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お金の扱い方について!

5000万円。

ナオはデスクの上で腕を組みながら無意識に唸っていた。

1万スベインで1金貨、5万スベインで5金貨……。

そして、何度計算しても、5万スベインは5000万円になるのである。

今回行ったダンジョンが、報酬が多いのは知っていたけど、1回の踏破で5000万円!!


「うう~……。」

みんなが全く報酬を受け取らない理由も、うっすら分かってきた。おそらく有り余っているのだろうし、持て余しているのだろう。


「クマさん困ったよお~」とぬいぐるみを抱いてベッドで無意味に転がってから、むっくり起き上がる。聞いてみよう。アランさんに。


「アランさんいますかー!!」

「はいはい」

「突然すみません、お聞きしたいことがあるのですが……。」

リビングに移動して、ナオがちょっと前まで寝床にしていたソファーに座る。アランさんは向かい側に座る。


ナオの珍しく深刻そうな様子になんだろうとは思うが……。

ナオは重々しい口調で言った。

「あの、アランさん、ダンジョンを踏破した後、5万スベインを頂いたのですが……。報酬が多すぎて使いどころがなく、困っています……。」

アランは思わずニヤニヤしてしまった。この間まで3ラス生活をしていたナオが、5金貨の扱いに困るようになっている。


「このお金って寄付とかできますか?良い寄付先があれば教えてください!」

「俺に相談したのは正解だったかもしれないね。簡単にあちこちに寄付するのは危険だし、かといって財産として持つには多すぎる。そういうことで合ってる?」


ナオは頷く。


国に寄付もなにか巻き込まれそうで怖いし面倒で、教会(多分あるに違いない)に寄付もなにか巻き込まれそうで怖い。政治的なパワーバランスが崩れそう。

貧民街に配ったら単純に殺されそうで怖い。


こんなことを話したら「結構詳しいんだね。」と言われた。

「そうなんだよね。だから簡単に寄付もできないし、パーティの皆も渋々持っている感じだよ。」

今なら分かる、マハトさんの感覚。使える所があればさっさと使って経済を回してしまいたい感じ。分かる、分かる。


アランさんは「これは結局、上位の冒険者の共通の悩みじゃないかな。」


ナオは言う。「例えば、騎士団の騎士が怪我で引退したとしたら、家族にも生活費が支給されますよね、騎士が存命中は。」

これは、ナオのハッタリの一種で、日本の制度だとこんな感じだよね的に、全然知らないことを適当に話している。

そもそも騎士団があるのかさえ知らないナオである。



「あるねぇ。」と言われたので「あるんですか!」と逆に驚く。


「……それでおそらく、冒険者ギルドにもそういう制度はあるけど、金額が少ないとか、そういうことって……。」


「あるねぇ。」よっしゃ。心の中で拳を握る。



「騎士団は国の面子もありますし、無理だと思いますが、冒険者ギルドだと、どうですか?募金できる隙間はありませんか?」


「うーん。」ドキドキ待つが答えが返ってこない。


かなり時間を置いて「難しいねぇ。」と言われた。や、やっぱり?


「まず前提として、冒険者は怪我でもなんでも全て、自己責任なんだ。次に、冒険者ギルドは各地にある。全部にはさすがに行き届かないだろうし、継続できないだろう。」


ガッカリ……。


「多分だけど、ナオはお金とか言うよりも、誰かの何かの役に立ちたいんじゃない?俺はそう感じる。でもそれは、凄く難しいことだよ。特にお金が絡むとね。」


図星すぎる……。



「アランさん、今回ドロップしたアイテムの中で、使わないものがあったら売ってもいいんですか?そしたら他の冒険者さんが使えますか?」


「構わないよ。ドロップ品はみんなの手元に分配した時点でみんなの物だ。……色々試してみな。」


「アランさん、ありがとうございます!」



あの後、マハトさんの所に行って、売っても大丈夫そうなドロップ品を鑑定して貰った。

「これは……売っちゃまずいかも。売れなかったら店が潰れる」買取高価すぎなのか……。


「これは……伝説級アイテムだからナオ以外は使えない。」

なんじゃそりゃ……。


「……コレならいいんじゃない。格闘家の服。」

「格闘家の服……」


「ありがとうございます。行ってきます!」

「行ってらっしゃい……」

なんとなくナオの考えていることが分かる気がするマハトだった。


「すいませーん!」「はいよ、いらっしゃい。」「この服、売れますか?」「手に取っていいかい?この服は……売れるね。しかし相当品質が良いものだね。どこで手に入れたんだい?」「レベル100ダンジョンです」「レベル100ダンジョン!?」

「つかぬ事をお聞きしますが、この服を売って、買い取ってもらって、他の必要とするお客さんに売ることで、店主さんには利益がたくさん出ますか?」


なんとなくナオも分かっているし、店主さんも分かっている。


「それはもちろん、私の店は儲かるね。ただ、お嬢さんが毎回この品質のものを売りに来るとうちの店だけが儲かって……」ナオが続きを言う。「バランスが崩れちゃうんですね……。」「そう!」


「片寄らないように、色んなお店に売りに行くのが1番じゃないかな!」 「アドバイス痛み入ります……。」


ナオは格闘家の服とやらを売って、トボトボ帰宅した。

アランがリビングで紅茶を飲んで見ていると、ナオの部屋から「バランスー!」というくぐもった叫びが聞こえてきて吹きそうになった。


「上位冒険者は誰もが一度は行き当たる壁なんだよね……。」と独り言を呟いて、紅茶に口をつけるアランさんなのであった。

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