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三十一話 発覚


 三十一話 発覚



 紅葉が興味津々という顔で千里に、何々剣市がどうしたのと聞いてくる。拳勝は慌てて紅葉にバーボンを勧めた。


「おい、紅葉 飲んでるか? このターキーの30年ものは絶品だぞ 」


 酔ったふりして紅葉に絡む拳勝だが、紅葉はあっさりとかわし千里の手を引き、ここは酔っぱらいがいるからアッチで飲もうと連れ出して行く。それも、裂姫の近くに行こうするので拳勝も、どこ行くんだよと後を着いて止めようとするが、それは徒労に終わってしまった。


「ほら、紅葉と千里も飲むの 」


 裂姫が良い調子で紅葉にバーボンを勧めてくる。拳勝は心の中でやったと思っていた。このまま裂姫が紅葉と千里に酒を飲ませて潰してしまえば、余計な話を聞かれないで済む。


・・・いけっ裂姫ちゃん 早く紅葉と横山くんをべろべろにしてしまえ ・・・


 拳勝は期待して様子を見ていたが、紅葉と千里は想像以上に酒に強いようであった。もう、かなり酔っていると思えるのに、そこから潰れることがなくお喋りに熱中している。


「私はぁ、剣市さんがぁ、許せませんっ!! 」


 酔っ払った千里がグラスを手に立ち上がり大声で叫ぶ。


「えっ、千里ちゃん 剣市に何かされたの? 」


 紅葉が目を丸くして言うが、拳勝が二人の間に入る。


「横山くん、酔い過ぎたみたいだから、もう横になった方が良いよ 」


 拳勝がなんとか千里を連れ出そうとするが、紅葉から止められる。


「ちょっと拳勝 あんたも千里ちゃんに何かする気じゃないでしょうね 」


「何言ってんだ紅葉 僕も剣市も何もしていないよ 」


「ケンショウは、モミジより若いチサトが好きなんじゃないの 」


 裂姫がバカ笑いしながら紅葉の背中をバンバンと叩く。拳勝を見る紅葉の目がつり上がっていた。


「私もぉ、先輩がぁ好きですぅ 」


 千里が追い討ちをかけるように叫び、拳勝に唇を近付けてくる。周りの人間が目を皿のようにして、その様子を見ていた。ただ一人、紅葉を除いて……。


・・・これは別の意味で、とても不味い状況だ ・・・


 拳勝は近付いてくる千里を無理矢理離すと一喝する。


「何を言っているんだ、横山くん 君は酔っているだろう 僕と君は禍獣を倒す仲間だろう 横山くん、しっかりするんだ 負けてはいけない 」


 何を言っているのか分からない拳勝だったが、何故か酔っぱらいの千里には通じたようだった。


「先輩、ごめんらさい でもぉ、私ぃ、剣市さんがぁ、もお許せないんですぅ 」


 千里は泣き出していた。ここで紅葉が千里を抱き寄せると優しく優しく肩を抱いた。


「もう、何されたのか言っちゃいなさい千里ちゃん 千里ちゃんをこんなに泣かせるなんて私が懲らしめてあげるから 」


 千里は紅葉の胸で泣きながら、これまでに知っている剣市の噂をした。それを聞いて紅葉も衝撃を受けていた。


「拳勝、千里ちゃんの話、本当なの 」


「ああ……、戦いに犠牲が出るのは仕方がないよ 僕たちも精一杯頑張っているけど、上手くいかないこともあるからさ 」


「そんな事は分かっている そうじゃない 剣市さんが人の命より禍獣を倒す事を優先しているって事よ 」


「いや、剣市だって人の命を守る為に戦っているけど、多くの命を守るためには犠牲になる命も出てきてしまったんだよ 全員を救う事は難しいのは紅葉も分かっているだろう 」


「話をすり替えないで拳勝 剣市さんは人の命より禍獣を倒す事を優先しているのね あなたたちは人の命を守る為に戦っているんでしょう それが、どうして禍獣と一緒に人質の人も斬るのよ 拳勝、あなたも同じことするの 」


「馬鹿な、僕がそんな事するわけない 」


「そうだよね 拳勝はそんな事はしない だったら何で剣市さんはそんな事するの 私も、そんな事する剣市さんは許せないよ 」


 紅葉も千里の話で激昂していた。無理もない、拳勝だって同じ気持ちだった。だけど、剣市の気持ちも分からなくはない。少しでも早く禍獣を倒して平和な世の中にしたい。しかし、こんな事を続けていたら誰も禍対委を信用しなくなる。そうなれば人類は自滅していくだろう。拳勝も、早く剣市に目を覚まして欲しかった。


「ケンショウ、ケンイチは何処にいるの 」


 それまで黙って話を聞いていた裂姫が拳勝に尋ねる。拳勝は本部に確認しないと分からないと答えると、すぐ確認するのと怒られた。


「N市のT町に禍獣討伐に行っているそうだ 」


 拳勝が本部に確認して裂姫に答える。


・・・N市はここから遠い すぐに僕が出発して剣市に行動を改めるように伝える 裂姫ちゃんより先に剣市に会わないと ・・・


 拳勝が思案を巡らせていると裂姫は、ダンタリオンと大声で呼ぶ。


「は、はい、裂姫タン 何でしょうか 」


 義手に義足のダンタリオンがやって来ると裂姫は自分が上司のように命令する。


「私と銃鬼をN市まで送るの 」


「はい、すぐに 」


 ダンタリオンは空間を操作してN市へと直通の通路を創る。


「ちょっと待ってくれ、僕も行く 」


「私も行くわ 」


「ふむ、面白そうなので私も行くとしますか 」


 裂姫と銃鬼に続いて拳勝、紅葉、フールフールが空間の裂け目に入っていった。


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