新しい朝
目が覚めた時に一番最初にクマのぬいぐるみが見えた。
ナオはクマを抱えたままベッドをゴロゴロ転がった。
起き上がって、クマを抱いたまま、クロゼットを開けてみる。
みんなにもらった服と、買ってもらった装備が入っている。
サイドテーブルを開けたり閉めたり。
再びクマを抱えて可愛いデスクに座る。
たくさんの引き出しを順番に開けて、閉めた。
またしてもベッドにうつ伏せに飛び込んで足をバタバタ。
「ん~!!」バタバタバタバタ!!
仰向けに寝転んで、クマを抱いて「幸せ……。」と呟いた。
着替えて部屋を出たら、「あら、おはよう」とリシェルさんがニヤニヤしている。なんだろうと思っていると、「ジュードー!ナオのご飯は2人分みたい。」
こっちを仰け反りながら見たジュードさんも、「ブッ!クックックッ……」と顔を赤くしながら笑いをこらえている。
あ!!ぬいぐるみ!持ってきちゃった!
ダッシュで部屋に置きに行く後ろから笑い声が聞こえてくる。
顔を赤くして軽めの朝ごはんを頂く。
そんなに笑うことないじゃん……。
「おはよ」「う~……。」
マハトさんとアランさんも起きてきて、アランさんは半分寝ながら朝食を食べている。……なんていうか、器用だな……。
「皆さん今日のご予定は~?私は……ヒマよ!」
「俺は筋トレと~……ヒマ……。強いていえばねむい……。」
「僕も特に……薬の予備をそろそろ……まぁヒマ」
「俺は洗い物したらヒマ。」
「ナオもヒマ?そうかそうか~」リシェルさんに髪をくしゃくしゃにされる。まだなんにも言ってないような……。
「せっかくナオもレベル100になったんだし、レベルに合ったダンジョン行ってみたくない?」
「お!あのヤバいとこ!?」アランさんは急に目が覚めたようだ。
「やばいとこやばいとこ。」リシェルさんがニヤニヤしてる。
「ナオのかっこいい姿、見たくない?」
「僕、ナオの装備買ってくる」
「俺は洗い物してから……うーん、スカウトとアサシン、どっち重視?」
「ナオが攻撃してくれるからスカウトじゃない?」
「そうだな。攻撃の要はマハトとナオになるな!」
「ボケーッとしてると命を落とすから気をつけろよ!ナオ!」
……え。
怖い!!怖いんだけどー!!なんで皆楽しそうなんだろう。
「ポーションとー、毒消し、麻痺直し、あとなんだっけ。」
「ん?スタン?」
「スタンいらなくない?」「なら聞くな!」
「泊まりになると思う?」
「可能性はゼロじゃないな~。備えあれば憂いなしってね!」
「誰か100ダンジョンのマップ持ってる?」
「俺あるわ」
「頼んだわよ、ジュード!あら、思い出したわ。魔力ポーションと、万が一の為に、美味しい魔素の薬~。」
「転移魔法陣は?」「書く書く」
「防炎、防氷……」「そこはリシェルさんがやってくれないとねぇ。」
「ただいま。ナオの装備これしか無かった。着て。」
「マハトさ…………居ない。」
部屋に戻って着替える。
ずいぶんギッチリと防御を固められている感じの装備だ。
屈伸したり、ハイキックをしてみても動きの邪魔にならない。
鏡を見たら、女の子~みたいな可愛い装備だった。
これ、もう、おしゃれ服でいいんじゃない!?
トップスは身体にフィットするキレイめTシャツにしか見えないし、軽く羽織る白レースの……Tシャツの上に着るやつ。詳しくないから聞かないで!
ふわふわのスカートの下にパステルピンクのショートタイツ。
足に自動でフィットする編み上げブーツ。
キラキラのネックレスに、
ダンジョンドロップ品のオープンフィンガーのゴツいグローブ。
せっかくだから軽くメイクもして……って違ーう!
今から凄いダンジョンに行くんだからしっかりしないと!
「……しっかりしないとお……」クマを抱きしめてベッドで転がってたら「ナオ、準備出来……ブッ!くっくっくっ……。」と閉められた。
ノックしてよ!
髪を結び、部屋を出ると「お~!可愛い~!」と褒められた。
「毎日これ着ます!」と言ったらマハトさんが遠い目をして「今度私服は僕と買いに行こう……」と言った。
「書いた?」「できた!」
「では、アラン、ジュード、マハト、リシェル、ナオ、レベル100ダンジョンに行きます!」「おー。」
魔法陣の上に乗ると、私たちの姿はシュンッと消えた。