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悩み事、絡まる

ナオはヒマでブラブラしていた。こういう時、なぜか冒険者ギルドに足を運ぶことが多い。雰囲気が好きなのもあるし、人がたくさんいる所が好きなのかもしれない。


今日もミレーに話しかけた。

「ミレーさん、こんにちは!」

「あら、ナオちゃん、こんにちは。だんだん元気になっていくみたいで、お姉さん嬉しいわ。」


今日はミレーさんのほうが元気がないように思えて、話してみると……。


「最近、レベル100ダンジョンの中の略奪の被害が本当に多いの。今日も被害者が出て……気の毒だったわ。ダンジョンボスを倒し終わったら、150人くらいに待ち伏せされていて、所持品を全部盗られたらしいの。

冒険者は基本自己責任だから、表立ってギルドからの依頼として出せないのよ。」


ミレーさんは本当に悔しそうだ。


「ええと、攻撃されたら捕まえることは出来ますか?盗まれたことはないのですが、攻撃されたことはあるので」


「もちろん出来るわ!うちのギルドだと罰則は厳しくて、他の冒険者に対するダンジョン内での攻撃は、冒険者ギルドから永久追放よ!どこの冒険者ギルドにも入れないわ。」


「無報酬なんですよね?」と聞くと、ミレーさんは悔しそうに唇を噛んだ。

「ちょっとパーティーメンバーに相談してみますね!」


家に帰るとアランさんがいたので、ミレーさんの悩み事を話してみた。「無報酬かぁ。」と悩んでいる。そこなんだよね。困り事がある人はギルドに依頼を出すけど、ギルドは出さないし、ミレーさんも出せない。


ギルド職員と冒険者の立場が崩れる。ようはバランスが崩れてしまうことを危惧している。



それともう一つ心配事があり、ギルドに出入りできなくなったレベル100の悪党がその辺をうろちょろすることである。



2人で唸っていると、だんだんメンバーが集まり、唸り出す人数が増える。

「いっそ、王様に直訴してみたら?」

「うーん。王様から逆に条件出されそうじゃない?断れなくなるし面倒だよ。」

「こっそり魔物のご飯にしちゃう?」「リシェル、やめなさい……」答えが出ないまま、それぞれ部屋に戻った。



マハトが前に言っていたこと、バキバキの背筋、Trident forceでいるからには怪我ひとつ負う訳にはいかない。自分で決めたこと。



クマのぬいぐるみを抱きしめて、考え込んでいたら、ドアをノックされた。返事をするとマハトがいたので、ほっぺたを両側に引っ張る。「ずいぶん伸びるね。あと夢じゃないから、リビング来て。」



不安なのでクマも連れて行った。

「ナオは疲れやすいよね。」頷く。「ナオは人より魔素を貯めておける器が小さいんだ。」首を傾げる。「……皆より小さいスープ皿みたいに。」すごく分かった。



「これ、ちょこちょこ作っておいたんだ。疲れやすい時に飲んでみて。」「魔力回復ポーションじゃダメなの?」「それを循環させるのが魔素なんだ。」「ありがとう。」クマの頭にあごを乗せる。


「正直、【賢人】マハトに相談してみたかったかも。」

「何を?」珍しく疑問形だ。

「私は悩み事を言葉にするのが苦手でさ。……ミレーさんの話、聞いてた?なかなかうまく物事が形通りにはまっていかないなって。それに、私はマハトみたいには…頑張れないし、とか……。マハトがいなきゃ、魔素の薬ももらえないし……。Trident forceにいると……。」

後は頭がぐちゃぐちゃになって、言葉にならなかった。



「ナオはミレーさんも、パーティーメンバーも、みんな大事なんだね。師匠も。王様も。それからバランスも?」黙って頷く。

「Trident forceはね、いつも一緒に行動してるのは、ナオが来てからだよ。それまでは居るのか居ないのか分からないような生活だった。」それはマハトなのでは……と思うが黙る。



「僕たちはナオをいい意味でも悪い意味でも甘やかしたかった。ナオは自信を無くしていると思う。この世界中に、二つ名は何人いると思う?」想像もつかない。

「20人くらいだよ。ひとつの国に、一人もいないこともある。」息を飲む。



「ナオは今言われてもしっくり来ないかもしれないけど、二つ名が一人居れば、一国を滅ぼすこともできる。」そんなこと、考えたこともなかった。



「二つ名は、強いんだ。1人でも生きていける。Trident forceにいるから、気づかないのかも。みんな強すぎるからね。……ちょっと息抜きにでも行く?」「どこに?」「僕の家。マハストラージェっていう国にある。父さんと母さんと弟、妹が住んでる。国はほとんどが砂漠で、食べ物も強烈だよ。」


「楽しそうだね。夢みたい。」

クマに頭を乗せて考えてみると、今のしがらみを作ったのは自分だったような気もする。



「私、皆が大事で好きなのに、時々縛られてる感じがするの。変だよね。」「変じゃない。」「行く?」「夢だよね?」「夢みたいなものじゃない?」


装備をつけて、マジックバッグを持って、魔法陣の上に立つと、私とマハトの姿は消えた。

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