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五話 禍獣対策委員会


 五話 禍獣対策委員会



 センタービルへ向かうに当たり、歩いて行くという銃鬼、裂姫に対し、拳勝はバイクを使うことを提案する。


「ばいく…… なんなの? 」


 この世界で今一番の機動力を誇る乗り物だと拳勝は説明し、自分のバイクを持ってきて二人に見せた。そして、バイクを初めて見たという二人に驚きながら乗り方も教える。すると、銃鬼、裂姫共に一回教えただけで、すぐにバイクを乗りこなした。


「これ 気持ちいいの 」


 特に裂姫はバイクを気に入ったようで、白いスコートをひらつかせながら、ウイリーしたりドリフトしたりバイクを手足のように操っていた。紅葉もバイクを乗りこなすが、裂姫は一度レクチャーを受けただけで紅葉以上にバイクを乗りこなしている。

 この二人は何者なんだ、拳勝と紅葉は驚きで言葉が出なかった。


「ケンショウ これ最高なの 」


 それまで無愛想だった裂姫が初めて拳勝に笑いかける。


「良かったな、拳勝 」


 銃鬼が拳勝の肩をポンと叩く。拳勝も裂姫に微笑まれ思わず顔が緩んでいた。禍対委からもう一台バイクを用意する必要がある為、センタービルへの出発は明朝という事に決め、銃鬼と裂姫はこのコンテナに泊まることになった。拳勝と紅葉はバイクでタンデムし禍対委の支部へと向かう。


「あの二人、バーボン飲んだりしないだろうな 」


「馬鹿ね あなたとは違うの 」


 紅葉はあの二人を信用しているようだった。そういう拳勝も、深淵を潰すと言った二人の言葉を信じられる気がしていた。


 禍対委に着いた二人はバイクの貸し出し手続きを済ませ、バイクを受け取りに行く。その途中、弓削剣市(ゆげけんいち)が声を掛けてきた。拳勝の禍対委の同僚だった。長髪に細面の顔、グレーのスーツに背中にカタナを背負っている。


「拳勝、こんな時間にどうした 紅葉ちゃん、久しぶり 」


 気安く声を掛けてきた剣市だったが、紅葉の姿を見て身体が固まる。


「紅葉ちゃん それまさか拳勝に乱暴されたのか 」


 紅葉の切り裂かれたスカートを指差して剣市が騒ぎ出す。切られたスカートの裂け目から、黒いストッキングに包まれた太ももが露わに見えていた。


「馬鹿っ 違うっ 大きな声を出すなっ 」


 拳勝は慌てて否定するが、紅葉は俯いて震えている。


「貴様っ 成敗するっ 」


 剣市が、背中のカタナを抜き拳勝に向かって構える。


「やめろっ 剣市っ 」


 拳勝も拳を上げて構えると、そこでもう我慢出来ないというように紅葉が大声で笑い出した。

 紅葉が説明して、ようやく誤解が解けた拳勝だったが、僕を疑うなんておかしいだろと納得がいかない顔をしていた。


「それより剣市さんもこんな遅くまでどうしたんですか? 」


 紅葉の言葉に剣市は顔を曇らせて。


「元S駅の前の住宅街で戦闘があったんだ ガーゴイルが数十体現れて住人を襲い始めた 早速、禍対委に出動要請があったんで安倍さんたちが救援に向かったんだけど…… 」


 剣市は言葉を切るとさらに沈んだ顔になる。


「結構な数の犠牲者が出たんだ 俺も連絡を受けて駆けつけたんだけど…… 奴ら、こちらの銃をつかう人間を集中して狙ってきたんだ。何体かで体を掴むと空中高く連れ去ってさ、そこから手を離して落としやがるんた 酷いことしやがる それで鈴木のおっちゃんや吉野さんも潰れて死んだ…… 」


 剣市は悔しそうに拳を握る。


「奴らもずっと飛べるわけじゃないからな、降りたところを狙ってなんとか撃退したけど犠牲が大きすぎた…… 」


 拳勝がスマートフォンを見ると着信が入っていた。


「すまん 僕にも連絡がきていた 」


 拳勝が言うと、剣市は顔の前で手を振る。


「ああ 気にする事はないさ 今回は銃を使える者中心に召集されたからな 俺やお前は予備軍みたいなもんだ それにお前はファーヴニルと戦ってたんだろ あれを三体相手にして勝つなんて見直したよ 」


 拳勝と紅葉は、素性が分かるまでは銃鬼と裂姫の事は秘密にしておこうと決めていたので禍対委にも報告していなかった。いや僕はと言いそうになり拳勝は口を噤んだ。


 剣市と別れた後、禍対委でバイクを受け取った拳勝たちは二台のバイクで走り出し、途中で洋品店に寄る。紅葉のスカートを購入する為だった。結局、紅葉は同じタイトスカートを購入する。もっと動きやすい服にすればいいだろうと言う拳勝に対し紅葉は言う。


「この服装は私のアイデンティティだから、簡単に変えられないわよ 」


 今度、スカートを切り裂いてももう知らんぞ、拳勝は心の中で思った。


 その後、食料品等も購入し二台のバイクはコンテナに向かう。二人がコンテナの扉を開けると、銃鬼はコンテナの隅で壁を背に座り眠っていた。裂姫はコンテナの中央で大の字になり悠々と眠っている。

 二人は顔を見合わせ微笑む。まったく、銃鬼と裂姫、二人の性格を表しているようで笑いたくなった。


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