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二十二話 悪魔ダゴン


 二十二話 悪魔ダゴン



 拳勝と千里はファーヴニル二体と悪魔ダゴンに囲まれて逃げ道を失っていた。ファーヴニルは鎌首を上げ、拳勝たちに飛びかかる姿勢をとっている。ダゴンのギョロリとした目は、何処を見ているのかまるで分からなかった。千里のだらりと垂れ下がった左腕は、確実に骨は折れているだろうし出血もしている。痛みも相当なものだろう。早く病院に搬送してあげたいが、この囲みから抜けるのは至難の技だった。


「横山くん、支部に連絡した時に誰が出た? 」


「はい、津田さんでした 」


 支部の中でも温度差がある。隊員からの緊急連絡に、直ぐ対応して真っ先に援軍を送り出してくれる者もいれば、事務的に書類をまとめてから援軍という者もいる。


・・・津田くんか 彼女なら、直ぐに援軍を出してくれる ・・・


 拳勝は、それなら千里を守りきれるかもしれないと希望が湧いてきた。


「いいか、横山くん 無理するなよ 敵が襲ってきても、反撃せずになるべく避けて体力を温存するんだ 」


 言っているそばからファーヴニルが襲いかかってきた。千里は拳勝の指示通り、攻撃を避けている。拳勝は攻撃を避けながら、ファーヴニルのウィークポイントの目を狙う。そして、一体のファーヴニルの左目に拳をヒットさせた。パーンという高い音と共にファーヴニルの左目が吹き飛ぶ。左目を潰されて冷静さを欠いたファーヴニルが正面から突っ込んできた。


・・・もらった ・・・


 拳勝はステップを刻み、ファーヴニルの顎下から拳を叩き込もうとした時に、ダゴンの鱗が拳勝目掛けて飛んできた。


「先輩、危ないっ 」


 千里が拳勝に体当たりし、二人はゴロゴロと地面を転がったが、そのおかげでダゴンの鱗を回避できた。鱗は少し先の地面に、何枚もぐさりと突き刺さっている。しかも、その鱗から何か毒々しい液体が垂れていた。


・・・毒鱗か 厄介な敵だ ・・・


 拳勝は千里に礼を言うと、ダゴンに注意を向ける。しかし、ダゴンにばかり気を取られていると今度はファーヴニルが連携して襲ってくる。支部からの距離を考えると、まだ援軍が到着するには時間がかかる。それまでしのげるか。拳勝が頭を悩ませていると千里が、トントンとステップを刻む。


「先輩 私も少し体力が回復してきたので、先輩が目を潰したファーヴニルから倒していきましょうよ 」


「そうだな よし、僕から行く 横山くんは合わせてくれ 」


 拳勝はタッと飛び出るとファーヴニルの胴体に拳を叩き込む。粘液で打点がずれるが構わず打ち抜く。そして、サイドステップで横に出ると、更に胴体に拳を打ち込んだ。そして、ファーヴニルの頭部が下がったところに千里が超技能を発動し強力な踵落としを浴びせた。


「ゴシャーッ 」


 ファーヴニルは頭を潰され、ピクピクと痙攣しそのうちに動かなくなった。が、ファーヴニル二体を倒された事で、今度はダゴンが攻撃の前面に出てきた。拳勝が超技能の拳を放っても、千里が超技能の蹴りを叩き込んでもダゴンは、まるで効き目がないように攻撃を続けてくる。そして、ダゴンの攻撃の合間にファーヴニルが襲いかかってくる為、拳勝たちは当初の予定を変更しダゴンに狙いを定める。


「横山くん、ダゴンの能力は未知数だ 油断するなよ 」 


「それにしても、よく先輩 こんな悪魔知っていましたね やっぱり普段からの勉強って大切ですね 」


 千里に真顔で褒められ拳勝は照れて頭をかく。その一瞬を狙ったダゴンが拳勝に向かって尾びれを叩きつけてきた。ギリギリかわした拳勝だったが、その尾びれの起こす突風で吹き飛ばされ地面に転がる。そこへファーヴニルが口を開けて襲いかかった。


・・・しまった ・・・


 拳勝は急いで起き上がろうとするが、それよりもファーヴニルの攻撃の方が早い。そこへ千里の超技能旋風脚が炸裂し、まともにくらったファーヴニルは爆裂しながら消滅していった。


「先輩、ナイスです 上手く敵を誘きだしてくれて、さすがです 」


「あ、いや…… 上手くいって良かったよ 」


 今度は千里に尊敬の眼差しで見られ、拳勝は恐縮するが、結果が良ければいいかと前向きに考える。


「残りはダゴン一体だ 気は抜くなよ 」


「了解です 」


 千里は元気に返事をするが、ダメージを受けている左腕は相当な重傷の筈だ。拳勝は、千里を庇いダゴンの狙いが自分にくるように攻撃を仕掛ける。


・・・僕の拳をこれだけ浴びてダメージがないなんておかしい 何か秘密がある筈だ ・・・


 拳勝も千里も数え切れない程の拳や蹴りを叩き込んでいるがダゴンはまるでダメージを受けた様子はなかった。そして、ダゴンのギョロリとした目を狙って攻撃した時、拳勝はその感触で気付いた。


・・・これは、教団の支部でダンタリオンの頭を殴った時と同じ感触…… まさか、こいつも空間操作を? ・・・


 だがそれなら、二人でこれだけの打撃を与えてもダメージを受けないのも納得がいく。しかし、そうなるとダゴンを倒す為には、あの時の裂姫のような空間操作が追いつかない程の超スピードが必要になる。


「横山くん、どうやらこの悪魔は空間操作して僕たちの攻撃を防いでいるようだ このまま攻撃を続けても体力を消耗するだけだ 残りはこいつだけなので隙をみて逃げてくれ 」


「先輩は? 」


「僕は残って君が追撃されないように守る 」


「だったら、私も残ります 二人で残った方が有利でしょう 」


「しかし、君は怪我してるだろう 無理するな 」


「嫌です こんな腕、大丈夫です 」


「まったく、君も紅葉に似て頑固だな 」


 拳勝が言うと、なぜか千里は嬉しそうだった。

仕方なく拳勝は二人で戦う事にするが、積極的に自分が出て千里はなるべく戦わせないようにする。が、やはり何度拳を叩き込んでもダゴンにダメージを与える事は出来なかった。


・・・ダンタリオンに剣市と同時攻撃した時は二人を飲み込む空間を出現させたが、こいつはどうだろう? いや、しかし横山くんを危険にさらす訳にはいかない ・・・


 拳勝は有効な攻撃手段を思いつかないまま、それでも受け身にまわってしまっては不味いと、休みなく攻撃を続ける。が、さすがに体力の限界がきていた。千里も息が荒くなってきている。その時、こっちですという声が聞こえたと思うと、ダゴンに向かって激しい銃撃が開始された。


「大丈夫か! 在原、横山っ! 」


 駆けつけた禍対委のメンバーが声をかける。拳勝たちは、援軍に駆けつけたメンバーに囲まれ、ようやく安堵の息をもらした。


「気を付けて下さい、須藤さん 奴は空間操作して防御します 」


「なるほど お前たち、二人が苦戦する訳だ 」


 須藤は仲間たちに、休みなく撃ち続けろ、空間操作は相当消耗する、奴も力尽きる筈だと激をとばす。

 須藤の考えは間違っていなかったが、それは人間に対しての考え方だった。この相手が悪魔だと云うことを考慮しなかった事が、彼の大きな失点だった。


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