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四話 次なる目標


 四話 次なる目標



 禍獣を撃退した拳勝たちは紅葉に付いてコンテナの中にいた。


「あなたたちには助けられました お礼にこれをどうぞ 」


 そう言うと紅葉は銃鬼にバーボンのボトルを一本差し出した。


「おい、紅葉 僕にはトリプル一杯で、この人達にはボトル一本なのか 」


 拳勝が不満を漏らすが、紅葉は当然でしょという顔をする。


「結局ファーヴニルを倒したのは裂姫ちゃんじゃない 何偉そうな事を言ってるの 」


 拳勝は何も言えず脹れる。それを見た銃鬼がバーボンのボトルを見ながら言う。


「これはそんなにいい物なのか 」


 紅葉は少し驚いた顔で、今この世界でお酒は大変貴重品で高値で売買されているし何よりその味は絶品だと説明した。


「なるほど それなら拳勝 一緒に楽しむか 」


 銃鬼の言葉に拳勝は涙を流さんばかりに喜び、銃鬼さん一生付いていきますと媚を売る。紅葉は、ほんとこの男、馬鹿だわと呆れた。


「これ美味しいの 」


「おお いけるな 」


 コンテナの中でさっそく酒盛りを始めた一同はすっかりいい気持ちになっていた。銃鬼と裂姫もバーボンを気に入ったようでハイペースで飲んでいる。


「ねえ裂姫ちゃん もう一本のカタナはどういうカタナなの? 」


 紅葉が酔った勢いで裂姫に絡んでいる。


「こっちは灼熱ブレード”向日葵”っていうの 相手によって使い分けるんだよ 」


「凄いじゃないか もう無敵だな 」


 すでに酔っ払っていい気持ちになっている拳勝が言うと、裂姫は別に面白くないという顔をした。


「わははっ拳勝 お前、もてないだろう 」


 裂姫に相手にされない拳勝を見て銃鬼が大笑いする。


「あの 銃鬼さんと裂姫さんてどういう関係なんですか? 」


 拳勝は脹れ面しながら話題を変えようとする。親子じゃないですよね、顔が似てないし、まさか恋人、と紅葉も興味津々で是非聞きたいという顔をした。


「俺と裂姫は兄妹だ 」


 銃鬼の言葉に二人は仰天する。いやいやそれは違うでしょと拳勝と紅葉は顔を見合わせた。しかし、銃鬼は大真面目な顔で、裂姫も私達兄妹なんだよと言う。


「分かった お父さんかお母さんが違うのね 」


 紅葉が、それしかないと断言する。銃鬼は、まあそんなもんだと言い、裂姫も、そうなのと気の無い返事をした。


「それより この近辺で禍獣が湧いてくる深淵を知らないか? 」


 銃鬼がバーボンを飲みながら、拳勝と紅葉に尋ねる。


「それなら、元センタービルに禍獣の反応が多く確認されています。おそらくビルの地下に深淵が口を開けているのではという情報がありますよ でも、どうして? 」


 拳勝もバーボンを飲みながら逆に尋ねる。


「もちろん、潰しに行く 歩いてどのくらいだ? 」


「潰しにいくって、そんなの不可能ですよ 禍獣の数もそうですが、まだ深淵には地上に出て来ていない強大な禍獣も居るんですよ 」


 拳勝は信じられないという顔で銃鬼と裂姫を見つめる。胡坐をかいていた紅葉も、えっと驚いて正座した。


「何を驚く それが俺たちの使命だ 」


「禍対委では見かけませんが、他の何かそういう組織にでも入っているんですか? 」


「ううん 私たちは二人だよ 」


 裂姫があっけらかんと言う。拳勝が、いくらお二人が強くても危険すぎると止めようとするが銃鬼と裂姫は近所に買い物に行くような気軽さで地図を広げ場所を訊いて来た。

 拳勝は仕方なくセンタービルの場所を教えたが、それなら自分も行くと言い始めた。そして、紅葉の方を向くと君も行くだろと同意を求めた。


「ちょっ なんで私がっ 」


 紅葉は大袈裟に手を振って拒否の意思を示すが、拳勝は顔の前で指を振り、ニヤッと笑う。


「元センタービルの一階から三階はショッピングモールだった お酒の他にもお宝が眠っていると思うぞ 」


「えっ 」


 紅葉は頭の中で素早く計算する。今、この世界で安全な場所など無い。何処にいても突然禍獣に襲われ命を落とす。だが金があれば一部の富裕層が避難している安全なエリアに入る事が出来る。そこは、この世界とは隔離された別世界。その別世界の住人になれば、命の心配もすること無く暮らしていける。


「分かった 私も行く 」


 お宝だけ確保して逃げればいい、紅葉は心の中でニヤッと笑う。拳勝はそんな紅葉を見て微笑んだ。もちろん、拳勝は紅葉を逃がすつもりだった。自分一人では、禍獣の巣窟と化しているセンタービルなど攻略できないが、銃鬼と裂姫が居る。この二人を利用して紅葉にお宝を手に入れさせる。


 こんな時代だ。せめて紅葉には安全な場所で幸せに暮らして欲しかった。


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