二十七話 激闘リヴァイアタン
二十七話 激闘リヴァイアタン
リヴァイアタンの起こす海中の技”スパイラル”に巻き込まれた裂姫は、海の藻屑と消えたかに見えたが海中の視界が戻ってくるとリヴァイアタンは信じられぬと表情を硬くする。
「私のスパイラルを受けて無事とはどういう事だ? 」
リヴァイアタンの前に”向日葵”を構えた裂姫の姿があった。
「今度はこっちの番なの 」
裂姫が海中でリヴァイアタンに斬りかかるが、さすがに海中の動きでは海の悪魔であるリヴァイアタンに勝るものはなかった。裂姫の攻撃は悉くかわされていく。
「さすがなの 」
裂姫も一旦攻撃を止め作戦を考える。裂姫の動きもけして遅いものではなかったが、海中のリヴァイアタンには及ばない。その間にリヴァイアタンは力を溜め、両腕と尾で3重の渦巻きを起こす。
「トリプルスパイラル 」
この攻撃を海中で受けて無事な者はいない。リヴァイアタンは勝利を確信した。
「うーむ、餌にしようと思ったが粉々にしてしまったか 」
リヴァイアタンが残念そうに呟いた時、渦の中から何かが飛び出しリヴァイアタンの眼前に迫る。それは倒したと思った裂姫だった。裂姫の背中から白い翼が生え高速に海中を進み、ついにリヴァイアタンを捉えた。大技を発動し一瞬の隙が出来たリヴァイアタンを狙った裂姫の作戦だったが、それもリヴァイアタンの攻撃に耐えられるという自信があったからこそだった。
「馬鹿な 」
リヴァイアタンは身をかわそうとするが、それはもう間に合わなかった。裂姫の”向日葵”がリヴァイアタンの顔面に炸裂する。
ズバァ!!
海中でも”向日葵”の能力は発動し炎が軌跡を描く。リヴァイアタンは”向日葵”で斬り裂かれ焼き焦がれたかに見えたが、炎に包まれたのは裂姫だった。裂姫は咄嗟に体を回転させ炎を消火する。リヴァイアタンは不敵に笑っていた。
「私は七つの大罪の悪魔の一人、嫉妬のリヴァイアタン 貴様ごときが相手になると思ったのか? 」
裂姫は空を飛ぶように海中を翼で高速に動き、リヴァイアタンに再び斬撃を浴びせる。しかし、炎に包まれたのはまたも裂姫だった。
「クッ 」
裂姫はまた高速に海中で体を回転させ消火する。
「ククク 何が起こったか分からないようだな 私の受けたダメージは、全てダメージを与えたものに還るのだ 私にダメージを与えられる者は存在しないのだよ 」
リヴァイアタンは勝ち誇ったように裂姫を睨み付ける。
「ははっ 何言ってるの そんなよく三流の悪者が自慢する能力で威張られても苦笑しかでないの 少なくてもあなたに簡単に勝てる人が上の船に乗っているの それにあなたはルシファーやサタンには遠く及ばない三流の悪魔なの 」
裂姫の小馬鹿にした言動にリヴァイアタンは激怒する。
「図星を言われて怒ったの? 」
さらに裂姫は追い討ちをかけてリヴァイアタンを馬鹿にする。
「貴様、魂までも消滅させてやる ルシファーだろうがサタンだろうが海中で私に勝てる者はいない 」
裂姫はそれでも小馬鹿にした笑いをやめない。リヴァイアタンは両腕を回転させ、また海中に巨大な渦巻きを作り出す。裂姫は渦に巻き込まれ前後左右に不規則に回転し、普通の人間なら細かな肉片に成り果てているような凄まじい攻撃にも裂姫は耐えたが、強化されている筈の裂姫の衣服は破けてしまい、スカートも裂けてしまっていた。
「もう 酷いことするの こんな姿、ケンショウには見せられないの 」
自分の衣服の心配をする裂姫を見てリヴァイアタンは驚愕していた。
・・・どういう事だ、先ほどからなぜこの人間は無事でいられるのか 私のこの攻撃を海中で受けてはあの魔王サタンでさえ無事ではいられないというのに 私の攻撃を無効化しているのか ・・・
リヴァイアタンは目の前の敵の認識を新たにする。
・・・人間だと侮っていたので私に油断が生じたのだ 奴も私と同等だと認識を改めた方が良い ・・・
リヴァイアタンは裂姫の力を認め、この者はここで排除しておくに限ると決意した。そして、赤く冷たく輝く目で裂姫を睨み付ける。
「やっと本気になったの でも相手が悪かったの あなたが海王リヴァイアタンなら、私は海神ポセイドンなの 」
リヴァイアタンは笑みを浮かべる。
「なるほど合点がいく そんな戯れ言を始めに言われても俄には信じがたいが、今なら頷ける ククク、むしろ血湧き肉踊るわ 」
リヴァイアタンは裂姫に襲いかかる。巨大な鋭い爪が裂姫の体を掠める。リヴァイアタンは海中とは思えない素早い動きで連続して裂姫に襲いかかるが、裂姫もまたリヴァイアタンに勝るとも劣らない動きでリヴァイアタンの攻撃を掻い潜り間合いに近付く。そして”向日葵”を一閃する。が、裂姫が狙ったのはリヴァイアタンではなく、リヴァイアタンの横にそびえ立つ岩山だった。岩が砕け炎を纏ってリヴァイアタンに襲いかかる。
「うぬっ 」
今度はリヴァイアタンが炎の岩で打撃を受け燃え上がった。裂姫は続けて”向日葵”を振り続け炎の岩が連続でリヴァイアタンに襲いかかる。
「ふうん、思った通りなの 間接的な攻撃にはカウンターを返せないの やっぱり、あなたは三流なの 」
「ぐぐ、その程度で勝ったつもりか 私の力を思い知れ 」
リヴァイアタンの両手の間に黒い球体が現れ、それがどんどん大きくなっていく。裂姫は”向日葵”を回転させ海中に炎の渦をつくっていく。
「あなたも私の力を思い知るといいの 」
リヴァイアタンが裂姫に向かって黒い球体を放つと同時に裂姫の巨大な炎の渦もリヴァイアタンに襲いかかる。裂姫とリヴァイアタンの戦いは、この後思わぬ結末を迎える事になった。