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スタンピード!

「ナオ!起きて起きて!」

「ん~?リシェル、おはよう~。」

「スタンピードが来るよ!すぐ準備して!」

「えっ、スタンピードってなに!?」

「早く装備して!すぐ出るよ!スタンピードっていうのは、お肉祭りだよ!」

「お、お肉祭り?」


街の人たちは逃げ惑っていて、騎士団の人達が避難先へ誘導しているみたい。

初めて見る騎士団を珍しがっていると、「ナオ、こっち!」と手を引っ張られた。


「スタンピードっていうのは、大型のモンスターとか動物が混ざって街を破壊しに来る現象だよ!急いでね!」

「凄い騒ぎだね!」


「今に合図の魔法が上がるから、全力で倒してね!」

「みんなは?」

「とりあえず3人は東、西、南にいるよ。合図を見て合流する事になってるから!これ、一応魔力回復ポーション!」

受け取ってマジックバッグに入れる。


ボンッ!ひゅ~!

「西だ!行くよナオ!なるべく街から離れた所で倒すから、走って!」「人間も大パニックだね!」「あ、これ着て」


トライデントフォースのローブを羽織って西に向かうと、メンバーが揃っていた。「ナオ、おはよぉ!今日は全力でやっていいよ!でも毒はダメね。」「ナオおはよ。」「ナオおはよ~……。」アランさん、半分寝てるけど大丈夫かな。


「最前線まで行くよ!とにかくモンスターを街から離して!」

「リシェル!一応ナオも」マハトから魔力回復ポーションを大量にもらう。飲めるか分からないくらいの量。


「これで全部だから!」「了解ぃ!」「おい!トライデントフォースが来たぞ!開けろ!道を開けて少し下がれ!」


攻撃力アップの魔法がかかる。「やっていいの?」「やっちゃってー!」今更、軽くアキレス拳を伸ばし、グッと構えると、全身が青の炎に包まれる。「【蒼炎】だ!【蒼炎】のナオがいるぞ!」ワァーッと歓声が上がり、なんだか士気が上がったような気がする。


とりあえず吹っ飛ばした方がいいと思い、右ストレートを叩き込む。どこを狙ったらいいのかちょっと迷うくらいの数だ。

連続で打っていたら手前側が山になった。

「囲め!」アランさんの指示に従う。

右ストレートで吹っ飛ばすと、モンスターが他のモンスターに激突して、範囲魔法みたいだ。

とにかく打って打って打ちまくる。


そこが山になって行き止まりになったら、また少しズレて打って打って打ちまくる。これを繰り返していたら、だいぶ固まってきた。


マハトの範囲攻撃が凄まじく、はみ出さないように撃っていて、無駄がない。


だいぶ勢いが削げたかなと思っていると、南から合図の魔法が上がった。

ボンッ!ひゅ~

「俺とジュード以外は全員南!……ナオ足が早いなあ~……」


南に着くと「トライデントフォースだ!開けろ!少し下がれ!」と攻撃しやすい所を作ってくれる。

「ありがとう~!」右ストレートの連打でモンスターが吹っ飛んでいく。また壁みたいに積み上がったので少しずれて、再び打ちまくる。


壁にたまったモンスターをマハトが範囲攻撃で倒す。

リシェルの強化魔法が、切れるギリギリのタイミングで飛んでくる。


アランとジュードが、「西は落ち着いてきたから他の冒険者に任せてきた」とダッシュで来たのを見て、リシェルが魔力回復ポーションを一気飲みした。



右ストレートが一番威力が強いので、連打しているけど、範囲攻撃も欲しいなあ~と思っていると、隣で攻撃していたジュードが「範囲攻撃ほしいわ……」と呟いていた。たしかに、スカウトとアサシンは厳しいのかな……と思いながら壁を作る。



少しずつ前に出て、右ストレートを飛ばしていると、東から魔法が上がる。うそお!?

「俺とジュード以外」「もう行ったよ」「……。」



東の最前線に出て、右ストレートを打ちまくっていたけど、流石に腕が疲れてきて、利き足の右ミドルキックに変えると、一気に効率が上がった。

蹴りの方が範囲が広いんだった。そういえば!


連続で蹴って積み上げていく。前が見えなくなったらズレる。

壁付近に溜まったモンスターをマハトが倒す。マハトがポーションを一気飲みしている後ろで、リシェルも飲んでいる。



右ミドル使えるな~と思っていたら、北から合図が上がり、全力で走る。

また右ミドルを連発していると、壁ができるけど、足が疲れたので、スイッチなしの左ミドルを連発する。

「これ、いつまで続くの?」「多分、1日か2日くらいかな?」


「マハトの黒魔術の範囲攻撃、強いね~」「あれは一気にだからね~。でも魔力はかなり消費すると思うよ!ナオ!あれ見て!」「東に向かってるね!先行する!」


あっちに行ってはミドル、こっちに行っては右ストレートと、モンスターの数と勢いに応じて移動していたら、安定してきた。

「ナオ!」投げられたサンドイッチをキャッチし、片手で食べながら右ストレート。つ、詰まる……。同じくもらった水をちびちび飲んで、右ストレートを繰り返すが、脇腹が痛い。


「だいぶ減ったね。アラン!残りはどこに向かってるのかな!隣の街に行かないように全滅させたいんだけど」


「とりあえず全部この街に来てるから今のところは大丈夫!」

「負傷者は?」「リシェルが強化と防御かけてるから今のところ報告なし!」



右ストレート、疲れたら右ミドル、疲れたら左ミドル、疲れたら右ストレート。

1回コンビネーションをやってみたら体力消耗が激しかったので単発に切り替えた。


「他の冒険者は休憩取れてる?」「ちょっと無理してるみたいだけど大丈夫。自己責任。」「アラン冷たーい。」「リシェル!攻撃力あげてくれ!……助かる~!」


「おりゃあ!」

ドゴオオオ……

「アランのも、あれは範囲攻撃と呼んでいいと思う。」


ふと見ると、大きな荷台がやってきて、散らばったモンスターを回収していく。

ジャブを連打しながら「アレなに?」と聞いたら、「商業ギルドだね~。肉と素材を切り分けて、食べれない肉は処分するみたい。」


「街総出なんだね~。」「そう!だから肉祭り!報酬は街全体で山分けだからね!」左ミドルに切り替えつつ、「素材ってなんの?」と聞くと、「色々だよー!マハトも薬師だからかなり貰えるんじゃないかな。肉か素材かお金で選べるから!ナオ!私、防御かけに回ってくるね!」「リシェル、がんばって~!」

手前側はほとんど倒したので、モンスターの壁を乗り越えて、さらに奥を攻撃する。

右ストレートを連発して、右ミドルを連発して、左ミドルをスイッチ無しで連発、魔力回復ポーションを飲んで、ジャブを連打する。


だいぶ少なくなったので、北に回ると師匠がいた。「師匠!こんにちは~」「なにがこんにちはじゃ。早く打てぃ!いつもわしとスパーリングする力の半分もでてないんじゃないか?」「そうですか?」右ストレート!遠くでドオオオン……という音がして群れが吹っ飛ぶ。

「……いつもと同じくらいじゃな。」「そうですよ。魔力回復ポーション要ります?」「軟弱な……いらんわい!リシェル嬢に渡せ!」「あれ?お知り合い?」「せがれの友達じゃ!」「そうなんですか!」

右ミドルを連発していると集中力が切れてきて「飽きてきてしんどいです」とこぼすと「苦手なフック練習したらどうじゃ?」と言われ、左フックに変えたら右に向かって飛んでいった。「危ないのでやめます。」「……そうじゃな」

「集中力が切れてきたので寝てきます!」

そう言って冒険者ギルドに駆け込んだ。


「ミレーさん!」

「あらナオちゃん!大活躍ね!」

「少しだけ寝させてもらっていいですか?」

「ゆっくり休んでね。」


見ると交代した冒険者たちが寝袋で寝ている。

マジックバッグから寝袋を取り出して横になると、すぐに眠れた。


起きて、急いでギルドを出ると、だいぶ街の人も落ち着いてきた様子が伺える。

ダッシュで東に行くと、もうほとんど終わっていた。

「マハト!ちょっと昼寝してきた!」「もう終わるよ。」「もう!?」「二つ名持ちが何人いると思ってるの。余裕でしょ。ジュードは商業ギルドの手伝いに行ってる。」「私も手伝いに行こうかな。」「ナオは攻撃ね。」「攻撃飽きた……。」


寝て回復したのか、右ストレートが絶好調で、群れが吹っ飛ぶ。「……じゃあ僕も休憩してくる。」「リシェルは?」「リシェルも休んでるよ。」「マハトお疲れさま~!」


マハトと交代したのでパンチを撃ちまくるが、モンスターはパラパラとしか居なくて、ジャブに切り替えた。東はゼロになったので、南に行き、やはり数が少ないモンスターを倒し、西、北、と回って、掃討した。


あとは商業ギルドの手伝いで、荷車にモンスターを乗せていく。また来たら乗せていく。を繰り返して、1匹も居なくなったのを確認したら、場所を変えて、また荷車に乗せていく。

昼寝しておいて良かった。余裕余裕。


宵闇に包まれて、街に明かりが灯る頃には、全てのモンスターを回収した。



街に戻ると、あちこちからモンスターを解体する音が聞こえ、大変そうだなぁと覗き込んでみると、凄い勢いで捌いていて、こっちにはこっちの戦いがあるんだな…と思った。

夜通し続きそうだ。


家に帰ると、みんな寝ているみたいだった。

疲れすぎて食欲もないので、シャワーを浴びて寝ようとしたらマハトがいた。

「お疲れ~」「お疲れ」「大変だったねー。」「ナオが体力無さすぎ。」

着替え始めたのでぼんやりと見ていると、マハトの背筋がバキバキに割れていた。

「マハト、ムキムキだね!細マッチョ!」「細マッチョって何」「見た目は細いのにマッチョなこと。」と言うと、


「黒魔術師と薬師だから筋肉無いと思ったわけ?」「そうだけど。」

「基本的に魔法使う奴はある程度は鍛えてると思うよ。魔力回復ポーションが枯渇したら逃げ切れるくらいの体力はつけてるし、最悪戦闘になったらだるいけど倒すしかない。Trident forceの一員である以上はケガさえ許されない。」


ん?と思い、「誰が許さないの?」と聞いたら「自分に決まってるだろ。」と言われた。


シャワーも浴びたし歯磨きもしたし……クマを抱えて寝転んで、マハトの言っている意味について考えようとしたけど、あっという間に寝てしまった。


朝、商業ギルドの人が目の下にクマを作りながら「これ、5人分の素材です。チェックお願いします 」と言われたのでチェックを入れて受け取る。

全員、素材を選んだみたいで、マハトにもらったポーションの代わりに素材を……と思ったみたい。なかなかグロテスクなのでなるべく直視しないようにしてみんなを呼ぶと、やっぱり同じことを考えていた。


マハトに渡すと、うんざりした顔をして「これ、ポーションまた作れってこと?」とため息をついていて、ちょっと申し訳なかった。スタンピードの時にもらったポーションを返そうとしたら「持っておけ。」とドアを閉められた。


なんか、マハトは前よりたくさん話してくれるようになったよね。


そんなことを思いながら部屋に戻り、さっさと昼寝したナオだった。

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