招きするのでなんだろうと思っていたら、一瞬で髪が乾いた。
教えてほしいと頼んだけど、俺が乾かせなくなるからダメと言われた。ドン引きして引きつっていると、魔力の扱いは難しいからまた今度と言われた。最初からそう言ってほしい…。
ソファーに横になるとネックレスがシャラリと音を立てた。忘れてた忘れてた!私のレベルとジョブ確認!手をかざすと、
スギモトナオ......レベル5。そしてジョブは...ん?
拳、蹴、が消えて、キックボ...になっていた。
……多分パンチをしていないからだと思う。
よりかっこ悪くなってしまった気がして、ちょっとガッカリしたけど、今日手に入れた1スベインで、ジュードさんに借りたタオルを買いに行くことにした。お値段次第ではもう1枚ほしい...なんてことを考えていたら、いつの間にかぐっすり眠りに落ちていた。