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二十三話 意外な人物


 二十三話 意外な人物



 拳勝と千里を守りながら、援軍に駆けつけた須藤たちは悪魔ダゴンに向かって休みなく銃撃を浴びせる。しかし、ダゴンはまるでダメージを受けずに毒鱗を飛ばしてきた。須藤たちは、毒鱗を撃ち落とすが、その数が際限なく増えてくる。


「くそっ、なんて数だっ!!」


ダゴンは毒鱗を飛ばしながら悠々と近付いてくる。


「クククッ、人間ごときが私に刃向かうとは笑止千万」


「しゃ、喋った。先輩、あのお魚、喋りましたよ 」


 千里が、拳勝の腕を引っ張り興奮して叫ぶ。


「いや、横山くん。奴は見た目魚だけど悪魔だからね。そりゃあ喋るさ 」


「でも、あんな間抜けな魚顔で喋られても、ふざけるなって感じですね 」


 ダゴンの魚の目がギョロリと千里を睨み付ける。


「そこの女、自分はとんでもない不細工の分際で高貴な私の顔を侮辱するとは万死に値する。最後にゆっくり殺してやろう 」


「えっえっ、私、不細工じゃないですよねぇ、先輩? 」


 拳勝を見つめる千里の目は涙目になっていた。拳勝は、気にするのはそこなの?と思いながら、千里の頭を撫でる。


「大丈夫。横山くん、君は可愛いよ 」


 千里は、良かったぁと泣き出していた。


「おいおい。在原、横山。いいから早く退け!そして、支部に連絡だ!こいつを倒すには、もっと火力が必要だ!! 」


 須藤が叫んだ時、それまで飛んできていたダゴンの毒鱗が、文字通り瞬間移動して隊員の前に突然現れる。一瞬にして何枚もの毒鱗に囲まれた隊員は、動くことも出来ず毒鱗に切り刻まれ、更にその毒で体を溶かされ消滅していった。


「伊藤ーーっ!! 」


 駆け寄ろうとした須藤の前にも突然毒鱗が現れるが、須藤は地面に転がりぎりぎりかわす。しかし、他の隊員たちは次々にダゴンの毒鱗の攻撃の前に倒れていった。そして、ほんの数分後には、拳勝たちと須藤を残し、他の禍対委の隊員は無惨にも消滅していた。


「在原、横山! 早く全力で逃げろ!! 俺は、こいつに一矢報いてやる 」


 これまで苦楽を共にしてきた同僚を殺された須藤は冷静さを欠いていた。とはいえ、銃も通用せず、瞬間移動で攻撃してくる悪魔に対して有効な手段があるとも思えなかった。

 須藤は銃を持ち変えると、腰を落とし両手で拳銃を構える。それは銃鬼の持つ銃と同じデザートホークだった。須藤はダゴンに狙いを定めて引き金を引く。銃鬼は、この銃を片手で連発するが、普通の人間である須藤は一発撃っただけで反動で腕を後ろにもっていかれ体勢を崩した。弾丸はダゴンの頭に命中したかに見えたが、ダゴンは何のダメージも受けず魚の口をパクパクと動かし笑っているようであった。そして、須藤の周りを毒鱗が囲む。


 ザンッ


 須藤の首がはねられ地面に転がり消滅した。最早、逃げ道はないと悟った千里が拳勝に抱きついてくる。


「先輩。最後、先輩と一緒で良かったです。悔いはありません 」


「横山くん、諦めるな!! 最後の最後まで抵抗するんだ!! 物理的にダメージを与えられないなら精神的なダメージだ!! 悪魔はプライドが高い。思う存分罵ってやれ、紅葉ならそうするぞ!! 」


 千里は、えっという顔で拳勝を見つめるが、覚悟を決めたようにダゴンの顔を睨み付ける。


「この小魚っ!! 魚の分際で何だよ! 魚に手足付いて酷い格好だね。みっともないよ。キモ過ぎるわ!! どうせ脳ミソも魚並みなんだろうね!! 笑っちゃうわ、ハハハッ!!! 」


 千里に侮辱されダゴンはプルプルと体を震わせ激昂する。


「矮小な人間がっ!! 貴様こそ、よくその顔で外を歩けたものだ。周りの迷惑を考えろ!!反吐が出る!! オゲェェーー 」


 ダゴンは千里の顔を見ながら本当に嘔吐していた。それを見て逆に千里の方が精神的ダメージを負ってしまう。


「先輩、私、吐かれちゃう程、不細工なんでしょうか? 正直に言って下さい 」


「何言ってるんだ、横山くん。さっきも言ったけど君は可愛いよ。あんな悪魔の言う事に負けるな 」


「そうですよね。あんな小魚に負けるわけがない 」


 千里の目に輝きが戻る。


「この魚野郎! お前なんか三枚におろして食ってやる!! ばーか!!! 」


「このドブス女が、目が腐るからこっち見るな!! 阿呆!! 」


 子供の喧嘩かよ、と思いながら拳勝は、この局面を打開する方法はないかと考えるが、一向にいい考えが浮かばなかった。そうしているうちに二人の罵りあいは佳境に入ってきた。もはや、バカとアホウの言い合いだ。そして、良い案が浮かばないまま罵り合いは終焉を迎える。癇癪を起こしたダゴンが瞬間移動で拳勝たちの周りに毒鱗を出現させた。周り一面に毒鱗が現れ、もう逃れる術はない。拳勝は、せめて千里だけでも守れないかと千里を自分の体で覆い抱きしめた。覚悟を決めた拳勝だったが、その最後の時は訪れなかった。何が起こったのか確認すると、何時の間にか二人の前に一人の人物が立っている。燕尾服にシルクハット、黒いステッキを持ち片腕のその人物に拳勝は見覚えがあった。


「貴方はゲーデ教団のフールフール 」


「ほお、覚えていましたか。貴方はなかなか悪魔の事を勉強しておりますね、感心です。悪魔は恐怖を喰って生きている。恐怖に呑まれてしまえば悪魔の力は何倍にも膨れ上がるでしょう。だから貴方はそこの女性に恐怖に呑まれないようアドバイスした。素晴らしいです。その結果、悪魔の力が弱体化し私の救援が間に合ったという訳です。もし、あのまま恐怖に呑まれていたら今頃貴方達も消滅していたでしょうね 」


「何故、貴方が僕たちを? 」


「私たちゲーデ教団の目的は、偉大なるゲーデ様の復活と深淵の悪魔の殲滅です。ダンタリオンから聞いていませんかね。私は別に貴方達を助けに来た訳ではありません。この深淵の悪魔を倒しに来ただけですよ 」


 時間を止める能力、このフールフールなら悪魔ダゴンに対抗できるだろうと思われた。だが拳勝は不安を感じずにはいられなかった。紅葉の命を狙っているのも、このフールフールだ。助けてもらっていながら心苦しいが、ここで悪魔と共倒れになってくれればと思わずにはいられなかった。


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